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福岡でも「ヘイトスピーチ規制条例」の検討を(RKBラジオ)

RKBラジオ『櫻井浩二 インサイト
(2020年12月23日放送)

午前8時14分~23分の【インサイト・アラカルト】のコーナーを、文字に起こしてみました。MCは櫻井浩二、田中みずきです。

(写真は、在日朝鮮・韓国人や中国人を排斥する人が掲げていた旭日旗=2019年、神戸が川崎市で撮影)

やまゆり園事件やヘイトスピーチを題材としたRKBのドキュメンタリー番組『イントレランスの時代』は、1月5日までYouTubeで無料公開中
(下線部をクリックすれば見られます)

櫻井浩二:火曜日のスタジオコメンテーターは、RKB報道局の神戸金史(かんべ・かねぶみ)です。神戸さん、おはようございます。
神戸金史:おはようございます。
櫻井:今日採り上げるのは、昨日の毎日新聞夕刊ですね。
 全国で初めて、ヘイトスピーチ(差別扇動表現)に対する刑事罰の規定を盛り込んだ川崎市の条例、成立から丸1年が経過した、ということなんですが、ヘイトスピーチは減っているんですか、川崎市では今?
神戸:んー、あからさまな形では少なくなってきているかもしれませんが、定期的に街宣活動が行われたり、挑発的な言葉を使ったりはしていますね。ただ、言葉遣いは気をつけているみたいな感じはしました。多少私が東京で取材していた時にはですね。
田中みずき:丁寧に言えばいいってものじゃないですからね。
神戸:そうですね。非常に人種差別的な臭いがプンプンしてて、言葉を使わなければいいってものではないです。
櫻井:元々川崎ってのは、差別的なヘイトスピーチが多いんですか?
神戸:いやいや、ヘイトスピーチというものが世の中に広がったのは、大きくは2013年ごろからですね。川崎でもコリアンタウンがありますから。工業地帯で、戦前からの。北九州と一緒ですね。朝鮮半島から来た人が住んでいる地域というのはいまだにあるわけです。そこの人たちに対して、攻撃的な言葉をずっと吐いてきた。先週ちょっとお伝えしましたけど、かなり過激な言葉もあって。
 私が現場に行った時は、もう1000人くらいの住民が集まってまして、びっくりしました。「こんなに反対している人たちがいるの」か、と。地域の自治会長さんとか。もちろん、日本人の方が全然多いと思いますけど。やっぱり「地元でこんなことされたらたまらない」「共に住んでいる人たちを守りたい」という感じで。
 800メートルくらいデモをするという申請がなされていたですけれども、どこで来るか分からない。で、住民はずっと1時間、2時間、待機しましてね。最後の最後、ゴール際のところに突然車で乗り付けて、100~200メートル歩いて、「デモをやった」とインターネット中継したりして報告していましたよ、彼らは。
 それに対して、みな涙を流して悔しがっていました。「あー、すごいな、大変だな」と思いました。

 でも、人ごとじゃないんですよね。実は福岡でも去年3月に、先週お伝えした日本第一党の桜井誠党首、まさに北九州市出身の桜井党首が、折尾駅の近くで、九州朝鮮中高級学校に通う生徒さんに向かって、「たとえ人が何と言おうが、自分の主張は曲げません。朝鮮人は、危険です。朝鮮人の子供の人権とかいうけど、日本人の子供の人権が先なんだよ!」って叫んでいました。
櫻井:はー……。
神戸:インターネットで音も映像も公開しています、彼ら自身が。
 「ヘイトスピーチ解消法」という法律があって、川崎市は条例を作っていますけれども、解消法は、「本邦外出身者」、つまり日本の外からの出身者に対する「不当な差別的言動は許されない」と明記しています。ただし、これは理念法なんです。
櫻井:罰則がない。
神戸:ええ、それは、表現の自由の問題が大きくある。国が作る「法律」で罰則を入れると、考え方を国が変えた場合、普通の表現に対してもこの罰則が適用されたら、みんなが発言できなくなります。例えば私たちがこうやってしゃべること自体も「おかしい」とか、そういう前例にならないように、かなり法務当局も慎重に議論をして。ただし、(差別的言動は許されないと)明記している。
 それだけ、日本第一党党首の桜井さんの言動は問題がある、と。これは、私が取材した法務関係機関の方も、非常に懸念されていました。
櫻井:発言を聞いたら、そうですよね。
神戸:ただ、先ほどの、朝鮮中高級学校の生徒さんに向かって言った言葉。被害の届け出が出て、人権侵犯だということで、法務局が調べていたんですけど、取材に対しては「個別の事案については話せない」と。
 そりゃそうだ。強制力がある調査ではなく、任意でいろいろな人から聴いていくわけですから、全部中身についてしゃべってしまっては任意の調査ができなくなるという問題も起きます。
 日本第一党の支持者の方が、法務局に電話したそうです。ツイートしていたんですけど、「ヘイトスピーチと認定したのか?」と問い合わせて。法律上、「認定する」という行為はないんです。ですから「ない」と当然答えます。で、「法務省は認定していない」「メディアは嘘をついている」というツイートだったんですね。何度も何度も。RKBにも(リプライが)来ていましたけど。
 ある法務省の関係者の方は、この件、私の取材に対して「人権侵犯事件として立件したことは事実です」という風に明かしています。
櫻井:ほー。そうですか。
神戸:はい。ただ、先ほど申し上げたように、表現の自由の問題とか……法律上の規定に基づいてやっていますから、勝手にいろいろなことはできない。
 でも、法務省の中で「人権擁護」はとっても大切な業務として位置づけられていまして、部署もちゃんとあります。「ヘイトスピーチは、最大の問題だ」「そう認識している」と。そういう風におっしゃっていました。ただし、「理念法だから、罰則がない。強制力がない。どうしたらいいか、困っています」と。

 で、川崎は、理念法を補う格好で、罰則付きの条例を作ったということです。これは、「ヘイトスピーチだ」「問題だ」と被害の届け出があって、市で(ヘイトスピーチに)あたるかどうかを考えて、止めるように「勧告」を6か月以内にします。2回目にあった場合は、止めるように「命令」します。1年以内にそこまで行ったら、「刑事告発」と「氏名公表」。捜査されて有罪になれば、「最高50万円の罰金」ということに。これ、日本で初めて作ったんです。それだけ、深刻だということです。
櫻井:それでも、けっこうハードル高いんですね。
神戸:高いですね。
櫻井:3回もかかるんだ。
神戸:時間がかかるんですよ。
櫻井:起訴するまで、3回でしょ?
神戸:やはり、慎重に扱わなきゃいけないということで。具体的な事例で言いますと、川崎では、300件以上書き込みをされた在日コリアン3世の女性の申し立てに対して、300件のうち9件のみ、市が審査会に諮問している。絞っているんですね。この9件は「すべてヘイトスピーチにあたる」として、削除要請が行われたのは、そういった投稿があってから、5か月から半年後だったんです。半年間、放置になっている。
 その後も、削除「要請」ですから、全部削除してくれるわけではない。なかなか「時間がかかる」ということが、非常に大変なので、特に、「迅速な削除要請」が求められていること。これが一つ。
櫻井:2回目の勧告まで6か月以内じゃないとだめなんでしょ。6か月とか経ったちゃったら、ほとんど意味ないですよね。
神戸:それと、北九州でもいろいろなことが起きていて、人権侵犯事案として立件されている。つまり、川崎のことは福岡でも全く人ごとではなく、むしろ今のうちから、福岡県・福岡市・北九州市などは、川崎のヘイトスピーチを規制する条例を勉強して、条例案を準備しておいた方がいいんじゃないか、と私は思っています。いつ起こるか……と言うか、もう起きています。さらに拡大する恐れもありますし、気を付けていただきたいな、と思います。
櫻井:ヘイトスピーチに関しては、条例にしないと刑事罰ができないと言うことなんですね。
 今朝は、RKB報道局・神戸金史を迎えてお送りしています。8時40分過ぎの「インサイトコラム」は、「神戸金史の勘弁ならねえ」ですが、今日はどんなお話でしょうか。
神戸:もうちょっと今の話を、柔らかくご説明してみたいなと思っています。(了)

番組後半の【インサイトコラム】
 「神戸金史の勘弁ならねえ」
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