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福岡市で続く、日本第一党の街頭宣伝(RKBラジオ)

12月15日(火)放送のRKBラジオ『櫻井浩二インサイト』を文字に書き起こした内容です。MCは櫻井浩二、田中みずきです。
(トップ写真は2019年、東京で開催されたデモの映像から=神戸が撮影)

櫻井浩二:火曜日のインサイトコラムは、RKB報道局の神戸金史(かんべ・かねぶみ)の「勘弁ならねえ」です。今日は街頭で録った音声なども交えて、神戸さんが熱く語ります(笑)
神戸金史:はい。福岡市の中心・天神で11月から、ある団体が毎週日曜日午後3時から街頭演説を始めるようになっているんです。12月6日日曜日、私も取材をしてきましたが、演説をしているのは「日本第一党」という団体です。
櫻井:あー、はいはい。
神戸:この団体がどんなことを街頭でアピールしているか。まずはそれをお聴きください。

マイクを握る女性
「日本第一党には、5つの約束がございます。
 1つめ、外国人への生活保護費の支給停止。
 2つめ、日韓慰安婦合意の破棄。
 3つめ、移民受け入れ、即時停止。
 4つめ、原発再稼働。
 5つめ、パチンコ店の営業停止です。
 党首は桜井誠と申しまして、福岡県出身の方です」

神戸:今お聴きいただいたように、後ろでワーワーという声が聞こえていたかと思いますけど、多くの人たちが演説に反対する行動に出ているので、天神の真ん中で、かなりの騒ぎになっているんですね。
 日曜日の午後3時から4時半の間なんですけれども、今お聴きいただいように、外国人に生活保護を支給するよりも、まず日本人ファーストだという主張は、「そうだな」と思う人もいるかなーという気もしました。
 しかし、なんでこんなに多くの人が反対する行動に出ているのか。多くの人が天神に集まって、それなりの騒ぎになってしまっているのかということをご紹介したいんですが、今女性の方が言っていたように、党首の方は桜井誠さんという方で、2007年に「在日特権を許さない市民の会」という団体を設立して、在日朝鮮・韓国人や中国人を排斥する運動を繰り返してきた方です。
 以前に、桜井党首が東京のコリアンタウンを練り歩いた時の声、いっぱいネット上に出ています。ちょっとお届けするのをためらうような発言なんですが、現実を知るために、お聴きください。

桜井党首の声
「反日韓国人は日本から出ていけー、犯罪朝鮮人を皆殺しにしろー、コリアンタウンを焼き尽くせー!」

櫻井:ひどいね、これは…
神戸:こういうのを地上波で放送していいのかと、ためらうような言葉ですよね。
櫻井:……ここまで露骨に言うんですね。

神戸:ええ、2013年ごろは非常に関東…、川崎だとか新大久保だとかのコリアンタウン、それから関西でも、こういった「出ていけ」というような、「ゴキブリ」だとか、そういう言葉でののしったりとか、「皆殺しにしろ」という言葉だったり、非常に激しいヘイトスピーチが繰り広げられたわけです。
 この桜井党首、本名は高田誠さんと言います。北九州市の出身で、48歳くらいだと思います、年齢的には。
櫻井:高田誠さんていうのですか、初めて知りました。
神戸:桜井ではないですね。今は桜井と名乗っておられます。この桜井氏たちの言動に、日本人、在日朝鮮・韓国人を問わず、多くの人が抗議に出向いて、現地でかなり騒ぎになっています。反対に訪れているこの人たちを、「カウンター」と呼んでいます。
 こうして社会問題化したために、国は2016年に「ヘイトスピーチ解消法」を制定しています。罰則はないんですけど、法律の制定後は「皆殺しにしろ」というような言葉は少なくなっていますが、冒頭にお伝えしたように、パチンコ店の営業停止、これ在日の方が多くかかわっている産業だと思います。もちろん日本人も多く働いていますが、多分そういうことは関係なく、目的は排外主義の団体なので、日本に暮らす韓国朝鮮、中国の人たちをひとくくりに攻撃することにあるんだろうという風に思われます。
櫻井:これ、なんか根拠があって言っているんですか、桜井党首は?
神戸:ま、根拠というか、差別・外国人排斥に根拠というか、思想・感情…。
櫻井:そっちなんですかね。
神戸:天神では、桜井党首は来られておられませんでしたが、今月6日のことですけども、日本第一党の方はこんなことを言っていました。お聴きください。

マイクを握る男性1
 「大手の新聞社、それからテレビ局、こういう大きなメディア、ほとんど左翼と言われる人たちが支配をしている。以前からそうなんでしょうけれども、そしてその背後には、支那中共がいるんですよ」
 「アメリカだけじゃない。日本にも支那中共のスパイが紛れ込んでおります。その一番、福岡にもたくさんいますよ。中共のスパイ。どこにいるか? 九州大学ですよ。九州大学に来ている留学生。中共からの留学生を見たら、まず中共のスパイであると思って間違いありません
 「留学生という身分を使って、相手国の様々な先端技術や情報を盗み取り、そして本国へ横流しする。それを基にHUAWEI(ファーウェイ)とかいう支那中共の企業は、コピー商品、アメリカやヨーロッパの技術者、日本の技術者が一生懸命努力をして造って、開発した企業秘密をいとも簡単に盗み出して、支那中共でコピー商品を生産し、世界中にばらまく。これが今の中共の経済の根幹を支えているわけですよ」

カウンターの女性たち
 「帰れー」
 「さっさと帰れー」
 「帰ってくださーい」

神戸:これが12月6日午後3時過ぎの、天神の様子なんですね。
 「中共」と言っていたのは、中国共産党を指す言葉ですが、差別的にも使われる言葉ですね。支那という言葉もそういう要素を含んでいます。「留学生はスパイ」だという発言がありました。これ、完全にアウトだと思います。
櫻井:そりゃそうでしょ。だって、根拠あるんですか? 証拠は? ないでしょ?
神戸:仮にそうだとしてもですよ、九州大学に留学に来て、盗み出せる国家機密的なものってあるんでしょうか。それを盗んで中国で先進技術を造ってる、盗み取っているって言うけれど、日本でやっているものだったら日本でも技術開発できますよね。かなり、論理的にはおかしいんです。
田中:言いがかりと言うか、何を根拠に・・・
神戸:これ、九州大学は学生の安全を守るために、日本第一党に毅然と抗議するべきだ、と私は強く思いました。
 それから、九州大学だけでなくて、中国や韓国から留学生を迎えている大学、いっぱいありますよね。ほんとに、天神でこういうことは、真剣に危機感を抱いた方がいいと思います。
 やっぱり、中国がいい悪いではないんですよ。私たちだって、香港での言論弾圧だったり、ウイグルの問題とか、それから尖閣諸島に船が接近したりとかね、僕らとしても「なんだ、これ!」と思うことはいっぱいあるじゃないですか。でもそれと、中国人ひとくくりにした発言とは別だと思うんですね。
 僕は、完全な差別だと思います。これが排外主義で、発言の中にはこういう排外主義の鎧が見え隠れしているというのが現実だと思います。

 演説の後で、日本第一党の人に話を聞きました。

神戸「カウンターの人たちの発言は、どう受け止められましたか?」
男性2「いや、主義主張は自由ですので、僕らも僕らで言いますから。向こうも言っていただければ、問題ないと」
神戸「ヘイトスピーチを言っているといわれるのは、どうお考えですか?」
男性2「あー、差別、どこで差別ととらえるかは人それぞれですから。ちょっと、そこまではわかんないですね、本人に聞いてみないと」
神戸「自分たちが言っていることが差別だと思っているわけじゃない、ということですね」
男性2「そうですね」
神戸「わかりました」

神戸:話していると、こう、冷静な方で。
櫻井:ほんとですね。
神戸:僕、いろいろ取材していますけど、こういう方が多いんですよね。
 一方、カウンターの方ですが、前に天神で演説を耳にして、「これはいけない」と思って初めてカウンターに来たという、若い女性にも話を聞きました。

神戸「今日実際に、日本第一党の主張を聴いてみて、どう思いました?」
女性「そうですね、きょうは具体的なヘイトみたいなのじゃなくて、すごく遠回しに、差別をあおるようなことを話してて、すごく姑息で、汚いなと思いました」
神戸「カウンターの人たちの言動はどう思いました?」
女性「カウンターの人たち、すごく頼もしいなと思いました。こんなに大勢、差別に反対される方がいるとか、あんまり想像してなかったので」

神戸:けっこう若い人で「初めてだ」と言うので、「ああ、そうなんだ」と思いましたね。
 日本第一党の人たちは、毎週日曜午後3時から4時半まで、天神のイムズ横で演説をするそうです。「ここは私たちの聖地だ、毎週やるぞ」とおっしゃっていました。
 試しに、みなさん聴いてみたらいかがかな、と私は思ってるんですよ。嫌な気分になるかもしれませんし、もっともだと思うかもしれない。まず、聴いてみてもいいかもしれないですね。

 その上ですが、ヘイトスピーチをさせないために集まっているカウンターの方々は、大きな声で叫んでいます。何でかって言うと、差別的な言葉がもし出てきても、人の耳に入らないように、かき消そうとしているんですね。
田中みずき:ああー。
神戸:だから、大きな声を出して、むしろちょっと挑発的な言葉も言っています。それは、自分にスピーカーをしている人たちの発言が集まれば、ヘイトを言わないんではないか、ということを含めて戦略的にやっているんですけども。
 でも一見、聴くとうるさいし、「どっちも、どっち」と感じるかもしれないのですけれども、そうは考えないでいただきたいんですね。
 「どっちもどっち」とよく言います。安倍政権賛成、反対どっちもどっちとかね。でも「どっちもどっち」って、実は何も言っていないことなんです。ふたつを同等に比べるということ、今回の件で言えば、差別する排外主義と抗議する側を同等に並べるということは、差別そのものの存在を肯定することにもなるんです。「どっちもどっち」というのは。
櫻井:そうかー。
神戸:第一考えておきたいのは、そもそも「ヘイトがなければ、カウンターは生まれていない」ということです。カウンターがなくなっても、ヘイトは生き残こります。この点だけは、ちょっと気を付けていただきたい。
 特に身近に留学生がいる大学生さんには、天神で日曜日午後3時、イムズ横で日本第一党の話、聴いてもらいたいなーと思ってるんです。
 私がこれを紹介するのは、事実関係をちゃんと伝えたい。記者としてですね。その上で、記者として論評をしっかりすべきだと。そうしないと、この音声は使えないと思ったからです。
 私自身は、「フェイク」と「ファクト」の中立報道があり得ない、うそとほんとを中立報道するのはあり得ないのと同じ様に、「差別」と「社会的公正」の中立報道もあり得ないと思っています。ですからあえてこの声を紹介した次第です。
田中:この桜井氏を取材したドキュメンタリー『イントレランスの時代』は、RKBオンラインで12月20日まで公開していますので、ぜひ聴いていただきたいです。
櫻井:天神で演説するのはいいですけど、今神戸さんが言ったように、ちゃんと事実を知った上でやるというのが大事なんじゃないかなと思いますけどね。
 「神戸金史の勘弁ならねえ」、インサイトコラムでした。(了)

注:やまゆり園障害者殺傷事件や、ヘイトスピーチなどを取材したドキュメンタリー『イントレランスの時代』は、YouTubeで1月5日まで公開中
(下線部をクリックしてください)

 地上波では、RKBローカルでは12月25日(金)の深夜、日付が変わって26日(土)午前2時5分~3時15分に、改めて放送します。
 放送エリア(北部九州地区)の方は録画できますので、予約をお願いします。

※なお、ラジオ放送後の12月20日(日)の街頭宣伝は、前日になって日本第一党福岡県本部がツイッターで、中止を告知しました。理由は「武漢肺炎」の感染拡大防止のため、となっています。

 そこで、翌週の「インサイトコラム」(12月22日)では、「武漢肺炎」というような呼び方はなぜ避けるべきなのか、について解説しています。
 12月29日お昼までは、下線部をクリックすれば聴くことができます。


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