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その酒は賢い味がする(或いは「私は何を飲み会と呼んでいたのか」について)

noteに雑文を投稿するのをしばらくサボっている間に、世の中は新型コロナウイルスの影響で大変なことになってしまいました。私は一応社長なので会社の方は早々に(2月末から)自宅作業に切り替え、オフィスでしかできない作業が無い日以外は基本的に家におります。仕事もしてますが、主にあつまれどうぶつの森にて島の開発に取り組んでおります(ちょうたのしい)。

私は一応「IT業界」とやらに属しておりますので、ボードゲーム関連でフィジカルな仕事もあるとはいえ、自宅引きこもり作業に向いてる方だと思うのですが、それにしても流石に一ヶ月以上友人達と飲み会をしていないとストレスが溜まってきました。ということでアレやりましたアレ。話題の「Zoom飲み」っていうやつです。まぁ別にZoomでもLINEでもFaceTimeでもなんでもいいいんですけど。要はビデオ通話で友人と顔を合わせながら各々自宅で飲むっていうアレですわ。過去にもSkypeなどで駄弁りながら酒を飲むという行為はやったことがありますが、今回は明確に「Zoomで飲もう」と決めて開始したところ、色々と気付きがあったので書き留めておくことにします。

前提として私は昭和生まれのアナログ気質なので、自宅作業快適だなァと思いながらも「本当にこのままでいいんだろうか…人として大丈夫なのかこれは……」と得体の知れない不安感に襲われたりしているわけです。なので、外出自粛要請によって「Zoom飲み」が流行り始めたと聞いた時は正直そんなん面白いかね?と懐疑的ではありました。しかし、結論から言って割と楽しめた。そしてメリットも多かった。メリットがあるということは当然デメリットもあるわけですが。ではそのへん書いていきます。

メリットその①「好きなものを飲み食いできる」


Zoom飲みを始めるにあたって、私はとりあえず泡盛のソーダ割りと柿ピーを用意しました。友人のN氏はレモンサワーとなんかよくわからない物をつまみにしていました。居酒屋に集まって飲むと各々が食べたいものを頼んだり、飲み相手との関係性によっては注文に気を遣ったり、女の子がいると普段視界にも入れないシーザーサラダを頼んでみたり、二人しか居ないのに四人前くらいの料理が出てきたりするものですが、その点Zoom飲みは非常に楽。各々好きな酒と好きなつまみを画面の前に用意しておけば良い。当たり前のようで新鮮な感覚でした。そして何より「お会計」が無いので、割り勘する必要も無し。

メリットその②「おトイレが使い放題」

小さい居酒屋なんかで飲んでると、結構トイレ並びません?あれ実は結構なストレスだったんだなぁと気づきました。自宅ですから数歩でトイレです。しかも何処の馬のボーンが吐いたかもわからないゲロがない!お尿も飛び散ってない!だって僕すわってお尿するもん!これバカバカしく聞こえるかもしれませんけどすごい楽ですよ。

メリットその③「終電が無い」


自宅ですから。ええ、帰る必要がないのです。

メリットその④「飛び入りがスピーディ」

最初は友人N氏と二人で飲みながら話していたのですが、途中で共通の友人S氏を誘ってみることにしました。メッセンジャーで「Zoom入れる?」と投げると「入れるよ」と即答。すぐさまZoomから招待を送って参加してもらいました。さらにその後友人F氏も同様の手口で参加させ、最終的には四人になりました。これはZoom飲みならではのスピード感ですよね。居酒屋で二人で飲んでる時にもう一人友人を追加しようとなった場合「もう少しでこの店出るから次の店決めといて」だの「店どこ?地図送って!」だの、今まで5千回くらい繰り返してきたあの面倒なやり取りが発生するわけです。それが無い。あとこういうのもありますわな、飲み会始めて一時間後に合流した友人が割り勘の段になって「あれ…三等分なの?」的な表情になる現象。これもメリット①とのあわせ技で解消です。

この辺りがわかりやすいメリットでしたかね。続いてデメリットコーナー。

デメリットその①「会話にテクニックが要求される」


これは複数人によるビデオ通話全般に言えることかもしれませんが、喋りだすタイミングがかぶると音声が混ざってすごく聞き取りづらくなる。そしてそれが続くと発言タイミングを見計らうようになって、妙にモジモジしだす。オッサン4人集まって合コンみたいな雰囲気だしてんじゃないよ、という気分になる。やっぱり「リアルな声」って聞き取りやすいんだなぁと実感しました。リアルな声だったらうるさい居酒屋で蛮族達の怒号渦巻くなか四人がゲラゲラ笑いながら会話を成り立たせる、なんて普通にやってきましたからね。これは今後、音声通話の品質が向上したりビデオ通話での会話テクニックに慣れてくれば解消されるだろうとは思いますが現時点ではデメリットと言わざるを得ない。

デメリットその②「飲みすぎる」


メリットその③で書いた「終電が無い」の悪い面です。終わるタイミングが難しい。時間をまったく気にしないで飲み続けていたら余裕で24時を超えていました。やっぱりなんらかの区切りは必要なのかもしれません。わかりやすいのは用意する酒の量を抑えておいて、飲み終わったら各自離脱という方法でしょうか。間違っても「三日三晩飲める量の酒」とか用意しないほうがいいですよ。Twitterで流れてきましたが、Zoom飲みによるアルコール依存症の増加も問題視されているようです。考えてみると、外で飲んでる時は酩酊しながらも「これ以上飲んだら歩けないな」とか「これ以上飲んだら電車で吐くな」とかある程度は頭が回ってる気がします。

デメリットその③「虚無感」

私の「もう寝るわ」という言葉でZoom飲みがお開きになり、各自がZoomを終了した直後に友人N氏から送られてきた感想がこれでした。虚無感がすごい、と。かくいう私も直前までイヤホンから聞こえていた友人達の声がプツッと途絶える感覚はなんとも言えないものがありました。リアルでの飲み会は始まりも終わりも「フェードイン-フェードアウト」によって成り立っているのに対して、Zoom飲みは徹底的に「ON-OFF」なんですよね。まぁこれをデメリットと取るかは人それぞれだとは思いますけど。

デメリットはこんな感じです。さて、私はZoom飲みを通して友人と会話しながら頭の隅で「これは果たして飲み会なのか?」と考え続けていました。いや、もう少し正確に書くと「俺はいままで何を"飲み会"と呼んでいたのか?」をです。飲み会の定義が揺らいだ気がしました。Zoom飲みは前述のデメリットはあるものの、少なくとも繋いでいる間は楽しい。いままで、わざわざ電車賃を払って繁華街へ出向き、待ち合わせや途中合流の調整等をこなしつつ、終電の時間を気にしながら飲み、決して平等とは言えない割り勘をし、案の定終電を逃してタクシーで帰っていたのはなんだったのか?俺はいままでものすごく無駄なことをしていたのか?という疑念が胸をかすめたのです。しかし二日ほどその疑念を抱えてみた結果、私は気づきました。私が好きな「飲み会」とは、単に酒を飲み交わすことではなく、「仲間達と愚かさを共有する行為」だったのだと。わざわざ繁華街に集まったり性懲りもなく終電を逃したり全員ベロンベロンなのにもう一軒入ってボッタクられたり、そういう愚かさを共有してくれることを確認する行為だったんだと。なるほどこれでわかった。Zoom飲みの最大のデメリットが。ということで、

デメリットその④「愚かしくない」

これはZoom飲みに限ったことでないかもしれません。かつてレコードショップに出かけて買っていた音楽もいまはダウンロードやストリーミングが当たり前になりました。買うのは一瞬でできます。視聴もできます。効率的です。しかし失敗しなくなりました。これからどんどんとテレワークが浸透していき、通勤しなくてよいケースが増えていきます。交通費もかかりません。効率的です。しかし、出勤の途中で知らない駅に降りてみるような愚かしさは失われるでしょう。人間が文明や科学を発達させてきた中でどんどんと取り払われていく愚かしさ、それは良いことなのでしょう。しかし、愚かしさを共有できる関係というのは、賢さを共有できる関係よりずっと素晴らしいと私は思うのです。

Zoom飲みの酒は賢い味がしやがる。

以上です。強欲ダヌキが呼んでるのでどうぶつの森に戻ります。

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