断熱改修の選択肢とコスト知識 - 実例写真付き
前回の記事では、体感や電気代・健康面から、断熱改修の価値について検証してみました。今回は、断熱改修の具体的選択肢やコスト面について解説するとともに、写真を交えて実例も紹介します。
マニアックな内容なのであまり読まれないだろうなと思いつつ笑、今後、断熱改修の需要はどんどん伸びていくはずですし、きちんと解説しておく価値があると思い、PCに向かっています。プロ任せにしてもいい内容かもしれませんが、勉強熱心なみなさま、どうぞお付き合いください。
1. 断熱改修の主な選択肢
断熱改修には主に3つの選択肢があります。開口部の断熱、内断熱、外断熱です。すべて併用することもできますし、それぞれ単独で行うことも可能です。
1.1 開口部の断熱
窓やドアなどの開口部を高性能なものに交換する方法です。
熱の出入りが多い部分なので、コスパが高いです。
また、局所的な改修もしやすく実現ハードルが低いです。
1.2 内断熱
室内側から断熱材を施工する方法です。
比較的安価で、外観を変えずに実施できます。
1.3 外断熱
建物の外側から断熱材を施工する方法です。
より効果的ですが、コストや実現ハードルが高いです。
特にマンションでは、個人単位で実現するのはまずムリでしょう。
上図を見ての通り、開口部からの熱の出入りが最も大きいので、多くの場合、「開口部の断熱改修」の優先順位が1番になってくるでしょう。
2. 工法種別とコスト
上述した選択肢の内、外断熱はかなり実現ハードルが高いので、今回は内断熱と開口部の断熱についてだけ掘り下げます。
2.1 「開口部の断熱」の工法種別とコスト
開口部とは、多くは「窓」を指します(たまに玄関ドア)。昔ながらのアルミサッシは、熱をよく通し、気密性も低いため、その一部あるいは全部を交換します。その工法は大きく分けて4つ。
◆ガラス交換
単板ガラスを複層ガラスに換えることを指します。工事はガラス交換のみなので簡単でコストも抑えられますが、サッシ(窓枠および障子部分)自体は古いもののままなので、隙間はなくならないし断熱効果もあまり高くありません。それでも、ガラス面の結露対策としては十分効果がありますし、新たなスペースを必要としないので、現状をできるだけ変えたくない場合に有効な方法です。
◆内窓設置
既存窓の内側に、新たに窓を新設する方法で、二重窓と呼ばれるものです。この方法は、4つの方法の内、断熱効果が最も高くなりやすいです。ただし、室内側に新たに窓を設置するため、その分、部屋が狭くなりますし、窓額縁の奥行を大きくするなどの付随工事も発生しがちです(=その分コストも上がる)。また、日常的に開閉する窓だと、その開閉手間が2倍になるのも気になるところです。
◆外窓交換(カバー工法)
既存窓の上から新たな窓枠を被せて、障子・ガラスも性能の高いものに交換する方法です。工事は一日で完了しますが、部材が多いからか価格が高いのと、工法の性質上、窓枠が大きくなるなど見た目がダサくなりがちです。
◆外窓交換(はつり工法)
既存の窓を丸々入れ換える方法です。上述のカバー工法は既存窓よりもガラス面積が小さくなってしまいますが、この工法は改修後もサイズが変わりません。ただ、窓周りの外壁や内壁などにも手を加える必要があり、関係工種が増え、大掛かりな工事になってしまいます。
「開口部の断熱」の4つの方法、比較するとおおむね下記のような関係になります。
断熱効果:内窓設置>カバー工法=はつり工法>ガラス交換
費用面:(安価)ガラス交換>内窓設置>カバー工法>はつり工法(高価)
部屋の広さや見た目、工期なども考慮する必要がありますし、何を優先するかで採用する方法が変わってきますね。
開口部の断熱の超概算費用としては、
・ガラス交換は、1窓あたり5~10万円程度
・内窓設置は、1窓あたり15〜30万円程度
・樹脂サッシへの外窓交換は、1窓あたり30〜50万円程度
住宅全体の開口部に適用すると、100〜300万円程度です。
2.2 「内断熱」の工法種別とコスト
内断熱は、壁断熱、屋根断熱、天井断熱、床断熱などの総称です。いずれも建物の外周面には手を加えず、内部だけで処理しようというもの。
大きく分けて、仕上面を一度剥がし下地材の間に断熱材を入れていく方法と、既存を解体せず内側に新たに壁等(天井、床)を起こす方法の2種類があります。
◆下地材の間に断熱
一度、壁等の仕上面を剥がさなければならないものの、終わってしまえば見た目は改修前と変わらないまま断熱性は向上している状態にできます。
◆既存仕上の内側に断熱
壁等の既存仕上を剥がさないで済むものの、内側に新たな面をつくる分、数センチほど部屋が狭くなります。なお、RC造に関しては、壁の内部までコンクリートで満たされているので、こちらの方法しか選択肢はありません。
内断熱工事の超概算費用としては、
・一般的な戸建住宅(120㎡程度)で200〜400万円程度
・マンションの一室(70㎡程度)なら100〜200万円程度
といった程度でしょうか。
3. 断熱改修事例
抽象度の高い説明が続きましたが、ここからはぼくが手掛けた断熱改修の写真を用いて具体例を見ていきます。
3.1 RC造マンションの断熱改修
このnoteでも何度も登場しているぼくの元・自邸は、築40年弱のRC造マンションでしたが、そこで行ったのが開口部の断熱および内断熱です。
外部に面する壁面には、吹付発泡ウレタンという高性能断熱材を付加して、その上に新たな壁を起こしています。「内断熱(既存仕上の内側に)」です。床と天井に関しては、上下ともに他の住戸があり外気に面していないので、断熱しませんでした。
窓は、既存のアルミサッシ+単板ガラスはそのままに、その内側に木製造作サッシ+複層ガラスを設置。玄関は、鉄製の既存扉の内側に木製引戸を設置することで、断熱性を高めました。つまり「内窓設置」ですね。
これらの改修によって、築40年弱のマンションとは思えない断熱性を確保することができたのでした。
RC造マンションは、気密を確保しやすく断熱する範囲も少なくなりやすいので、断熱改修の恩恵を受けやすいと言えます。
3.2 戸建住宅の断熱改修
逆に戸建住宅は、断熱改修をしてもその効果があまり感じられない場合があります。というのは、例えば窓と壁だけを断熱しても、屋根や床が無断熱のままだと、そちらから熱が出入りしてしまうし、浴室などが断熱の穴になっていることも多いからです。保温容器である魔法ビンの壁が一部だけ薄かったり、大きな穴が開いていたら、熱は閉じ込めておけないですよね。
以下に載せるのは築20年弱の戸建住宅の改修。築20年くらいだと、多少の断熱はされていることが多いですが、今の常識で見れば、かなり貧弱だし施工も適当です。
断熱に多くの予算をかけられないプロジェクトだったので、完璧な施工には遠いですが、、断熱材間の隙間がなくなるよう敷きつめ直したり、付加断熱を行ったり、通気を確保したりと、お金があまりかからない範囲でできるだけの対応をしています。
なお、このプロジェクトの完成形は、こちらからご覧いただけます。
戸建住宅は、個別具体的な内容となるので毎回こうしておけばOKというものではない上に、気密性や通気計画なども含めた知識が必要で、難易度がずいぶん高くなります。きちんと勉強されている建築士などに総合的な計画をしてもらってください。
ぼくに連絡いただければ、無償というわけにはいきませんが、オンラインで相談にのらせていただくことも可能です。ホームページに料金の目安なども掲載していますので参考にしてください。
4. まとめ
今回の記事は以上となります。まとめると、
●断熱改修の選択肢は、開口部の断熱・内断熱・外断熱の3種あり、開口部の断熱が最もコスパが高い。
●見た目や室面積、工期、コストなどの内、何を優先するかで工法が変わってくる。
●マンションは断熱改修しやすい。逆に戸建住宅は難易度が高く個別具体的な検討が必要。
こうしたことがお分かりいただけたと思います。
次回は、これらを踏まえて断熱改修のための補助金について書きます。最新の補助金情報と、どの改修にはどの補助金がよいか、といったことまでザクっと解説できればと思います。
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