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2024年の仕事まとめ(2)

2024年には訳書が2冊刊行されました。昆虫と菌類という、生態系を支える小さな生き物たちの本が2冊揃いました。翻訳時期も連続していて、共通して出てくる生物(ハキリアリとか)もいて、私の中では完全に姉妹本のような存在です。どちらの著者も昆虫/菌類愛にあふれていますし。


菌類の隠れた王国 森・家・人体に広がるミクロのネットワーク

菌類が森や畑、家の中などあらゆるところにいて、植物や動物、そして私たち人間と共生している(そして脅かしもしている)ことを、菌類に近い視線で語った一冊です。

イントロダクションの立ち読みはこちら(PDF)


虫・全史 1000京匹の誕生、進化、繁栄、未来

昆虫学を学び、BBCで自然番組の製作にたずさわった著者ならではの、昆虫愛あふれる巧みなストーリーテリングにうならされます。その鈍器ぶりと表紙のインパクトでネットで話題にしていただき、発売前重版になりました。

2冊を訳して思うこと

私のこれまでの訳書は物理学や天文学の訳書が多く、日経サイエンスの方でもそうした分野を主に担当しています。なので、この2冊は私にとって比較的新しい分野とも言えるのですが、私の頭の中では、宇宙も素粒子も昆虫も菌類も仲間のような気がしています。小さな構成単位が独自の進化をしつつ、無数に集まって大きな構造を作っている、そういう世界の見方がどちらの分野にも共通しているように思うからです。

もちろん、翻訳作業としてはまったく勝手が違いました。昆虫や菌類の名前を調べたり確認したりするのが一番大変でした。以前昆虫本を訳したときに種名の調査の経験はあったのですが、特に『虫・全史』のほうは600種近い昆虫が登場するなど、数が多くて目が回りそうでした。そうした昆虫の和名や学名、その他内容のチェックなどでは、監修の丸山宗利先生には大変お世話になりました。

そんな分野による違いは意識しつつも、どんな分野でも根底の部分には何か同じものが流れていることを感じながら、いろいろな本と出会って世界を広げていけたらいいなと思っています。


2024年の仕事まとめ(日経サイエンス翻訳記事)はこちら↓。


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