くっしゅ くしぇ 〈こ:固形燃料〉
忘れられないことなんてそうそうあるものじゃない。大抵の事柄なんて何年もすれば風化して全部忘れてしまう。でも一つだけ、この感情だけが何故か心の奥底で、燃えることを待っている。
パチパチと弾ける焚き火を見つめる。火の向こうにいる貴方が揺らめいている。こんな日が来るなんて.......。不思議な気持ちに覆われて空を仰ぐ。満月が、傾いている。深い夜。
古い感情というものは溶けるものだ。少し柔らかくなった蝋のよう。そういうロウソクが明かりを灯すには少しの時間が必要だ。.......でも。
きっとこの感情は火がついてしまえばすぐに燃え上がる。それならこれはロウソクと言うよりは固形燃料なのかもしれない。保存ができる感情。古くならない気持ち。
朝日が私たちを照らす。焚き火の燃え殻が横たわる。おはよう。そして目が合った。それがライターだった。
もう抑えきれない。初恋が燃え上がる。固形燃料となっていたあの初恋が、恋に燃えて灰になる。
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