QommonsAIで『AIの真の社会実装を進める』Julianさん 〜モトヤフインタビュー〜
-お名前をフルネームで教えてください。
BRODY ELMER JULIANです。
-ご年齢はおいくつですか。
数学的な慣習と一般的な歴史的認識と普遍的了解に基づき以下の問題を解いてください。答えが私の年齢です。
『例外的に単純なリー群の最小非自明既約表現の次元に、小数点第三位まで初めて明示的にオイラー–マスケローニ定数を近似した人物の名前のアルファベットの順番を足し合わせた値を掛け、最小のタクシー数を加えた値を、クラスBDIの1次元トポロジカル超伝導体における量子もつれによる位相分類の数で割った値の平方根』
-お生まれはどちらですか、また現在はどちらにお住まいですか。
香港生まれ、現在は東京に住んでいます。
-どんな経緯で香港でお生まれになったのですか?
父(他界)はトポロジーや群論などで20世紀を代表するアメリカの数学者の一人で(べらぼうな空間認識能力を持っていました)、私が生まれたときは香港の大学で教えていました。母はイギリス人で私は英国籍です。
-ご家族やご親戚には日本人がおられないのに、とても流ちょうな日本語を話されますね。
香港時代に日本語と中国語の家庭教師に学んだおかげで、苦労せず話せるようになりました。9歳で初めて日本に来て、長野県白馬村でしばらく生活した後、英国と白馬を往復していました。ペンションなどなく商業化する前の純朴な白馬でした。
だいぶ後のエピソードですが、私の兄弟が明仁天皇にお会いした際、最初に『白馬もずいぶん変わりましたね』と、陛下からお声をかけていただいたそうです。
写真は当時の白馬岩岳スキー場の麓。本当に(ほぼ)何もなかった!
-これまでのプロフィールをご紹介ください。
日立製作所で超伝導超大型粒子加速器・核融合装置の超伝導ヘリカルコイルなどの設計と製作をしました。
ヤフーに転職してからはメディア事業、そのあと広告技術企画、経営戦略本部などで数々のプロジェクトを推進しました。
その後いくつかのスタートアップでの起業経験を経て、2021年にPolimill社を創立。分断や対立を助長しないSNS【Surfvote】や省庁・自治体向け生成AI【コモンズAI】を構想し、企画・開発・営業・運用などに従事しています。
-ヤフーでの在籍期間は?
2001年9月から2010年9月までだったと記憶しています。
-ヤフーに入ったきっかけは何でしたか?
それまでの重厚長大のものづくり業界だけではなく、情報産業も経験したかったからです。
-ヤフーでのお仕事はどんな内容でしたか?
刺激的な内容でした。最初の配属がメディア事業部で宮坂さんが事業部長でした。その後は広告本部の技術企画でさまざまなプロジェクトの企画・開発を担当しましたが、仮説を立てて実験し検証するというプロセスでは、過去の日立での技術経験が役に立ちました。
-ヤフーで学んだことはどんなことでしたか?
変化が速い領域で妥協しないで進めば、誰でもそこで第一人者になれるということ。
-ヤフー時代のエピソードやトピックはありますか?
ありすぎてなかなか選べないのですが、目標とする指標達成のために絶対に妥協しない経営者(井上さん:故人)のあり方に感銘したこと。
例えば当時、"リッチ"なバナー広告へのニーズが増え、ダイヤルアップ接続とADSLが混在していたのですが、遅い回線に大容量のバナー広告を出してヤフーユーザーを1人でも失うのは絶対に許されないので、誤判定0.1%でも許されなかった帯域判定バナーなど。
当時「ミニ経」(=ミニ経営会議)というのがあり、何人ものプロジェクトチームが努力して目標値を追い込んで臨んでおり、営業側や顧客の期待も大きく、マネタイズの面からも大きなインパクトがあるのに、「ヤフーユーザーを1人でも失うのは絶対に許されない」として差し戻すシーンを想像してください。
「いや差し戻せるよ」と言うは易しだけど、経営する立場で本当にそれが言えるかどうか?ですよね。
-辞めたから分かるヤフーの良さというものはありますか?
これを言うと元も子もないのですが、辞めた後はスタートアップの起業などでとてつもなく苦労した経験があるので、先人が築いた礎の上で案件にのみ集中して戦うことがいかに恵まれていたのか身に沁みました。
-ネクストキャリアを選んだ決め手は何ですか?
なんと言っても自分主体でやりたいことがあったということとが第一ですが、組織が適材適所の評価をできなくなったのではと感じたことも少しあったかな。
-現在のお仕事は具体的にどんな内容でしょうか?
2021年に設立したPolimill社はAIの真の社会実装を進めるソーシャルスタートアップです。
最も多くの自治体や省庁に採用されている無料の生成AI【QommonsAI(コモンズAI)】と、分断や対立やマウンティングを助長しないようにAIによってモデレートされたSNS空間である無料の【Surfvote(サーフボート)】の企画・開発・営業・運用をしています。
【参考】
QommonsAIの概要
全自治体や省庁の行政文書(議事録、法令、補助金など)や、大阪府オープンデータ、TOKYO OPEN DATAなどの各種オープンデータ、国内外の学術論文などの膨大なデジタル公共財をナレッジとして最適化してあらかじめ組み込み、多くの自治体で利用上限なしで無料で使いホーダイ。
2024年7月にリリース、昨年末時点で100を超える自治体や中央省庁が導入しており、現在もほぼ毎日自治体から申し込みがあり、今年は600-800自治体に導入される見込みで、行政用の生成AIのデファクトスタンダードになりうる立ち位置。
主な特徴は
■国内最大の行政文書ナレッジ
■議会対策では各議員の傾向や首長の価値観に沿った予測質問や回答案を瞬時に提示
■生成した回答の参照元がわかるのでファクトチェックの時間を削減
■類似団体の自治体や行政文書も検索できるので、新しい施策立案の壁打ちに役立つ
■丁寧な導入サポートや研修を全国自治体(現地)で無料で何回でも実施
※行政職員である個人が重要な能力を獲得し、成功した人生を送り、社会に貢献するための多面的なサポートを、DeSeCoが定義するコンピテンシー強化の枠組みに沿って提供。
■EBPMを高度にサポートする機能「まちづくり・まちたたみシミュレータ」搭載
※自治体が理想とする状況が達成されるために策定すべき目標値(例:人口当たりの病院・診療所病床数や、都市計画区域人口当たりの都市公園面積など)を提示し、「コモンズAIにきいてみる」ボタンを押すだけで、即座に自治体の現状評価や達成のためのポイントなどが表示される。
■各自治体の人口予測や財政予測、CO2排出量予測などのデータに基づいて企画を立案
■コモンズAIによって立案された政策の民意としてのエビデンスはSurfvoteで確認可能
■行政職員向け生成AIに求められる公共性、公平性、個人情報保護、説明責任・透明性、社会的格差対策といった固有の要求を重視したアーキテクチャ
■行政の公平性・公共性を担保するため、LLMモデルのバイアス(地域差別、性別・人種・障がい等に対する偏見など)を検出し、修正できる仕組みを整備
コンサル丸投げ型の施策から人財投資型への転換をサポートする生成AIで、データサイエンティストや外部コンサルタントを介さずとも、自治体内部で完結したPDCAサイクルを回すことが可能となり、データ駆動型の政策立案文化を育む土壌が整います。
-現在の仕事の面白いところや素晴らしいところを教えて下さい。
2024年の隠れたヒット商品がコモンズAIで、リリース3か月で100自治体や省庁に採用され(まさに爆速)、2025年には600-800の自治体が採用する見込みですが、このような「ものすごく求められているサービス」を創り出せていることがなんといっても面白いです。
あとはなんといってもスタートアップの醍醐味、すなわちリソースのアロケート(Resource Allocation)が素早く自在にできるということです。「朝礼暮改上等!」です。
-今、特に力を入れていることは何ですか?
北海道から沖縄までの多くの自治体を回りながらコモンズAIの導入研修をやっていますが、単なる使用テクニックではなくコモンズAIの利用による個人のQOLや社会のコンピテンシーの向上を目的としており、多くの職員の方々から「過去に行われた研修で一番面白かった」と絶賛の声を多くいただくのが楽しくて。
-ご家族以外で尊敬している方がおられたら教えて下さい。
甘利俊一先生ですかね。数理脳科学の基礎を確立し、情報幾何学を創始し、先生のバックプロパゲーションなどの功績がディープラーニングブームへと続く礎となり、世界のAI史の原点なのにストックホルムはなぜか間違った方々に物理学賞を付与しました。
甘利先生に最後に会ったのはヤフー時代で、先生の論文から発想を得て書いた特許(通称α特許)を、ヤフーの法務では国際出願までしてくれたのではないかと記憶しています。違うかな。
もう一人挙げるならアインシュタインですかね。
尊敬ポイントは、日中はスイス特許庁に勤務してノーリスクの収入を得ながら夜な夜な論文を執筆するというハイリターンの活動。
現在風に言えば公認会計士をやりながら、アーティストとしてロックスターになるようなものですね。
Institute for Advanced Studyに父がいたとき、隣がアインシュタインの部屋でしたが、互いに仲が悪かったそうです。
-ご趣味は何ですか?
それが、仕事以外の趣味がないのですよ。よくないことでしょう?
-ライフワークは何でしょうか?
難しいので生成AIに聞いてみました。模範解答ですかね?
「「技術と共創を通じて、人々が幸福で主体的に生きられる社会を作ること」が、あなたのライフワークとしての軸なのではないでしょうか。」
-これからチャレンジしたいことは何ですか?
現在の会社Polimill社はコモンズAIの大躍進で、デジ庁や総務省や内閣官房に生成AIにかかわるルール作りやEBPMの標準インフラに関して度々ヒアリングを受けるなど、非常にユニークな立ち位置になっています。
私たちはなぜこれほどのものすごい生成AIを無料提供しているのでしょうか?
行政職員のPC画面を入口とするデジタル行政ハブは自治体業務効率化にとどまらず、民間企業・学術機関を巻き込んだ新サービス創出と国際的なGovTech市場への参入が可能となり、巨大な波及効果と高い収益ポテンシャルを秘めているからです。これはチャレンジです。
-モトヤフ&イマヤフに伝えたいメッセージをお願いします。
(モトヤフの皆さんへ)
現在3名のモトヤフの方が参画してくれています。皆さんももしご興味がありましたら遊びに来てください。
(イマヤフの皆さんへ)
みなさんは資金がショートすることを心配する必要がないというとても恵まれた土俵に立っているので、後悔のないように解像度を最大に高めて一度しかない人生をめいっぱい楽しみましょう。
注) イマヤフ:2024年10月にLINEヤフーにジョインされた際に、モトヤフ会に入会された旧ヤフーメンバーをここではイマヤフと表記させていただきました。
-読者に伝えたいメッセージをお願いします。
デジタル行政ハブからの新サービス創出と国際的なGovTech市場への参入を私たちと一緒にやりたい方は是非とも声を掛けてください。
ところで私の年齢はわかりましたか?
-Julianさん、今日はとても興味深いお話をお聞きできて良かったです。ありがとうございました。
(本日のインタビューは川村英樹が担当しました)
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