天気と海とカヤック
自然環境リテラシー学 参加コース:熊野海道 参加日:9月3日・4日・5日
今回、自然環境リテラシー学の熊野街道(9月3日~5日)コースに参加しました。
熊野街道とは、伊勢から熊野まで繋がる海の道のことです。今回はその熊野海道をテント泊をしながらシーカヤック(以降、カヤック)で巡る実習でした。
しかし、今回の実習日は台風11号(ヒンナムノー)が日本に接近していたため、実習が実施できるか怪しい状態でした。
1日目(9月3日)
実習の始まり
今回の実習のスタート地点は、鳥羽市にある三重大学付属の水産実験場でした。
しかし、鳥羽市では前の日の夜から50mmを超える非常に激しい雨が降っており、当日の朝の段階でも大雨警報が発令されていました。そのため、実習が実施できるのかの判断が難しい状況で、受講生は実習スタッフの方の連絡待ちのため、朝から自宅待機となりました。
朝から雨が降り続いている状態で、11時過ぎには鳥羽市に避難指示が出されていました。しかし、午後からは天気が回復するだろうというスタッフの方の判断により、集合時間を送らせて実習は実施される事になりました。
結果的に受講生が鳥羽市の水産実験場に到着したのは、予定されていた集合時間の3時間後のことで、到着したときには運良く雨が上がっていました。
しかし、雨が上がっていたのも一瞬のことで、実習前のガイダンスが始まると、また雨が降り出しました。
予定では1日目からカヤックで海に出て、他の浜でテント泊をすることになっていました。しかし、不安定な天候が続いていた結果、その予定を変更して水産実験場の側にテントを張り、そこで泊まることになりました。
テントを立てている間も不安定な天候が続き、大粒の雨が降るなかでテントを立てることになりました。
雨の中、海へ
雨の降る中でも、何とかテントを張り終え、雨も落ち着いたのでカヤックで海へ出ることになりました。ただし、いつ雨が降り出すかわからない状況だったので陸に残る人と海へ出る人に分かれて行動することになりました。
結果、今回の実習の参加者のほとんどが海に出ることを希望して、海に出ました。私も海に出ることを希望しました。
カヤックは水産実験場から少し離れた広畑の浜に置かれていたため、必要な荷物を持って、広畑の浜へ移動しました。
広畑の浜で自分の乗るカヤックを選び、準備をして出艇しました。
私は、カヤックに乗るのが、自然環境リテラシー学の1回目の実習(6月4日・5日)ぶりの2回目でした。そのため上手に出艇することができるか心配でしたが、海も穏やかで問題なく出廷することができました。
また、パドルの操作もある程度覚えていて、移動も問題なく行うことができました。
このときは、広畑の浜から鳥羽港の方へ進み、その途中で折り返す約3kmのツーリングでした。
出艇したときには雨が多少降っており、漕いでいるうちに雨が強くなりました。しかし、航路の3分の1を過ぎたあたりで雨が上がり、太陽が姿を見せるようになりました。それまで雨の中でカヤックを漕いでいたので、日差しがとても気持ちよく感じました。
このツーリングの中で潮の流れを感じることができました。
基本的に鳥羽湾は波が穏やかで、非常に漕ぎやすいと感じました。
しかし、折り返し地点付近の菅島水道(菅島と答志島に挟まれた海域で鳥羽と渥美半島の先端、伊良湖を結ぶ伊勢湾フェリーのルートの一部)を通って太平洋の波が直接入ってくる地点では、波が多少強く立っていました。
また、三ッ島(鳥羽湾内に飛び石のように浮かんだ3つの小島)を過ぎたあたりでは、流木などの浮遊物が線状になって流されている様子を見ることができました。
広畑の浜の沖に戻ってきたときには、時間に余裕があったので、各人パドル操作の練習やレスキューの練習をしました。
パドル操作の練習では、ガイドの柴田丈広さんに教えてもらいながら、少し離れて浮かぶ2つのブイの間を後ろ向きに8の字を描くように漕ぐ練習をしました。
また、私は第1回目の実習の際に実践することができなかったセルフレスキューの練習も行いました。
セルフレスキューの練習ではカヤックが重く、ひっくり返ったカヤックを上手くもとに戻すことができませんでした。また、カヤックに乗り込むのも難しいと感じました。
結局、雨が強く降ってきたのでセルフレスキューを成功することができず練習は終わってしまいました。一度は成功させたかったので悔しく思いました。
大雨の影響
広畑の浜に帰艇後、水産実験場に戻り、着替えなどを行いました。
その後は、夕食になる予定でした。
しかし、このとき、強い雨と風の影響でタープが1つ壊れてしまいました。想定外の事態で少し慌てましたが、新たにタープを張り直し、雨風を凌ぐことができるようにしました。
この想定外の事態を経験して、タープなどの雨風を凌ぐ道具はとても役に立つと感じました。
夕食と内田さんのお話
その後は、雨風を凌ぎながら夕食の準備をして、夕食を取りました。
この日の夕食は、野菜のアヒージョとペペロンチーノでした。
夕食後は、今回の実習のガイドの一人である内田正洋さんからお話を聞きました。
内田さんは海洋ジャーナリストとして活躍されており、日本のカヤックの第一人者とも言われている方です。
そんな内田さんからは日本の海洋学についてのお話を聞きました。
内田さんによれば、日本は戦前から海洋大国と言われていましたが、近年では徐々にそれが寂れてきているといいます。しかし、周りを海に囲まれた島国であり、昔から海の幸を生活の中に取り入れてきた日本だからこそ、海洋についてより深く学ぶべきであるということです。
私は、内田さんのお話の内容がまったくその通りだと思い、これからはより海にも関心を持って過ごしていきたいと感じました。
2日目(9月4日)
2日目は朝から晴れていて、実習を行うのには最適な日になりました。
朝ごはんを食べた後、水産実験場のキャンプ地の片付けを行い、必要な荷物を全部持ってカヤックの置かれている広畑の浜へ向かいました。
パッキング
広畑の浜では、パッキング(カヤックに荷物を積み込むこと)を行いました。
カヤックにはコックピット(カヤックの中央にある人が乗る場所)の前後にハッチがあり、そこに荷物が積み込めるようになっています。
今回、はじめて大量の荷物をパッキングしましたが、自分の想像していた以上にカヤックへ荷物を積み込むことができ、驚愕しました。
ツーリングへ
パッキングが終わった後、広畑の浜を出廷しました。
1日目は広畑の浜から南へ進みましたが、2日目は北へ進みました。
小浜漁港の前を抜けて、イルカ島の側を通り、少し沖にある飛島のあたりまで向かいました。
途中、漁船などの航路では小船団を組み、スムーズに移動できるようにしながら移動しました。
また、観光船が近くを通ることもあり、そのような船にはとくに注意して進む必要がありました。
少し大きな船は、通っただけでも周囲に大きな波を発生させ、カヤックがその波に襲われることがあります。
実際、今回の実習で経験した一番大きな波は、観光船が近くを通ったときに観光船が起こした波でした。なんとか姿勢を保ち、バランスを崩すことはありませんでしたが、それでも多少怖さを覚えるような波でした。
その後、飛島あたりの無人島に上陸して、小休憩を取りました。
小休憩をした島は、風の影響で木がおもしろい形で生えており、海の水も澄んでいてとてもきれいでした。
小休憩終了後は、神前岬の方に向かって進みました。
このときにも、船の航路を横切る必要があったので、少し大回りして他の大型船の様子などに気を付けながら進みました。
このときは、潮の流れでカヤックが進行方向左側に流されてしまい、真っ直ぐ進むことが難しく感じました。
昼食
神前岬の近くに到着すると、その近くの浜で一度陸に上がり、昼食を取りました。
昼食は簡単に袋麺を食べました。
多少時間があったのでレスキューの練習をしている人もいました。
夫婦岩、そして大湊海岸へ
その後は、また海に出て、さらに西に進みました。
進んだ先には、観光スポットの夫婦岩がありました。
昔、家族旅行で一度訪れたことがあったのですが、海から夫婦岩を見たことは無く、とても貴重な体験になりました。
この後は、少し引き返し、五十鈴川派川を上流に向かって漕いで行きました。五十鈴川派川は川ということもあり波が無く、とても漕ぎやすく感じました。
また、水の上からしか見ることができない景色を見ることができ、とても貴重な体験となりました。
加えて、ガイドの柴田さんに先頭を努めて頂いていたのですが、柴田さんの進むスピードが早く、必死に追いつこうとしても中々距離を詰めることができませんでした。プロのカヤッカーは改めてすごいと感じました。
その後は、五十鈴川派川から五十鈴川に抜け、伊勢湾に出ました。
そして、五十鈴川の河口近くの大湊海岸に上陸しました。
この日は、鳥羽の水産実験場から大湊海岸まで16.7kmほどのツーリングとなりました。
大湊海岸へ上陸
上陸後は砂浜にタープを立て、各々でテントを張りました。
砂浜ということもあって、タープやテントを固定するペグが抜けやすかったので、漂着物などを使って重石としてタープ等が飛ばないように工夫しながら張ることになりました。
タープやテントの設営が終わった後は、夕食を取りました。
この日の夕食はポトフとミートソースドリアでした。
シーカヤックによる遠征のお話
その後は、ガイドの柴田さんのお話を聞きました。
柴田さんからは、カヤックを乗るうえで重要な天気のことやその情報を得るための気象通報についてなどのお話を聞くことができました。
また、カヤックを使った遠征の経験についてのお話もあり、プロのカヤッカーの人は一日に50km以上進むことができるということを聞いたときは、とても驚きました。
加えて、三重を拠点に活動されているプロカヤッカーの南平純さんにもカヤックの遠征のお話を聞きました。南平さんは西日本縦断や九州縦断のお話をしてくださり、刺激を受けることができました。
3日目(9月5日)
この日も朝は比較的穏やかな天気でした。しかし、実習期間中でもっとも
台風11号が日本に近づいていた日でもあったため、台風から離れた伊勢湾でも影響が出始めていました。また、大気の状態も1日目と同様不安定になっていました。
そんな不安定な状況下で、もともとの予定では大湊海岸から東へ進む予定となっていましたが、急遽それを変更して、大湊の西側にある宮川の方へ進むことになりました。
朝食を取り、大湊海岸からの撤収の準備をして、前日と同様、カヤックに荷物を積み込みました。
3日目の出艇
出艇の準備が整い次第、出艇することになりました。前日より波が立っており、多少バランスを取ることが難しく感じましたが、それでも安定して出艇することができました。
出艇後は五十鈴川から大湊の内側を通る水路を通り、宮川に抜けました。
今回通ったルートの周辺は昔、造船所が立ち並んでいた地域だったということで、その名残を見ることができました。
宮川に出た後は、宮川の河口へ向かいました。宮川の河口にはいくつかの中洲があり、今回はその1つに上陸して小休憩を行いました。
その時、伊勢湾の様子を見ることができたのですが、そのときには白波が立ち、海が荒れている様子を見ることができました。それを見ていると、海に出るルートを取らなくて良かったという思いと、ガイドの方の判断が良かったということを感じることができました。
宮川上流へ
中洲から出艇した後は、宮川を上流に向かって進みました。
このときは川の流れの影響でカヤックの船首が左側を向いてしまい、中々真っ直ぐ進むことができませんでした。
宮川の少し上流にあるグラウンドのところで着岸し、この日のカヤックでのツーリングは終了しました。
その時には、カヤックを真っ直ぐ進めようと左側を多く漕いでいたため、左手がとくにクタクタに疲れていました。
カヤックを岸に上げた後は、後片付けを行いました。
カヤックを置いた側に雨風を凌げるようにタープを張ることになったのですが、その作業中、強風が吹き、タープが飛ばされかけるという事態が起こりました。
今回の実習は天気にとても影響を受ける実習だと感じました。
実習を終えて
今回の実習は3日間を通して不安定な天候の中での実習となりました。
最悪の場合、海に一度も出られないことも想像されていたので、3日間ともカヤックを漕いで海に出ることができ、とても良かったと感じました。
天気に影響を受け続けた実習ではありましたが、その中でとくに臨機応変な行動が大事だと感じました。天気は人の力ではどうしようもありません。だからこそ、天気に合わせて行動を変えていくことが自然の中で生活していく上で必要なことだと思いました。
加えて雨という天気も、1つの自然であると感じました。
この3日間、何度も何度も雨に降られ、実習を始めたときは雨が嫌だと思っていました。しかし、少しずつ雨が降ることに対してそれが当然であるかのように受け入れることができるようになり、雨を気にすることがなくなっていました。
また、この3日間を通して、海に対して興味を深めることができました。
それまでは、海に対して多少の恐怖を覚えていましたが、それが薄れて、海の色々なところに目が向くようになりました。海面の様子や移動している船の様子、周りの景色など、それまであまり気にしてこなかったものを見ることができるようになりました。
さらに、カヤックにも親しみを感じることができました。
この3日間、移動手段としてカヤックを使い長距離を移動する中で、思い通りにカヤックを扱うことができる楽しさや水面をなめらかに進んでいく感覚など、普段の生活の中では感じることのできない感覚を味わうことができました。
ぜひ、今後カヤックに乗る機会があれば、挑戦したいと思うようになりました。
最後に、お世話になったガイドの内田正洋さん、柴田丈広さん、今回はさまざまな経験をもとにしたお話を聞くことができ、私自身もとても良い経験となりました。今回はありがとうございました。
また、今回さまざまなサポートをしてくださった南平純さんもありがとうございました。
参考リンク
ガイドの柴田さんが代表を務めるアルガフォレストについて
https://www.algaforest.jp/
2日目にお話をしてくださった南平純さんが代表を務めるOUTISEについて
https://www.outise-iseshima.com/