見出し画像

長崎の辺境ローカル店が、全国に名を轟かせるまでになった理由

2024年12月18日、オーガニック野菜直売所タネトを経営する奥津さんの講座にZOOM参加しました。講座のInstagramでの告知情報はこちら。むちゃくちゃよかったので、受講しながら書いていたメモを元に、鮮度高いうちに記録しておきます。

タネトさんは、長崎県雲仙市という辺境の地で、直売所という、どローカルな場所を運営しながら、「種を蒔くデザイン展」の他、全国区で意味わかんない規模のイベントもたくさん開催されています。ビジネス臭を漂わせることなく、日本人全員が知ってるような著名人たちにも出演してもらいまくっており、一個人が行き着ける最高到達地点レベルの方だと個人的には思ってます。

そんなタネトさんが、5周年企画ということで開催しているのが、『直売所タネトの作り方』『タネトの企画の創り方』の2本立て講座。

ぼくが今回参加したのは前者で、後日、後者の講座にも参加予定です。直売所に限らず、場所をつくる人間にとって、とても勉強になる内容でした。動画アーカイブも3カ月ほど残るようなので、間に合うなら購入をオススメします。講座は約6時間あり、6,000円でそのすべてが視聴できます。

この記事では、その中から個人的に刺さった箇所をピックアップして記録しています。他人様の有料コンテンツを、ぼくが公開するのもどうかなぁと思いつつ、「講座代6,000円を支払って6時間聴くのは抵抗あるけど、内容をざっくり知りたい」方向けに、購入を促す宣伝記事であると捉えていただければ幸いです。あくまで個人的なメモに毛を生やした程度なので、そのあたりはご了承ください。


以下、カギ括弧書きが奥津さんの話(意訳も大いに入ってます)。そのあとに、ぼくの所感が続いたり続かなかったり。

●前提

「これはあくまで、あの場所でやったタネトの場合の話。鵜吞みにするな。タネトをつくるときも、他の直売所のことは一通り調べはしたけど、マネはしてない。異業種でめちゃくちゃ好きな人たちをベンチマークとした。」

-この記事を書いている時点で、ぼく自身も(直売所ではないのだけど)場所を継ぐということを検討している最中だったりします。異業種で好きな人たちを参考に、という視点は自分がわくわくできて最高。

●前の直売所からどうやって引き継いだのか

「飲食店と料理教室をやってきた。東京から雲仙に来て5年経って、オーガニックの野菜を買いたかったが、そんな場所がなかった。そのタイミングで、売れてない直売所を引き継ぐ話が来た。流通のプロからは軒並み反対された。人が少ない上に、田舎の人はみんな野菜をもらってるからという論理。でも、みんながダメだと思ってやりたがらない分、成功のハードルが低いと考えた。」

「よそ者だから、元々いる人のポジションをとらないで、人がやりたがらないところをやるのがいい。」

-ぼくにはなかった視点。田舎だからこそ、少ないパイを取り合うことはバカらしいということもあるだろう。今、京都・大山崎で友人と立ち上げようとしているコミュニティ事業は、この点にも留意したい。

●オーガニックへと切り替えた方法

「元々の直売所が売れてなかったから、オーガニックのみに舵を切りやすかったというのはある。ここでオーガニック以外も扱うと、中途半端になって生き残れないと思っていた。初期設定が命。」

-弱者は尖らないと生きていけない。そういえば、木下斉さんがVoicyで話していた弱者の戦略「ランチェスター戦略」の本をまだ読んでいない。読もう。とりあえずAmazonでポチッと。

「農家さん1人1人と腹を割って話す。最初は農家さんを50人くらい集めて説明会を開いた。特に反応が悪かった10人くらいとは個別に2~3時間くらい話したりも。敵対するわけではなく対話をして分かり合い、あと腐れないように。」

-やはり個々人と1対1で話をしていくしかない。大きなことをやるにしても、まずは1人1人。それなくして大きなことをやっても机上の空論にしかならない実感が、ぼくにもうっすらとある。

●農家さんや料理人との信頼関係の築き方

「農家さんが土地を持って逃げられないのに対して、直売所や場づくりは、誰でもすぐにできてしまう。だからこそ、本気で場所をつくらないと対等になれない。」

-ギャラリー運営をしていて、すごく思うところ。専業の作家さんは、生活を賭けて作品をつくっている。一方で、ぼくは片手間でギャラリーを運営している。そこに引け目を感じている。全力を投じられなくて引け目を感じるくらいなら、やめた方がいいのかもしれない。

「農家も料理人も、コンセプト・方向性が一致していない人とはムリに一緒にやる必要はない。むしろ、やらない方がいい。だからと言って、敵になるわけではない。」

-これもまったく同意。きちんと線を引くことで、一緒にやっていきたい人からの信頼も増していく。

●端境期(野菜が市場に出ない時期)をどうするか

「嬉しいとき、困っているとき、よくしてもらえたことに対して、大きなリアクションをとっていると、それに寄りそってくれるようになる。ex.)端境期に野菜を持ってきてくれた農家さんをめっちゃ歓迎するとか」

-建築現場でも、きれいに作ってくれたことに対して、過剰に喜ぶくらいの姿勢を見せておくと、次からも快くやってくれるもの。裏技はなく、こういう一つ一つのコミュニケーションの積み重ねでしかない。

●一人でも運営できる仕組み

「はじめの一歩は小さく。自分一人でできる範囲で。お金も、ここまでなら失敗してなくなっても、やりたかったからいいかなと思えるラインで。」

-大きく共感。本当にやりたいことなら、100万円くらい自腹切って、結果、なくなってもいいかなと思う。逆に、そう思えるくらいやりたいことじゃないと、やるべきじゃない。大きすぎる融資も、それに縛られて身動きとれなくなるなんて本末転倒。

「補助金はできるだけ使わない。クラファンもしない。」

-木下斉さんもこの考え方。ぼくは、補助金なしでは成り立たない形や、動きを縛られる形はよくないが、ムリなく使えるものは使ったらいいと思ってる。クラファンは、仲間づくりという点でありだと思ってる。ただ、これも自分の信用の切り売りなので、いつそれを使うかは見極める必要あり。

●野菜売り場のプラフリーについて

「前提として、プラスチックフリーは暴力。プラの方が見た目がよい。野菜の持ちがよい。バーコードやラベルなど、管理もしやすい。こんな小さな直売所でやってもたかが知れてる。」

「それでも、やりたかった。最初は企画として、2週間だけやってみた。そこから定番に。今は野菜を水に差すスタイルでやってる。プラありよりも、めちゃ労力はかかる。でも、やっぱり気持ちいい。」

-そんなに労力差があるとは。そこまでしてやる意義は果たしてあるのかは、ぼくも懐疑的なタイプだが。気持ちの面は大きいらしい。

●なぜ本と器を売っているのか

「野菜の売上のコミッションだけでは、単純にきびしすぎる。奥津さん自身が本と器が好きで、いくらでも語れるから。」

-コミッションのパーセンテージも公開されていた(一般相場10-15%くらいだろうとも)が、そもそも野菜は単価が安いし、足の早い商品なので、本当にむずかしいだろうと思う。本と器は腐らないけど、それでもキツイだろな。腐らないからいい、じゃなくて、自分が好きだから、という軸がないと、熱量をもって臨めない=成功しないだろうとも思う。

●なぜ通販をしないのか

「誰かの売上を奪わない "無敵" 状態をつくる。地方でイスを奪い合ってもしょうがないし、ネットで世界と闘う意味はない。固有のポジションをとる。」

●なぜイベントを打ち続けるのか

「日帰りで遊びに行ける圏内なら、尖ったことをやってれば人は来る。東京や関西は商圏1000万人くらいいるからそれで成り立つ。タネトは商圏20~30万人くらい。イベントを打ち続けないと成り立たない。続けることで客への意識づけもできる。」

●野菜の品揃えと並べ方の重要性

「飲み会の肝は、メンバーと席順。野菜の売り場も、どういう農家さんのどんな野菜をどんな並びで行うか。置く場所で全然変わる。足の早さ、在来品種かどうか、在庫数なども踏まえた上で、それぞれが一番輝くポジションに置く。それを常に考え、試行錯誤していくしかない。」

「価格も、その日ごとに動く価格帯がある。210円→200円にしても売れない、160円→190円にしても売れる、など価格のブロックはある。ブロックの中で最高値を付ける。あとは在庫とのバランスで、農家さんが譲れない価格を踏まえて売り場側の感覚で決める。」

●Instagramと現実の連動

「SNSは不可欠。苦手とか言ってないで、やれ。農家は野菜をつくることが仕事、場づくりをする人は接続面をつくることが仕事。インスタのトップ画像の並びがポートフォリオ。リアルと差ができないようにしつつ、写真やテキストにこだわる。」

●その他

「初期衝動を大切に。自分が過剰にのめり込めること、得意なことをやる。そうすれば、止められたってやる。最初の座組設計が一番大事。」

-まさに。今、ぼくが場を継ぐかという話も、きれいごとで意義を説明するのは簡単。でも、本当に自分が芯からやりたいことなのか?やりたい座組をつくれるのか?そこに、これ!ってものが見出せない限りは、実際に継ぐことはできない。

接客は橋架け。きっかけだけつくってあげればいい。ラフなポップ、お客さん同士の共通点つなぎなど。デザインしようとしすぎない方がいい。」

「社会的正義や、これが正解!というものを掲げない。窮屈になる。」

「ブリコラージュの考え方。あるものを活かしてなんとかする。地域の強いプレーヤーを立体的に見せるだけでも十分な魅力になる。」

「お客さんの民度を保ち、場の気持ちよさを維持するためには、方向性をしっかり打ち出す。」

-かもベースでも実感している。Instagramの投稿で、何度もメッセージを打ち出し、会員の審査も行うことでフィルタリングをしていて、だからこそ気持ちよい空間をつくれている自負がある。

「タネトやHIKEは、定期のマーケットを開催している。出店料は1000円や1500円。けど、もらった以上に買い物しちゃってる。」

-イベントをたまに打つ身としても、出店料は安めにして、出店者にも満足して帰ってもらうのが一番大事だと感じる。そうでなければ続いていかないし。主催者自身が買い物して盛り上げていくことも大事。ムリして買うものでもないとは思うけど、好きな出店者さんを呼ぶから買いたくなるという循環もある。

「料理教室という枠組みは強い。なぜなら、保健所等の許可が不要。料理を出してお金をもらっても、レシピも出すなら問題ない。」

-↑料理が得意な農家さんへの助言より。グレーゾーンではあるが、目から鱗の戦略。


以上。

ぼくの所感は不要な気もするけど笑、また見返したときに、このときはこんな状況・考えだったなぁと個人的に振り返るためのものでもあるので、ご容赦を。

もっとちゃんと内容を知りたい方は、ぜひタネトさんの講座を購入してください。なかなかボリュームありますが笑、アーカイブは倍速再生もできるので、作業しながら聴くのもいいと思います。


いいなと思ったら応援しよう!