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タイでサル調査!研究奮闘記

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ベニガオザルを研究している豊田博士のコラム「タイサル!」をまとめました。不定期で挿絵を担当しています。
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2021年6月の記事一覧

タイサル!第10話「撮影へのこだわり」

みなさんこんにちは、申請書提出明けでスッキリ気分のヒヨッコ研究員豊田です。 今日は、重たい機材を担いで調査に出かける理由、”研究者が撮る写真・映像の価値”について、私なりの思いやこだわりを書いてみたいと思います。 ※トップ画像はNHKロケ時のもの(©河合よ−たりさん) カメラはフィールドワーカーの「商売道具」動物の野外調査において、カメラの果たす役割は非常に大きいものです。行動の決定的な瞬間は、文字で記載するよりも一枚の写真で提示した方が説得力は圧倒的に高いです。また、

タイサル!第11話「誰が誰だかわからない!個体識別の話」

みなさんこんにちは、サルの写真を眺めてはニヤニヤしているヒヨッコ研究員の豊田です。 今日は調査の基本、「サルの個体識別」についてのお話です。 ■個体識別って?私たち動物研究者にとって、個体を識別することは調査の基本中の基本です。行動を記録する際は「誰と」「誰が」「いつ」「どこで」「どういう状況で」「何をしたか」を記録します。 「誰と」「誰が」って、どうやって記録するのでしょうか? 答えは簡単で、全ての動物の顔を覚えて、名前をつけて、区別すればできます。私は調査期間中、

タイサル!第12話「ゲシュタルト崩壊!全頭識別への道」

みなさんこんにちは、調査再開の目処が立たず研究のやる気が激ローのヒヨッコ研究員の豊田です。 前回は個体識別の序盤、写真による識別整理のお話をしました。今日はその続きです。 写真で判断できるだけでは不十分で、実際に実物を見てその場ですぐに識別できるようにならなければなりません。これがまた、大変な作業なのです。 ■毎日同じ個体に会えない私の調査地には、サルの群れが5つ生息しています。その日、どの群れに出会えるかは運次第。今日出会った群れに次会えるのは1週間後、なんてこともザ

タイサル!第13話「サルたちの名前の付け方の話」

みなさんこんにちは。論文が一本アクセプトになっても複雑な気分が晴れない境遇にいるポンコツ研究員の豊田です。 前回・前々回と2週に渡って個体識別のお話を書きました。 今日は、サルの名前の付け方について、お話しようと思います。 ■名前をつけて個体識別情報を管理する以前、黒澤くんとか、黒澤モドキくんとかいう名前が出てきましたが、これは実は私が覚えやすいようにつけている、いわばニックネームのようなものです。 NHKの「ダーウィンが来た!」や、NHK-BS「ワイルドライフ」では