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縦割り性教育の弊害
まず、このポスターをご覧ください。
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『内閣府/警察庁/消費者庁/こども家庭庁/総務省/法務省/文部科学省/厚生労働省』
ポスターの最下部に関係省庁がたくさん書かれていますが、このポスターの中で、どこが「性教育に一番適切なのか?」と聞かれると、『全部』というのが正解なのです。
しかも、「どこの省庁でも同じことが聞ける」のではなく、「それぞれの省庁ごとに対応が異なる」ので、「それぞれの省庁ごとに必要な情報を集める」必要があるのです。
例えば、性教育の場合は文部科学省・厚生労働省・こども家庭庁など。
例えば、性犯罪の場合は、警察庁・消費者庁・法務省・内閣府男女共同参画局など。
例えば、妊娠や子育て支援の場合も、こども家庭庁・文部科学省・厚生労働省・男女共同参画局など………
やっぱり縦割りです。
どこが「ワンストップ」なのでしょう?
これに加えて、各都道府県や地域の役所などの制度・方針もチェックする必要があるし、同じ市町村の公立学校でも、各校の教育方針は校長に全権がある(公立学校の教員は公務員のため、校長による命令服従義務がある)ため、学校によってバラバラなのが現実です。
簡単に言うと、「責任のなすり付け合い」で、「こっちは管轄じゃないからよそを当たれ」です。
そして、最終的には「性の問題は個人差が大きいから、学校や行政に頼らず、専門家や家庭で性教育をしろ」に行きついてしまいます。
一例として、2022年3月に厚生労働省が開設した、若年層向けの性問題情報ウェブサイト『スマート保健相談室』があります。
厚生労働省が高校生の意見も聞いて作成し、重川茉弥さん(ABEMAのリアリティ番組で実際に若年出産を経験)をポスターに起用し、まやりんと高橋幸子先生との対談動画もありました。
厚生労働省にしては珍しく、大々的に「こういうの作ったから、学校にポスター貼れ、学校や各自治体のサイトにリンク付けろ」的なプレスリリースを発表しており、文部科学省じゃ絶対できないことをやっているな、と感心しました。
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しかし、2023年5月ごろ、『スマート保健相談室』は、厚生労働省から消えてしまいました。
なんの告知もなく、いつの間にかこども家庭庁に移管されていました。
それでも、厚生労働省の公式サイトのトップには、4か月ほど、スマート保健相談室へのデッドリンクが残されていました。
普通の企業だったら、「移転しました」のお知らせやら、リンクの貼り換えとかで対応すると思うのですが… 🤔🤔
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これに限らず、カード型の宣伝素材も、全部作り直されていました。
この、「こっそり移転」を公表したのは、Wikipediaの有志でした。
要は、『スマート保健相談室』の制作を担当した、厚生労働省の『こども家庭局』が『こども家庭庁』として独立してしまっため、一緒に移管されていたようです。
とはいえ、「他省のことは知らん」的な対応は、やっぱり変わってないんだなぁ、と思いました。
サイト内にあった、まやりんのポスターと動画も、(多分契約の関係で)その後消えてしまいました。
先に書いた、「専門家や家庭で性教育をやれ」というのも、ある程度は分かる気がします。
というのも、今の中央省庁の男性官僚の大多数が、そして今の家庭の親世代・さらにその親の世代も、思春期世代に適切な性教育を受けていないからです。
その部分は、また日を改めます。