コロナ禍の日本子連れ帰国、フランスから⑥監視開始とホテル脱出編
3日間のホテル隔離は、これから14日間続く遠隔監視の準備段階とも言える。到着時に空港で脅迫されながらインストールしたアプリが、いよいよ私たちを追跡する…。
とはいえ、今回はデータSIMを使う予定がなく、自宅WiFiでやり過ごすつもりなので、買い物等外出するときのケータイは当然外では使えないから、自宅に置いていく。生活用品と薬の購入のための外出は許されているが、誓約書には常にケータイを持ち歩けとは書いていないし。うーん、あまりにもザル。でも報告義務を誓約してしまったから、掛かってきたら対応するしかない。
2つのアプリとメール
ホテル滞在中から、MySOSとOEL (Overseas Entrants Locator)に、少なくとも1日1回は抜き打ち検査的に連絡が来る。そしてそれはホテルを出てからも続き、自主隔離期間中である現在もある。MySOSは要はビデオ電話で、相手の顔は見えないが、自分の顔を見られつつ、位置情報を送っている。OELはアプリ内のボタンを押して、現在地を送信する。
どちらのアプリもランダムに掛かってきて、時間はいつも違う。今朝なんかMySOSに起こされた(とはいえ9時半だったが)。こういう時に限って掛けてきた人が男性で、ビデオ電話ではさぞ酷い顔だったと思うが、毎日の事なので、こっちももういちいち気にしてはいられない。
自主隔離の名目上、実家の同じ敷地内にある別宅で過ごしているが、ケータイを忘れて母屋に行ってしまったり、娘と遊んでいたり、WiFiの接続が良くないので、連絡があったことに気付かなかったことも何回かある。でも今のところ、それでお咎めされたことはない。
これらアプリとは別に、さらに毎日11時、厚生労働省からメールがあり、それに回答しなければならない。
技術大国を謳ってるはずなのに、同じようなことを、なぜこんなにバラバラに3つのチャンネルを通して、同じ機関に報告しなければいけないのか、理解に苦しむ。1つのアプリに3つの動作を詰め込んだ方が、情報の整理はしやすいだろうにと思うが、ここで日本の縦割り行政を思い出した…。
MySOS・入国者健康確認センターからの電話
MySOSは、たいていの場合は人が電話をしてくるが、ホテル滞在中は一度機械的に掛けてきた。「AI自動ビデオ架電」と言うらしい。こちらは30秒間画面に自分の顔と背景を写す。化粧っ気のない顔を人に晒すより、いっそのこと全部AIから電話すれば良いのに、と思いつつ、日本は効率化よりもアナログが大好きだった事を思い出した。
どちらも顔を見せながら、申請した場所にちゃんといるのか、と聞かれ、毎回娘の顔も見せるようにも言われる。一度娘が母屋に行っているときに掛かってきて、すぐそばにいない旨を伝えたら、それはそれで問題無かったようだ。
人が掛けてくる事のメリットは、質問できること。私は自分の自主隔離期間がいつまでなのか、いまいち分かっていなかったので、そこで確認できた。そして、見事に1日間違えていた。先方からは、OELの「チェックイン」が自宅待機になってから済んでいないようなので、アプリを確認して欲しい、とも言われた。確かに、この分かりにくい和製アプリのチェックインはやっていなかった。
OEL
MySOSで位置情報送ってるなら、こんなの必要なさそうだけど、一日に何回か「今ココボタン」を押せ、と通知される。私はなぜかこの通知に気付かないことが多く、通知が来てから1時間以上経ってボタンを押したことは、何度もある。
同じ便で帰国した友人は空港で、ホテルから自宅に移動したら、「チェックイン」で改めて滞在場所を報告し直せ、と言われたらしいが、私はすっかり忘れたか言われなかったか、「現在地を報告」しかしていなかった。そのせいか、毎日何回も通知が来るし、「長距離の移動を検知しました」と報告のたびにアラートが出る。そんなの家に帰ってきたんだから当たり前じゃないか、と思っていたら、ちゃんと自宅でチェックインし直した友人は、そこまで何度も通知が来ていないうえ、毎日も来ないらしい。なんだこの差は。
厚生労働省からメール
毎日11時に、健康状態に関する質問メールが届き、14時までに返事をする。熱があるかどうか、同居人に体調不良はないか、の2つの質問に答えるだけで終了。これに答えないと最悪、氏名公表とかされるらしいので、メール受信に気付いたら、すぐに答えるようにしている。
ホテル最終日・PCR検査
3泊のホテル生活を終わらすべく、最後の関門はPCR検査。最終日の早朝7時に唾液検査のためのケースが配られる。その30分後に回収に来るので、小さい娘を急かしながら唾液を採集。検体を外に出して置くが、入れた袋が風で飛んでしまって、収集に来た人にドアをノックされた。大人に会うのって久しぶり!
その人に口頭で名前と検体を確認され、そこから更にひたすら待つ。朝食・昼食を食べたあと、14時前くらいに部屋に電話があり、陰性の報告を受ける。ホッとしたところで、出発のための準備をしなければならないが、なんと16時に予定されていた空港行きのバスが、もうすぐに出れる状態とのこと。慌てる必要は無いと言われたが、慌てて部屋を片付けて、フロントに電話をして台車を持ってきてもらう。
そしてカードキーと体温計を返して、3日ぶりに万感の思いで建物の外に出る。でも3日ぶりの外の空気は、バスの排気ガスにまみれた、臭い空気だった。
あっけない空港解散
わざわざ空港まで連れて行くんだから、最後にまた係員が案内して自主隔離中の注意とか聞くんだろうな、と思っていたら、なんとバスから降りたらもう自由の身。誰も待っちゃいないし、何のチェックもない。
なんてザルなんだ。空港やホテルの中のがんじがらめの監視との差が激しすぎる。これじゃ公共交通機関を使って帰っても、正直誰も気付かない。
何はともあれ、とりあえずは解放!空港のコンビニで子供たちと一緒にアイスを買ったが、とても美味しかった。そして迎えに来てくれた父と1年半ぶりの再会を喜び、実家へと向かった。
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