memoriオーディオの精度は1フレーム以内

DIYマルチカメラ収録のタイムコード同期はなかなかの精度だった(検証編)

マルチカメラ収録した映像素材の同期について検証しています。撮影の際に民生用一眼レフカメラのマイクインからLTC信号とトークの音声信号をそれぞれ入力し、それを手がかりにして映像編集ソフトで同期をとります。

今回の実験の諸条件については、前回の記事「マルチカメラ収録のタイムコード同期についての検証(準備編)」にて手順をまとめてありますので、そちらからお読みください。

複数のカメラの音声トラックに同一の信号が録音されますが、それぞれのカメラは個別に録画開始・停止の操作を行うので、録画された映像素材のスタートタイムやエンドタイムにはばらつきがあります。それを映像編集ソフトの同期機能を使い、一発処理でタイミング合わせをしてしまおうということです。

この記事ではスレートトーン、いわゆるカチンコについては用いていません。

画像1

上の写真は実験の様子です。iPhoneに表示したタイムコードを3台のPanasonic「GH2」で撮影します。左に見える音声分配器から、同一のLTCとトーク音声をGH2に入力しています。録画開始・停止操作はそれぞれのカメラで行います。

録画した映像ファイルを「Tentacle Timecode Tool」というソフトに読み込ませます。このソフトは、撮影ファイルからオーディオのタイムコードを読み取り、それをファイルタイムコードに変換してエクスポートしてくれます。「映像ファイルにタイムコード情報を埋め込んでくれる」と理解してもよろしいかと。

画像2

Tentacle Timecode Toolに3台のGH2で録画したファイルを読み込んだところです。3つのファイルはいずれも約52分間のファイルですが、タイムコード(TC)は埋め込まれていないのでFile TCは「not found」となっています。一方、Audio TCとして「ch.1」(=Lチャンネル)にタイムコード情報が記録されていることがわかります。TCを走らせてから、14秒後、16秒後、18秒後にポンポンポンとカメラの録画をスタートさせたことがわかります。

Tentacle Timecode Toolはファイルをエクスポートするときに、オーディオトラックをミュートするかどうか選択できますが、今回はRチャンに(トーク)の音声が入っているので、ミュートはオフにして書き出します。

書き出したファイルをPremiere Proに読み込ませます。

画像3

3つの映像ファイルを選択、右クリックして「マルチカメラシーケンスを作成」を選択します。

画像4

すると、何を基準にして同期するのかを尋ねてきますので「タイムコード」を選んで、OKをクリックします。すると

画像5

一瞬で同期が取れた状態のマルチカメラシーケンスがすでに出来上がっています。右クリックして

画像6

「タイムラインで開く」を選択しましょう。すると

画像7

タイムライン上に同期の取れた状態のシーケンスが表示されます。スタートポイントを拡大してみると

画像8

カメラごとに別々のタイミングで録画を開始したことがわかります。

タイムコード同期はどのくらいの精度なのでしょうか。フレーム単位で最大まで波形を拡大してみます。

画像9

こちら、トーク開始直後の1分9秒あたりのオーディオ波形です。タイムラインの1目盛りが1フレームです。29.97fps なので1目盛りが33ミリ秒。

完全に一致とまではいきませんでしたが、カメラ1とカメラ2はほぼぴったり。カメラ3の波形が少しだけ後ろにずれていますが、それでも1フレーム以内の誤差に収まっています。

今度はトークの終了付近、52分過ぎの波形も見てみます。

画像10

1分の時点よりは、少しだけ波形がずれていますが、それでも約1フレーム以内の誤差に収まっています。

民生機のGH2は、リファレンスシンクを入れて、クロックの同期を取ることはできないので、3台のGH2はそれぞれのクロックで自走したわけですが、なかなかの精度と言って良いのではないでしょうか。

次は映像での確認です。タイムライン上で映像を止めて、それぞれのカメラのiPhoneに表示されたタイムコードの数値で同期の精度を見ます。

画像11

タイムライン上の同一時点のカメラ1、カメラ2、カメラ3の映像を並べました。開始直後の時間帯ですが、すべてが「1分27秒9フレーム」を表示。フレーム単位の「9」の数字もぴったり合っています。

トーク終了付近の50分の時点も確認します。

画像12

50分が経過した時点でも、すべてのカメラが「50分27秒18フレーム」と同一の数値を表示しています。50分という長い時間の撮影においても、少なくとも1フレーム以内の誤差で同期が成立していることがわかります。

専用の機器を購入せず、DIYで行った実験としては大成功ではないでしょうか。

民生機の一眼レフカメラとアナログケーブルを使った、今回のタイムコード同期の実験ですが、7秒ごとにカメラを切り替えたサンプル動画を作成しました。冒頭は開始直後、後半は50分経過後の映像です。

「秒」の1の位に注目して「0、1、2、3、4、5……」と数えながら視聴すると、同期の精度がおわかりいただけるかと思います。

ちなみに、Premiere Proにはオーディオの波形から自動同期する機能あります。その精度についても検証してみました。そちらについては次回とさせてください。

関連記事



いいなと思ったら応援しよう!