この記事は「paiza Advent Calendar 2022」の最終日25日目の記事です。
最終日はpaiza株式会社で社長をやっている片山がお送りいたします。
ちなみに、paizaはITエンジニア向け国内最大の転職・就職・学習プラットフォームです。(paiza.jp)
記事概要
先日、Twitterで流れてきて読んだ Harvard Business Review(以下HBR)の「イノベーティブな企業文化の残酷な現実」という記事(英文)が面白かったので、そのポイントと所感をまとめてみました。
内容としては、イノベーティブな企業文化には下記の事がセット必要であるという話です。
失敗には寛容だが、無能には寛容ではない
実験への意欲と高い規律性
心理的に安全だが、残酷なほど率直である
コラボレーションと個人の意思決定、説明責任
フラットで強いリーダーシップ、オーナーシップ
「失敗に寛容」、「実験の推奨」、「心理的安全性が高い」。「コラボレーションが活発」、「フラットな文化」といった革新的でイノベーティブな企業文化は自由で楽しいことばかりでなく、厳しい責任が伴うことも認識しなければならない。また、これらの文化は均衡を保つのが難しく、不安定である、といったものです。
※元記事が英文だったので、英文読まなくても内容が分かるように引用多めです。割と自分用の備忘録に近い内容となっています。
※翻訳はほぼDeepLで、おかしそうなところは自分の解釈で修正しています。
なぜイノベーティブな企業文化は難しいのか?
失敗に対する寛容さ、実験の推奨、心理的安全性、コラボレーションフラットな文化といった企業文化は、いろいろな経営に関する書籍にもたびたび登場しますし、シリコンバレー的な文化として、高い業績を上げるために必要なものとして認識している人も多いように思います。
しかしこれらの事を実践しようとするとなかなか難しく、いくつもの落とし穴にはまってしまって、高業績どころか、下手すると怠惰で堕落した組織になってしまったりもします。
失敗しても誰も責任をとらない、やりたい事だけをやる実験、心理的安全性というか一方通行の主張ばかり、コラボレーションという名の合議で意思決定がなかなかできない、フラットだが方向性がばらばら、など。スタートアップあるあるかと思います。
自分自身も、paizaではオープンでフラットな、自走性のある組織を作りたいと思いながらも日々試行錯誤をしています。しかしながら、こういった企業文化が望ましいというのは分かっていても、なかなか実現が難しい理由について、HBRの記事では次のように誤解が原因だ書かれています。
ではポイントごとに元の記事の引用含めてみていきましょう。
1.失敗には寛容だが、無能には寛容ではない
失敗からそのコストに見合った学びを得ることがポイントであり、非生産的な失敗に関しては寛容であってはならない、という内容です。一方であまりに厳しくしすぎるとチャンレンジすることを恐れるようになるため、失敗に対して寛容というはとても繊細なバランスが必要だというのが分かります。
自分自身の事を翻っても、最初に立ち上げた事業があまりうまくいかなかったが、そこであきらめずに、失敗した事業から得られた知見からpaizaのビジネスモデルにたどり着きました。失敗という心折れることから逃げず、学び取るということが重要ですが、失敗から学び取ってもう一度チャレンジするというのは全員ができるかというと、それなりの覚悟がないとできないことかもしれません。
2.実験への意欲と高い規律性
新規事業などでもありがちですが、撤退ポイントを設けず、やってみないと分からないといって始めてしまい、辞め時が分からなくなるというのはよくありがちなダメパターンです。また撤退ポイントを決めていても、未練が出てずるずるやってしまいリビングデッドになってしまうというのはありがちです。
こうならないためには実験とセットで、何を検証するか、どうなったら撤退するかという高い規律が必要という内容です。
3.心理的に安全だが、残酷なほど率直である
心理的安全性は色々なところで話題になることが多いワードです。心理的安全性という言葉のイメージから衝突を避けて本音を言わなくなってしまったり、部下から上司には何でも言えるが、上司は何も言えなくなってしまう、言いたい放題、言いっぱなし状態、みたいなことはよくありがちな失敗パターンです。
心理的安全性はアイデアに対して全員が率直である状態が望ましいので、全員が自分のアイデアに対して、残酷なほど率直な批判がされることを受け入れる必要であるという内容です。
これを全員に求めるのには、全員にそれなりの議論習熟度が必要になってきます。アイデアに対する意見と、個人に対する批判を話す側も聞く側も分けてできるスキルが必要ですし、今自分の意見にこだわってるな、といったメタ認知スキルも必要とされます。しかし日本の教育ではこういった議論やディベートを行うというのは従来あまりされてこなかったため、意外とアイデアに対する意見と、個人に対する批判を区別できないことが、それなりに多いように思います。
4.コラボレーションと個人の意思決定、説明責任
コラボレーションとは、合意形成や合議ではなく、協力を得たうえで個人が責任をとって意思決定し、説明責任を果たすことである、という内容です。
なんかとりあえずみんなで集まって話ををしたら、良いアイデア出てくるかも、と言って時間を使いすぎたり、みんなで決めようとして中々意思決定がなされず時間がかかる、というのはありがちな話です。
5.フラットで強いリーダーシップ、オーナーシップ
フラットな組織は、ヒエラルキー型組織より強いリーダーシップがリーダーにも個人にもないと方向性が定まらず、カオスになってしまうという内容です。
フラットに経営層とコミュニケーションができるし、階層が少なく情報もオープンで、意思決定がスピーディーであるというのは良く求められる話ではあります。しかし、フラットだとマネジメントが行き届かなくなるためたいがいの場合は組織崩壊するし、情報をオープンにしてもメンバーが自ら情報を取りに行かなければ機能はしません。意思決定もフラットだが上に判断を仰ぐ中央集権的になってるとむしろスピードは停滞します。
明快な戦略と、戦略に基づいた一人ひとりのオーナーシップが必要、ということなので、これまた全員に求められるレベルが極めて高いと感じます。
まとめ
イノベーティブな企業文化は、次の3つの理由から、特に困難と元記事で指摘されています。
「失敗に寛容」、「実験の推奨」、「心理的安全性が高い」。「コラボレーションが活発」、「フラットな文化」といった革新的でイノベーティブな企業文化は、えてして自由で、のびのびとした、キラキラした部分に目がいちがちです。しかし実際これらをやろうとすると、リーダーだけでなく、メンバーにも高いレベルが求められる、とても厳しくハードな規律と強さがセットとなる文化であることが分かります。
自分自身、オープンでフラットな、自走性のある組織を作りたいと思いながらも日々試行錯誤をしている身とては、この記事はとても刺さる内容でした。ぼんやりとこういう感じかなというのは日々感じていたけど、きちんと言語化されていると思考の整理としてとても有用な記事でした。
興味がある方は原文も読んでみてください。
最後に採用の宣伝。オープンでフラットな、自走性のある組織を作りたいと思ってる方は是非お声がけください!
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