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「報酬」と「対価」

先日、会社の同僚との雑談で、契約書のドラフティングの際に「報酬」と「対価」をどう使い分けているか、が話題になりました。私自身はほぼ「対価」を使っていて、たまに売買契約で「代金」を使うくらいで、「報酬」はほとんど使ったことはなかったです。直感的には、「報酬」は戦国武将が「褒美じゃ!盃を取らす」みたいな属人的なニュアンスで、「対価」はそれに比べて無色透明なニュアンスかなと思いましたが、両者の違いが気になったので少し調べてみました。

まず、一番お手軽なオンライン国語辞典『三省堂 大辞林 第三版』によれば、それぞれ、

報酬:労働や物の使用などに対するお礼の金銭や物品。 「アルバイトの-」 「 -を支払う」

対価:財物や行為などによって人に与えた利益に対して受け取る報酬。

とあります。わかるようでわかりにくい説明ですが、対価のほうが抽象的な意味合いになっているような気もします。

やはりちゃんとした法律用語辞典を調べねばと思って図書館に行ってきたところ、『法律用語辞典 〔第4版〕』(有斐閣、2012)によれば、それぞれ、

報酬:労務の提供、仕事の完成、事務の処理等の対価として支払われる金銭、物品をいう。典型的な例としては、賃金がこれに当たる。また、裁判官及び地方公共団体の議会の議員等の俸給は特に報酬と呼ばれている。

対価:自己の財産、労力等を他人に譲渡したり、提供したり、利用させたりする場合にその報酬として受け取る財産上の利益。モノの売渡し、労力の提供に対する売買代金、賃金がその例。

とあります。それぞれの説明の中にお互いの用語が入ってしまっているため混乱しますが、報酬が役務提供の反対給付であることはある程度明確に読み取れそうです。

もう一冊紐解いてみたところ、『法令用語辞典 <第10次改訂版>』(学陽書房、2016)によれば、それぞれ、

報酬:一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付をいう。役務の給付の対価であるから、費用の弁償は、これに含まれない。報酬に含まれるものの範囲は、各法令において、必ずしも一様でない。(後略)

対価:個々の契約による財産の移転又はサービスの提供に対する反対給付の価額をいい…(中略)…代金が、売買、工事、製造、加工等に対する金銭による反対給付の意味に用いられているのに対し、対価は、これを包含し、さらに広い概念である。

とあります。これはなかなかスッキリとした明快な説明ですね。

以上の調査をまとめると、

・報酬 → 役務提供の反対給付
・対価 → 報酬を含む、反対給付の上位概念

ということになりそうです。とすると、とりたてて「報酬」を使うべき場面(取締役の「委任契約書」とか)以外では、一般的には「対価」を使っておくほうが無難かもしれませんね。

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