霧隠れの少女 【短編小説】

 とあるとある、あるところにある1つの国がありました。
 その国は世界の中心にあり最も栄えた国でありました。

 「あんた棚に埃がたまっているよ。あんたはこんなこともできないのかい。」
 「ごめんなさい。お母様。すぐに掃除しますので怒らないでください。」
 使い古してボロボロになった服を着た女性が謝り、布巾を取りに行った。
 それを隅で笑っている女が2人。
 その2人は姉であり上の姉がフローリ、下の姉がカーロッグである。
 2人は新しく仕立てた服を着ていた。
 「お母様、来週お城の方でダンスパーティが開催されるらしいので新しいドレスを仕立ていきましょう。」
 とフローリ、カーロッグがそうしましょうと追従する。?
 母、リビットはその提案に賛成して
 「あんた、帰るまでに全部屋の掃除をしな、埃1つ無いようにね。」
 と末っ子の娘、パートルに命令した。
 「はい、わかりました。お母様。」

 パートルは窓を拭きながら遠くに輝いて見えるお城を見てダンスパーティのことを思い、その場で回ってみたりもしたが、お母様は私をお城には連れていかないだろうと思い落ち込んだ。リビットが私のことを嫌っているのは明白な事実である。上の姉との扱いの違いを見れば分かるが何故そうなったのかは私には分からなかった。
 ダンスパーティを開催したのは王子の結婚相手を探すためという噂が出回っていた。
 お母様はある時を境に権力にしがみつくようになったらしい。
 うちの家系はとりあえずは貴族であるのだが跡継ぎがいない。跡継ぎには男にしかなれないし、養子をとるという話はうちの家系の辺境さでは望みは薄いし、お母様が力を持ちづらいようになるのでお母様は進んで養子をとろうとはしなかった。
 うちにも兄、つまりは男がいたらしいが私が物心つく前に亡くなってしまった。
 兄の死の詳細に関しては私は詳しく知らないあまり話を聞ける感じでもないからー

 とりあえずの部屋の掃除を終えて、
 お母様館は帰ってきた。
 掃除についてまたお小言を言われたり、買ってきたドレスについての自慢と見せびらかしをしていた。
 そこから夕飯を最中、ダンスパーティの噂について話が上がった。
 王子の結婚相手になるというのはこの上ない幸せだろうとどうたらこうたらと、
 夕飯が終わり。
 お母様達が入り終わったお風呂に浸かりながらダンスパーティのことを考えてしまう。私は生まれてこの方ダンスパーティに行ったことがないし、お城の近くに行くことは稀である。
 そして王子さまのことについて考える。
 王子様の結婚相手になると幸せ。それがどういうものになるかは私には想像がつかないことだが少なくとも今のような生活よりはましになるだろう。
 鏡の前に立って自分の姿を見る。
 王子様の結婚相手、絶望的である。
 私の身体は魅力的なところは1つもない貧相な身体、顔であった。
 顔をふせる。
 お母様にカエルのような顔と言われたことが思い出される。それがどういう意味かは計りかねるが少なくとも表に出ていいような顔とは言えない。
 これに関してはお姉様方の顔は大変魅力に溢れていると言えることは確かである。
 こんなことを考えても仕方がないことである。
 そもそもダンスパーティに着ていけるようなドレスがないのだから
 そう思いつつもダンスパーティのことを考えしまう日々が数日続いた。

 今宵
 ダンスパーティが開かれる。
 お姉様方は朝からダンスパーティに向けて準備をしていた。
 そんなお姉様方を片隅で見ながら掃除をしていた。今日は準備に忙しいのかお小言を貰うことはなかった。
 お母様方は早めにお城に行くらしく。昼頃には家を空けるらしい。私に特に声をかけるでもなく行ってしまった。 

 家の近くにある湖のほとり、
 私は暇ができるとここに訪れる。
 霧がかかって先が見えない湖が見ると何だか心が落ち着く気がした。
 「何あれ。」
 湖の先で何かが輝いた気がした。
 その輝きはこちらにだんだんと近づいてきて危険を感じて逃げようとするがあたりが霧で覆われていてどこに行ったら分からないほどだった。
 そうこうする間に輝きは私の目の前で止まった。

 「パートル、お前はダンスパーティにいきたいか?」
 その輝きが話しかけてきた。
 何故私の名前を知ってるの、あなたは誰なのと色々聞きたいことがあったが、
 「行きたいよ。」
 それだけ、
 簡潔に答えた。
 輝きはそうかといいでは、この場で踊ってくれといい、下手くそながら踊ってみたらそうじゃないと指導をされ、時間が分からなくなるほど踊らされた。
 「まあ、これくらいでいいだろう。」
 そう輝きが呟く。
 そのことに何か言ってやろうと思ったが視界が霧がかかったようになっていて何もいう気は起きなかった。
 輝きの輝きが急に大きくなって視界が光に包まれた。霧があるまでの魔法だと言う声が聞こえた気がした。
 そして目を開けると、
 輝きがいた場所に馬のいない馬車があって私は輝くばかりのドレスに包まれていた。
 夢のような状況だが夢ならば馬は用意して欲しかったと思いながらとりあえず馬車に乗ってみたら馬もいないのに馬車が勝手に動き出した。

 馬車はお城に向かって動き出した。
 空は白い光に照らされていた。

 数刻ほどでお城についた。
 お城ではダンスパーティがすでに開かれているみたいだった。
 お城の扉を抜けダンスホールの部屋に着いた瞬間に会場中の視線を感じた。
 遅れてくる人などいないのだろうかそんなことを思いながら視線に圧倒されていると、次第に会場の人たちからクスクスとした笑い声が聞こえた。
 何かの魔法が切れたかのように、この場から消えてなくなりたいような気分になり視界が霧のように霞む、そしたら身体がひとりでに動き出した。
 そして踊る。
 クスクスとした笑い声は絶えないけれど、
 踊る。

 パートルは使い古してボロボロになった服を着ていた。パートルは見るものを魅了してしまう顔も身体も持っていない。パートルは踊っている、その踊りはお世辞にも上手いと言えるようなものではなかった。でも踊る。
 パートルは笑われていた。
 場違いのやつだと貧相なやつだと可笑しいやつだと笑われていた。
 その笑いは絶えることなく。
 王子はパートルを見ていた。
 そして周りを見ていた。
 そして笑われてるパートルを見た。

 今宵王子の結婚相手が決まった。

 王子の後の世でも讃えられるような功績を残したが、結婚相手を選ぶときはご乱心になされたと笑い話として伝えられている。



 あとがき
 ここまで読んで頂きましたら本当にありがとうございます。大変に蛇足的なあとがきになられますのでこの作品を良かったとだけ思われたい方はすぐにこのページをとじることをおすすめします。スキを押してくれると嬉しく思います。
 さて、
 この作品は蛙化現象とシンデレラを掛け合わせたいという思いで作られました。
 蛙化現象というの私が正確に理解していたかはわかりませんが。
 シンデレラという作品はロマンチックな作品に思われるし事実そうではあるのだけれど、こち亀のりょうさんのルッキズムの考えがあり、シンデレラが幸せになれたのは顔が良かったからだと言っており、原作のほうにもよく見れば整った顔だちと記載があります。
 そのためパートルは美少女という感じではなくただの普通の少女として描写しました。そんな普通の少女が何故王子のお眼鏡にかなったかというとパートルというよりは周りの女性、人に問題があった。そういう話であります。自分が当初やりたかったこととは多少ズレている気がしますが割りかし上手くやれたと思います。
 ではここいらで締めさせていただきます。
 

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