あちらへのパス【2】連作小説

 僕は天才だった。


 サッカーを始めたのは小学生に入りたての頃だった。はじめた当初から自分は他の人より出来る感じしていてその中でもボールタッチは僕の自慢であった。だからボールタッチを磨く練習は毎日欠かさずやったしプロの選手の真似が簡単に出来る自分にちょっとした優越感を覚えていた。
 足でボールを上げるそしてそのボールを止めるそしてまた上げるこれを少しずつ前に進みながらやる。ボールをより高く上げたりしたりした。地味なものだが苦なくできた。そしてその地道な練習の成果もあってか学校では敵なしだった。
 でもそれは小学校高学年くらいのころまでだった。もともと身長は低い方ではあったが成長期に差し掛かった同じ年代の子は着実に大きくなっていた。そのせいで僕は当たりに弱くなっていったしそのせいでボールをロストすることが多くなった。それだけではなく僕は足が速くなかった。
 僕はフィジカル的な側面でサッカーで活躍することが難しくなっていった。


 中学生になってそういった悩みが多くなった。食事には気を使っていて、食べる量を頑張っていても伸びない体。それでもボールタッチの技術でどうにかこうにかやっていたが、中学1年生の冬の試合にて相手チームのディフェンダーに僕は敗北を喫した。相手の裏をつこうが何をしようが相手の速さで相手の当たりで僕はシュートが打てなかった。その試合にやけになった僕のせいで負けた。僕のシュートは全てそのディフェンダーにブロックされた。


 中学生2年生の春、僕はフォワードから下ろされたていた。

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