見知った戦争【短編小説】
パンッと世界を切り裂くような音と男の苦痛な嘆きがこの世界に起きた。
その嘆きの終わりを知らせるようにパンという銃声が1つ、再び。
ハーフレー中佐に軍の階級ではなく人間的に恐怖したのは私が軍に入って1年が経ったぐらいの頃だった。
私は中佐と一緒にとある偵察任務をしていた時のこと私のミスで存在がバレて相手の軍人との突発的な銃撃戦が始まってしまった。中佐によりそれは制圧されたのですがその過程で民間人を射殺してしまい、私はそのことに酷く動揺をしたのですが、中佐は何も動揺することなくその後も敵を淡々と制圧していきました。
軍人としてその冷静沈着さは見習うことなのかもしれないとその時は思うようにしましたが、任務の終了後、私は民間人を殺してしまったことをまだ胸の中で消化しきれずにいたのでその旨を中佐にお伝えしたところ
「民間人の犠牲が出てしまったことは不幸な出来事であった。」
そういい言葉を止めたがその後の言葉は続かなかった。何かしらの慰めの言葉があるかと思っていたので少し驚きを覚えた。
そのことに中佐は気づいたようで
「心を痛めることは私達に求められてない、考えず誰かの命令に従えばいい、無心に、無思考にそれをこなせばよい。」
そう言った中佐は敵を制圧していた時のような何の動揺もない顔をしていた。
その言い分に何らかの抵抗感を覚えたが
ならばと中佐は続けた。
「考えてみればいい。民間人を殺してしまったことを、そして自分が軍人であることを、そして戦争が始まったことを考えて考えて考えてみるがいい。それを皆がしていたらと。」
そう中佐は言った。
それに対して咄嗟には何も言うことが出来なかった。
そんな私の顔を見て、中佐は優しいようでありながら何処か狂いを感じさせる微笑みを浮かべ
お国のために頑張ろうではないか、○○君
そう私の傍を通りすぎながら言った。
結局私は考えていない。
戦争はまだ続いている。