あれれ、UAよりGA4の方がユーザー数が多いよ?
この記事は、アドベントカレンダー『いちばんいやらしいWebマーケティングの教科書』の17日目の担当として執筆しています。
妻と長女がおでかけ、次女はお昼寝、というスキマ時間で書いてます。
こそこそ。いそげいそげ。
さて、このアドベントカレンダーには2つの企画があり、
という趣旨だそうです。
今回は②のテーマで「旧バージョンのGoogleアナリティクス=UAプロパティの「ユーザー」指標よりGA4プロパティの「ユーザー」指標のほうが多くなるケース」についてお話します。
少し短いので、適当に読んで頂ければ幸いです。
ユーザー数のカウントの仕方をおさらい
UAプロパティの場合
▼判定する情報
ブラウザに保存されるCookieに保存されるユーザー識別子=「クライアントID(デバイスID)」、または会員情報などの「User-ID」ごとに判別
▼ カウントするルール
GAで1ヒットでも何かしら記録したユニークユーザー数をカウント
GA4プロパティの場合
▼判定する情報
【ユーザー識別スペース】という判定情報を整理する仕様があり、UAと違って複数の情報を順に採用してユーザーを判定します。また、「レポート用識別子」というプロパティの設定項目からどのような識別子を採用するか選択できます。
「ユーザーID」
ログイン中のユーザーの会員情報など永続的に割り当てる固有のID(参考URL)
「Google シグナル」
Google アカウントにログインしていて、広告のカスタマイズをオンにしているユーザーと関連付けられたサイトとアプリのセッション データ(参考URL)
「デバイスID」
ウェブサイトの場合はUAと同様にCookieに保存されるクライアントIDという識別子を使用。アプリの場合はインスタンスIDを使用。
「モデリング」
Cookieに関する同意モードのバナーを実装したサイトでは、同意を拒否したユーザーの行動記録は計測されません。そのようなユーザーの行動は、計測可能なユーザーの類似行動から機械学習でモデル化して推定した実績としてカウントします。適用には一定の条件があるので今のところあまり気にしない。(参考URL)
▼ カウント方法
サイトやアプリがフォアグラウンドにあった時間が 0 よりも大きいユニークユーザー数を「ユーザー」指標でカウントします。
フォアグラウンドとは、
・ウェブサイトサイトを表示しているブラウザのタブ
・アプリの画面
これらが、使用している端末の最前面で選択・表示されている状態を指します。ブラウザで複数のタブを展開している場合、閲覧中ではないタブは「バックグラウンド」だと覚えておけば一旦大丈夫です。今日は娘が寝ている間しか書けないので長い話はまた今度。
さて、この「フォアグラウンド」という状態はGA4にとって非常に重要です。ウェブサイトであれば、ユーザーエンゲージメント「user_engagement」イベント に主に付与されるパラメータ 「engagement_time_msec」で【フォアグラウンドの状態で表示された時間】が計測されます。(参考URL)(参考URLその2)
このパラメータの値が0よりも大きい=1秒以上フォアグラウンドだった場合、GA4の「ユーザー」指標でカウントされます。
ちゃんと1秒以上滞在しているような【アクティブユーザー】をカウントするイメージです。
フォアグラウンドが1秒以上かどうかを問わず、計測対象とするのは「総ユーザー数」という指標です。UAと比較して近しい実績になるのはこちらですね。
ということは?
UAよりGA4の方が、よりユーザーを判定する材料が多く精度が高くなる
↓
UA:同一ユーザーと判定できるケースが少ないので、同じユーザーを別ユーザーと記録してしまうケースが考えられる
GA4:同じユーザーと判定できるケースがUAより多いので、同じ集計期間でユーザー数を比較すると少なくなる(同じユーザーを別人扱いする重複カウントがない分)
このようになると思います。
UA>GA4 というユーザー数になりそうですよね。ね?
ん?
となることもあります。そうですGA4の方がユーザー数多いケースです。
これは、仕様の違いがわかっていれば割と簡単なクイズです。
それではクイズです
例えばあるユーザーが
12月1日 iPhoneでSafariブラウザのタブでウェブサイトを訪問し、10秒滞在しました。その後、該当のタブAを開いたまま別タブBを追加して別の検索行動に移行しました。このときタブAはバックグラウンドです。
12月2日 同じiPhoneのSafariブラウザでタブAを再度フォアグラウンドにして、閲覧途中だったページを縦にスクロールして、1分かけて最後までページを読了してからブラウザを閉じました。
このとき、
カスタムのイベントを実装していないUAプロパティの「ユーザー」と
拡張計測機能のイベントをすべて有効にしているGA4プロパティの「総ユーザー数」では
12月1日~12月2日の2日間で、日別のユーザー数を集計するレポートではどのようにカウントするでしょうか?
それでは答えです
UAプロパティは、タグが埋め込まれたウェブサイのページが閲覧されると「ページビュー」という種類のヒットを記録します。
閲覧とは、ページの読み込みが発生するタイミングを指します。
「ページ読み込みという条件を満たすとGAタグがPVを記録する」という動作が発生するわけですね。
今回は12月1日にウェブサイトを開く=閲覧=ページを読み込むというユーザーアクションがあったので、このときに条件を満たしています。
12月1日は、1ユーザーが1ページビューを記録したと計測されますね。
では12月2日はどうでしょうか?
開きっぱなしのタブの閲覧を再開する場合、そのページをリロードする処理が発生しなければ、ページの読み込み=HTMLに埋め込まれたJavaScriptの処理などが行われません。
よって、12月2日の日別のユーザー数は0、ページビュー数も0です。
では、GA4ではどうでしょうか。
GA4も、ランディングしたページの閲覧時に「page_view」や「session_start」などのイベントが記録されます。
12月1日は、1ユーザーが1ページビューを記録したと計測されますね。1秒以上のフォアグラウンド状態であればアクティブユーザーとしてもカウントされます。
では12月2日の日別のユーザー数はどうなるでしょうか?
ページの読み込みが発生せず、ページ最下部までスクロールされたことによって「scroll」イベントが記録されます。
※そして、このイベントには「engagement_time_msec」パラメータが付与されています。
つまり、12月2日の日別のユーザー数は1ユーザーだと記録できます。
ページビューのない、ユーザー体験をしっかりとキャッチアップできるGA4ならではの計測パターンの一例ですね。
それでは〆です
今回のクイズは一例ですが、UAとGA4は大きく仕様が異なります。
その差をしっかりと理解することで多くの学びがあるのは事実ですが、GAを使って事業成果を伸ばすとか、UXをよくするための分析・評価をするといった「GAを使う本来の目的」からは少し離れた話になりやすいです。
UAとGA4はそれぞれ違うもの。
GA4で評価・記録されているユーザー行動を元に、ユーザーにより良い体験を提供するにはどうすればいいか?
ということに集中したほうが、多くの場合有益だと思います。
初級者のうちは違いに囚われすぎず、GAではなくユーザー(の体験)を見るように心がけるといいんじゃないかなと思います。
お後がよろしいようで。
※Looker Studio公開してほしいとか、もっと詳細にUAとGA4の差を解説する記事を書いてほしいといったご要望はAmazonほしいものリストからメッセージをどうぞ!おやすみなさい!