回帰分析を用いた種牡馬別配合分析【ブリックスアンドモルタル編】
こんにちは。前回のドレフォン編に続き、Storm Cat系の社台SS繁養種牡馬であるブリックスアンドモルタル（BaM）を取り上げます。
まだ1世代しかデビューしていない種牡馬であり、この分析の手法から鑑みると極めてチャレンジングではありますが、現時点における傾向としてご覧いただければと存じます。
※前回のドレフォン編はこちら
分析アプローチ
分析アプローチの概要は以下のとおりです。
【手順1】産駒の9代インブリード情報を取得する（※1）
【手順2】中央競馬平地競走の勝馬かどうか、またはそれに類似する情報（例えば1走当たりの獲得賞金が基準値以上かどうか）を0 or 1の目的変数とする。そして、「手順1」のインブリード情報を説明変数とし、各インブリードの目的変数に対する寄与度を回帰分析で算出する（※2）
【手順3】上記「手順2」の各インブリードの寄与度を合計した上で、各馬の合計寄与度を標準化し、各馬のスコア（以下、評価スコア）を算出する
【手順4】その評価スコアを、カットオフ値に基づいて3~4つに分類する（通常のカットオフ値は、プラス1、プラスマイナスゼロ、マイナス1）（※3）
※1 インブリード情報はデータ入手先のデータ欠損等により、完全に網羅されていない場合があります
※2 各産駒において出現頻度が低いインブリードは、分析対象外としています（通常は頻度が高い上位100~150種類のみを採用）。また全きょうだいの場合、そのきょうだいのうち分析時点で最も成績が優秀な産駒1頭のみを分析対象としています。
※3 回帰分析の際に学習データとテストデータに分けて分析しているとはいえ、限られた頭数の中での分析であり、また当然ながら過去の実績に基づく分析であるため、未来の予測には限界があります
ブリックスアンドモルタル産駒の分析結果
配合スコアに基づき、以下の2つに分類しています。過去の分析では4つに分類していますが、まだ1世代しかデビューしていないという背景を鑑み、2つの分類にとどめています。
Good（評価スコア 0以上）
Below Average (評価スコア 0未満）
上記2分類による中央競馬平地競走勝馬率、特別戦勝馬率、勝利数芝・ダート比は以下のとおりです。各分類における「父ブリックスアンドモルタル（BaM）以外の母産駒」のデータも併記しています。
まだ1世代、かつ3歳3月という時期を考慮した上で評価する必要がありますが、アベレージ種牡馬というよりかは、飛距離系の種牡馬なんだろうなという印象を持っています。
血統表チャートの見方
赤色が濃いほど「産駒全体と比較して、当該配合パターンにおいてインブリードしている産駒割合が多い」を表しています。
紺色が濃いほど「産駒全体と比較して、当該配合パターンにおいてインブリードしている産駒割合が少ない」を表しています。
白色は、インブリードなし OR インブリードが少数のため分析対象外 OR ほぼ全頭がそのインブリードを持つため分析対象外の血統を意味しています。
以上の図では、ゴールドシップ産駒全体のPrincely Giftインブリード持ち産駒割合が22%であるのに対して、このパターンの産駒の同インブリード持ち産駒割合が45%（その差+23ポイント）なので、Princely Giftが濃い赤色で表示されています。
【Below Average】
まずは、成績が下位の配合パターンである【Below Average】についてです。まだ1世代だけであること、および過学習の可能性は十分に考えられますが、現時点で中央に43頭が出走し、勝馬はわずか2頭のみです。ただしブラックタイプが1頭います。
上の血統表チャートをみると、Bold Ruler周りの血統の色が濃い紺色になっています。この【Below Average】群は、後にご紹介する【Good】群より以下の部分の強調が乏しいことを表しています。
Storm CatのSecretariat（および、その父Bold Ruler、母Somethingroyal）
Giant's Causewayの3代母Imsodearの父Chieftain（その父Bold Ruler、母Pocahontas）、およびImsodearの母Ironicallyが持つIntent、Heliopolis
Ocean Crestの母父Seattle Slew（その3代父Bold Ruler）
【代表産駒】
セシリエプラージュ（フィリーズレビュー-G2 3着）
ヴィスマール（未勝利戦）
【Good】Bold Ruler周りの血統を強調することが現時点でのベストアプローチか
この血統表チャートの通り、上の【Below Average】の逆となりますので、以下のBold Ruler周りが強調されています。
Storm CatのSecretariat（および、その父Bold Ruler、母Somethingroyal）
Giant's Causewayの3代母Imsodearの父Chieftain（その父Bold Ruler、母Pocahontas）、およびImsodearの母Ironicallyが持つIntent、Heliopolis（同馬は
Ocean Crestの母父Seattle Slew（その3代父Bold Ruler）
現時点で41頭出走し13頭が勝ち上がり。重賞勝馬（地方交流を含む）を複数出しています。
【代表産駒】
ゴンバデカーブース（サウジアラビアRC-G3）
イーグルノワール（兵庫ジュニアGP-Jpn2、全日本2歳優駿-Jpn1 2着）
アンモシエラ（ブルーバードC-Jpn3）
クイックバイオ（ききょうS）
アンモシエラについては、ゴンバデカーブースとともに次の章で取り上げます。
【仮説】Blushing Groom持ち種牡馬にはForliと相性がいい？
ゴンバデカーブースとアンモシエラは、ともにBold Rulerのインブリードを持ちませんが、一方で「Miesqueを介さないNureyevを持つ」という共通項があります。
Nureyev持ち繁殖牝馬の経路別中央勝馬率（Bold Rulerフリーの牝馬のみ）
Miesque非経由：出走6頭中、勝馬2頭（その2頭は重賞勝馬）
Miesque経由：出走8頭中、勝馬2頭（その2頭は現時点では1勝C）
この配合分析をしていて気付いたんですが、デクラレーションオブウォー（DoW）とドレフォンはいずれもBlushing Groom＆Forli持ちで、この2頭はいずれもForliのインブリードがポジティブに働いていたんですよね。（DoWにおけるForliの重要度スコアは+0.373、ドレフォンは+0.373）
ブリックスアンドモルタルもGiant's Causeway経由でBlushing Groomを持つ種牡馬です。これは完全に仮説の域を出ませんが、Blushing Groomを持つ種牡馬は、もしかしたらForliを持つ牝馬と相性がいいのかもしれません。これについては今後も検証を続けていきます。
なおNureyevの経路をMiesque経由・非経由としたのは、この分析をしていくなかで、Kingmambo持ち牝馬との相性があまり芳しくない（評価スコアが低調）からです。
ロイヤルスキー持ち牝馬との相性は良好！
上で示した血統表の中に、ロイヤルスキー持ちの産駒が2頭いましたので、「ロイヤルスキー持ち繁殖牝馬」の産駒について調べました。
現時点で中央に8頭出走し、イーグルノワールを含む5頭が勝ち上がりと高率であり、ニシノインヴィクタも新馬戦で2着していますので、相性はいいんじゃないでしょうかね。
社台ファームのロイヤルスキー持ち牝馬といえば、やっぱり期待したくなるのはダイワスカーレット牝系の産駒です。現1歳に産駒が1頭いました。社台RHで募集されるんでしょうか。
後記
濃いインブリードを持つ種牡馬は、当たり外れが大きいという印象を最近持っています。
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