そのライブのタイトルは。
亀梨くんが、泣いた。
見間違いだったかもしれない。
頬を伝う汗が、偶然そう見えたのかもしれない。
だってそれを見た瞬間、私もぼろぼろ涙があふれてしまったから。
彼らは、あまり涙を安売りしない。
決して平坦な道ではなかったけど、「だから僕たちはかわいそうだ」というような、悲劇のヒロインぶるようなことは言わない。感謝こそすれど、いつだってファンの前ではすまし顔で、時にはこちらの心臓に悪いような自虐もみせる。
涙のようなものが見えたのは、
この曲だった。
KAT-TUN - Flashback
このとき、正面のスクリーンには
ファンからのKAT-TUNへのメッセージが映し出されていた。
これは運営が「サプライズ企画」として、ファンクラブ会員向けに募ったものだった。
サプライズと称するからには、きっとリハでは何か別の演出があったのだろう。予定と違う、でも一瞬でそれの意味を理解したであろう彼らは、すこし声を歪ませていたように聞こえた。
私の涙が少し落ち着いたとき、彼らは何事もなかったように次の曲を歌っていた。
やっぱり見間違いだったかもしれない。
そう思うくらいには、ちゃんとまっすぐカメラを見て、踊って、歌声を響かせていた。
でも、最後に、アンコールあとの挨拶で
亀梨くんは大きな瞳を揺らして、言葉を丁寧に選びながらこう言った。
「今まで逃げたいと思うことも、あった」
「今日は、今までいたメンバーの声が聞こえた気がした」
これからグループがどうなるのか、
ファンはどうしたらいいのか、
そんな局面に立たされたときに彼らは
前に進むしかないと、私たちに背中を見せるだけだった。
メンバーが脱退するときも、10周年の活動休止のときも。
そのたびに、彼らは意図的に過去を排除していたように見えた。
過去に縋らない。頼らない。これが新しい体制。
だれかがいなくなったって、この人数だって、やっていける。
彼らも、ファンも、それが今後続けていくための「覚悟」のように思っていた。
でも、「変化前」と「変化後」は、どうしたって比較される。
デビュー時は破竹の勢いだったからなおさらだ。
きっと、そういう声をかき消すように振り向かなかったし、触れなかったというのが正しいんだろう。
今までも区切りの振り返り公演はあった。
まるで彼らにとって「過去を捨てて前へ進む」禊のようだった。
しかし、今回は違った。
「今までのKAT-TUNとこれからの新KAT-TUN」と区切りをつけるのではなくて、そのいびつな歴史をすべて「KAT-TUN」として受け入れていたように見えた。
今までが、「今までもよかったけど、それはもう過去。今の人数が塗り替えていくから」だったとしたら、今回は「この3人がいまKAT-TUNだけど、でも4人も5人も6人もやっぱりよかったよね」と言っているような。
それぞれの時代が、ライブが、メンバーが、
頭の中でよぎっていたのは、私だけじゃなかった。
亀梨くんも、きっと上田くんも中丸くんもそう思っていた。
だからこのライブのタイトルは
「KAT-TUN」だったんだ、と気づいた。
ファンから言わせれば、人数は変われど、いつだってKAT-TUNはKAT-TUNだ。
知らなければ出会えなかったこともある。美しい過去は忘れようと思ってもずっと忘れられない。だからこそ、節目で誰かのせいにしたくなったり、なんで?と思ったりすることもいっぱいあった。ファンじゃない人から、面白半分でからかわれることもあった。
永遠と思っていた「KAT-TUNが全員揃っている」未来が見られなくなることに、絶望したりもした。
15年目で、ようやく見せてくれた。
彼らも同じだったんだ、って。
15年目。
まだまだ彼らは、新しくて美しい世界を魅せてくれる。
大好きだ!KAT-TUN!
※個人の解釈です。
※3/27~28の間、見逃し配信があります。ぜひあなたの目で確かめてください。