見出し画像

零細起業の経営実務(21) アカデミアとの距離感

起業を考える研究者さんに、リーゾの体験をお伝えしているシリーズ、今回は研究者さんならではの問題になりますが、「起業したら、アカデミアとの縁が切れてしまうのではないか?」という疑問にお答えしたいと思います。

この疑問は、心の片隅で起業を考えている研究者さんが、密かに気に病む要因として、意外と大きなものではないかと思います。

実際、私の場合、起業して以来、学術論文を書いたり学会発表したりする機会はほとんどなくなりました。出不精なこともあり、学会やシンポジウムを聞きにいくこともなかなかありません。

でも、リーゾの場合は、「研究のお手伝いビジネス」をしていますので、日々、最先端の研究を行っているお客様と、核酸抽出やSNPタイピングなど狭い分野に限定されているとはいえ、そこだけなら誰にも負けない専門的な議論ができます。

また、仕事を通じて知識や技術の「守備範囲が広がる」ということもあります。

起業する前は、イネの分子遺伝学のことしか知らず、知り合いもその分野に限られてたのですが、起業してからは、植物はもちろん、微生物やヒトも含めてほぼ全ての生物種の研究者さんとつながり、お手伝いを通じて勉強させてもらえてます。毎回真剣勝負なので、ある意味では普通に研究の仕事をするよりもずっと勉強になっていると思います。

いわゆる「業績」ということで言えば、ほとんど業績にはならないです。
リーゾの場合は、マテメソで紹介いただくのは大歓迎ですが、それ以上の、たとえば論文に名前を入れていただく等は一切お願いしていません。

とはいえ、公的機関が出した論文の共著者の所属がバイオベンチャーになっている例があることを見ると、研究費を出すなど、話の持って行きようによっては可能なこともあるのかもしれません。

研究そのもの以外の活動に目を向ければ、研究界と民間企業の両方が分かる立場として、大学の人材育成プログラムの評価委員を頼まれたり、大学院生向けの講義を頼まれたり、ということもあります。

最近では、公的研究機関がリードするコンソーシアムの一員に加わり、研究活動に復帰することもできました。また、研究者向けの雑誌に、研究者のキャリアパスとしての起業について寄稿させていただく機会もありました。

現在のところ、このようにアカデミアとつかず離れずの距離で、いろいろな研究に関わり続けることができています。考え方によりますが、研究者としてのスタンスを保ちながら起業するのであれば、研究業界と縁が切れてしまう心配はしなくて良いのではないか?と思っています。

「研究者のキャリアパスとしての起業」について書いたものはこちらです。
(2年前の記事です。日本農芸化学会会員限定の期限が切れて、今は誰でも読めます)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/53/7/53_478/_pdf


(2016年11月2日配信のすいすい通信より)

「すいすい通信」
https://rizo.co.jp/merumaga.html

いいなと思ったら応援しよう!