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コロナ禍の日本子連れ帰国、フランスから⑦なし崩し自宅待機編

6つめの記事を書き終えた辺りで、フランスがホテル隔離の対象から外れ、これから帰国する人には喜ばしいことになった。でも私の文章を書くモチベーションは一気に下がり、11日の自宅待機が終わるまで何も書く気が無くなってしまった。でも晴れて自由の身になったので、締めくくるべく、最後の投稿をしたいと思う。

自宅待機はなし崩し

ホテルから自宅にようやく実家に到着。でも両親もワクチン2回接種済みとはいえ、移動中に何を持って帰ってきているか分からないから、残り11日間の自宅待機は、同じ敷地内にある別宅で過ごすつもりだった。本宅には入らない、会うときは庭でマスクをする。はずだった、が。

あー、やっと着いた。あー、母親元気そう。あー、娘とハグしちゃった。あー、娘が普通に本宅に入っていくー。あー、普通に「何やってんの、入りなさいよ」と母親に促され、あー、私も本宅に入って普通にビール飲んじゃってるー。

という流れで、言葉通りなし崩し的に初日の数時間で、両親とガッツリ接触をしてしまう。とはいえ、この2人はワクチン接種済みだから、そこまで心配しなくてもいいか、と私も簡単に折れる。でもこの家には、ワクチンしてない高校/大学生の甥っ子姪っ子がしょっちゅう来る。既に2日目には、娘は従兄弟と普通に取っ組み合いして遊んでた。一応彼はマスクをしてはいるが。

私たちの認識が甘い、と言われれば何も返せないが、実家に帰るとこっちがどんなに意識していようとも、相手に余程の準備がなければ接触を避けるのは不可能。そして、日本在住の人たちの認識は、フランスで生活していたときよりもかなり甘い。宅配の人も家の中まで入ってくるし、こっちがマスクをしようともしない。最初は私は正直怖かった。これじゃあ市中感染と家庭内感染もあっさり広がるはずだ。

政府による追跡と書いてザル

ホテルを出てからも、午前11時にはメールが来て体調報告し、毎日テレビ電話が掛かってきて、毎日GPSが今ココボタンを押せ、と言ってくる。それは最終日まで続き、最終日にテレビ電話で「ご協力ありがとうございました」とご丁寧に連絡が来て、次の日に晴れてアプリを削除させていただいた。

毎日掛かってくるので質問してみたら、待機期間中の行動とは、極力現地人との接触を避け、日用品と薬の買い物以外は外出を「お控え下さい」。基本的に散歩もダメ。子供を連れて公園に遊びに行くのもダメ。

でも誓約書にはケータイを常に携行しろと書いてないし、今回はWiFiのみでSIMカード挿してないし、外出するときはケータイは置いていく。どうせ通信できないから。娘に至っては、両親が連れ出しても誰も分からない。しかも、テレビ電話が掛かってきたときに本宅に行ってる事が多く、ほとんど彼女はテレビ電話に出ていないけど、それは問題ではなかったようだ。まだ幼いからだろうけど。

四六時中ケータイを手にしているわけではないので、当然掛かってきた電話を取れなかったことは何度かある。GPSもアラートに気付かない事が多いので、2時間くらい遅れて「今ここボタン」を押すことも多かった。掛かってきた電話は、単純に「申請した住所にいますか」と聞かれるだけ。例えば前日電話に出れなかった事に対する質問などは、全くない。何を監視したいのかよく分からない。GPS情報以上に聞くことはないのか?

生粋の日本人なので、言われたことは守ろうと思ってはいたが、散歩に行ったりしていたので、厳密に言えばお上の言うことを聞いていなかったといえる。でも待機期間の11日間は、ユニクロに行ったり、外食したりはしなかった。でもそれは私がそれなりに真面目な人間で、買い物や外食はフランスでのロックダウン中は禁止されていた(というか店が開いてなかった)項目であり、自分自身が日本に持ち込むリスクに対して責任を感じていたから。そんな性善説の欠片もない人たちは、ケータイを置いていってしまえば、どこで何をしても誰も分からない。

子供も頑張ったが、効果はあるの?

4歳児ながら、娘もわがままを言わずに頑張った。1年半ぶりに再会したジジババと11日間遊びまくっていたので、学校もなく、それはそれで楽しい夏休みの思い出とも言える。でも、大好きな回転寿司に行きたい、水族館や温泉行きたいとかも言わず、ひたすら実家周辺のみ、家族以外と会わずに過ごしてくれた。

そんな私たちの努力に対して、どれだけこの待機期間に効果があったか、関係省庁はちゃんと実証しているのだろうか。協力を惜しむつもりはなかったが、結果なし崩しになっていたのは事実。なし崩しになるのを見越して、もっと効果的な追跡方法などはなかったのだろうか?今のやり方では、性善説に頼りすぎていて、危うすぎる。

シロウト視線だが、私からしたらこれら一連の施策の有効性は疑わしい。多大な税金掛けて、長時間空港で待たせ、日本で税金を払っていない人たちのためにアプリを開発してコールセンターを運営して「追跡」する。そしてザ・縦割り行政の代表例のように、3つの別々のチャンネル(メールとアプリ2つ)で日常生活中介入してくる。やたら追跡してるくせに罰則もなければ、政府に守られてる感もない。どう考えても、書類上に書かれた手順にハンコを押して、それを実績とするためだけにやってるとしか思えない。

フランスでは、現時点では日本は対象外だが、外国から帰国したとき、1週間の隔離期間後、PCR検査をして初めて隔離解除となる。それなら隔離される理由もハッキリ分かる。そして驚いたのは、私のようなフリーランスには隔離期間とPCRの結果待ちの間、休業補償が出るらしい。そこまでしてくれるなら、ちゃんと隔離を守ろうという気になる。

そして、政府の施策だけが悪い訳ではないだろうが、私の家族も含め、この感染症についての危機感が非常に薄い。そして、それに流されるのはとても容易い。今でも、フランスが初めて強行した昨春のロックダウンを発表する、マクロン大統領の口調が忘れられない。それまで甘く見ていた国民が、強硬手段に出てきた政府の態度を見て、皆が意識を変えたきっかけでもあった。

フランスと日本では考え方も文化も政治のあり方も違うから、一様には比較出来ないが、フランスはやはり自由。やれる事、有効なことはどんどん取り入れていく。日本は何かに対してがんじがらめになって、自由に身動きできない印象。世論?世間体?官僚?経済?オリンピックが終わったら、少しは国民のために国は動くのだろうか。

最後に

娘と両親が喜ぶ顔を見たら、どんな制限があったとしても、帰国できて良かったと思っている。人は人と繋がることで生きているし、それを無情にも切り裂いたことが、コロナウイルスの一番の罪であるのは間違いない。

感染が始まってから、世界中の国が知恵を寄せ集めて対応策を練っており、日本だって最良と思われる策を実行しているはず。しかし久しぶりに来た祖国の対応は、悲しいかな案の定お粗末で、分かりにくい。帰国する前にたまたま聞いたフランスのラジオで、日本在住のフランスのジャーナリストが「日本はマニュアルがなくなると、一気にパニックに陥る」と語っており、まさにその通りの対応だった。

そろそろ夏休み時期で、日本に久しぶりに帰省する人たちはたくさんいると思う。私が帰国したのをSNSで見た友人たちから、メッセージや質問が対応しきれないくらい送られてきた。皆情報が欲しいのだ。私のまとまりのない長文が、少しでもこれから帰国する人たちのストレスを軽減することが出来たら、これほど嬉しいことはない。周囲で帰国を見当している人がいたら、遠慮無く記事をシェアして欲しい。

そして、皆が家族で楽しい夏休みを送れますように。

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