フラワーデモに男性が参加することへの、僕なりの答え
僕のXのフォロワーさんであるハココさんから、「フラワーデモに男性が参加するのはどうなのか?」という趣旨のポストがありました。
フラワーデモにほぼ毎月参加している僕としては、反応せざるを得ませんでした。
そして、ハココさんから、僕宛にこのようなツリーが出されました。
https://twitter.com/hakoko_wf/status/1828122708263027169
ハココさんの辛さや想いは、僕にも十分に伝わります。
なぜなら、僕は4年前に、この洗礼を受けたことがあるからです。
2020年1月12日、横浜の山下公園で行われた「フラワーデモ横浜」に行ったのが、最初でした。
事前にニュース動画を何度も確認し、他会場で男性の参加者やスピーチがあったのを確認した上、当時の横浜の運営さんに事前に確認したうえで、足を運びました。
元町・中華街駅から山下公園まで歩く途中に、花屋で生花を買いました。
この記事の冒頭の写真が、その生花です。
女性が次々と被害をスピーチするのを、僕はただ、黙って聞いていました。
無意識に僕が手を挙げて、一度無視されたかのように思いましたが、場所移動のためだったらしく、そのあとマイクをお借りしました。
「私は、男性間の性暴力被害者です。」
僕がオープンの場で、自分の被害を公表したのは、これが最初でした。
皆さん、笑わずに聞いて下さいました。
そのあと、別の男性もスピーチしたり、女性から「男性学を学んでほしい」といった声もあり、短い時間でしたが、「性被害の記憶がある」という話を聞いてくれただけで、とても助かりました。
暖かい、晴れた一日でした。
後日、僕がTwitterで「フラワーデモに行った」旨を書いたところ、複数の方から批判されました。
「フラワーデモは女性のデモ」
「被害者と言えど、男がフラワーデモに来るのは許せない」
「フラワーデモに男が来ただけで、凍り付いて拒絶もできなくなる女性参加者がいるのに」
などなどです。
この痛みは良く分かります。
当時、既に「フラワーデモに参加した女性」を標的にした誹謗中傷やハラスメントが、少なからず起きていたからです。
中には、『割れ窓理論』の悪用で、フラワーデモに集まる女性たちを「公衆便所」のように扱おうと企む男性もいました。
そういう二次被害、被害者非難の問題は、十分に理解できるものです。
しかし、僕が山下公園に行った時に、現地で僕を拒絶する声は、全くありませんでした。
運営スタッフさんも、快く挨拶してくれました。
(後で知ったのですが、この回には、当時の東京の運営スタッフと、発起人の北原みのりさんも来ていました)
そう考えると、僕をネット上で批判する人は、「フラワーデモの現場に行ったことがあるのだろうか?」と思ったのです。
また、当時は僕の考えや方向性がまだ固まっていなかったこともあって、批判した方に「まずい対応」をしていたのは事実です。
僕の後遺症や精神障害が、まだ全部明確になっていなかった時なのですが、結果的に僕が「火に油を注ぐ」ことになってしまいました。
そのため、これ以上強く出るよりも、他の方の安全のために身を引いたほうが良いと感じ、「次のフラワーデモには行かない」ことを表明して、収束させようとしました。
しかし、2月11日に、フラワーデモ東京の運営の一人から、僕にDMが届きました。
要約すると、北原さんからの言伝で、「またフラワーデモに来てください!歓迎します、皆さんと連帯しましょう!」とのことでした。
画面を見て、泣いてしまいました。
「男性の性被害」の深刻さを、理解してくれる人がいた、それだけで、行った甲斐がありました。
7月11日、フラワーデモ横浜(横浜駅西口金の像前)の後、東京駅行幸通りに伺い、先日のお礼を述べました。
あの日、山下公園にいた皆さんが、温かく迎えてくれました。
もちろん、僕もただ行っているだけではありません。
2020年の秋以降、様々な性教育の本をほぼ毎月買って読んだり、COVID-19流行期ではオンライン講座なども受けました。
僕の今までの行動にも問題があったことが分かり、修正もできています。
フラワーデモだけではなく、フェミニズムやジェンダー関連のイベントにも足を運び、日々学びを得ています。
最初に話を戻します。
「フラワーデモに参加している人」に対して、僕はできうる限り敬意を払っていますし、「誰も傷つけない」ように行動しているつもりです。
(誰にでも、偶発的なミスはあると思います)
指摘や注意があれば修正もします。
もし、他の参加者(女性に限りません)から、僕が参加の拒否拒絶をされた場合は、その場で会場を離脱することも考えていますが、フラワーデモの現場でそのようなことを言われたことは、一度もありません。
他の参加者の皆さんは、僕や他者の性被害のことを「他人事」に取らず、自分も他人も傷つけたくない人ばかりなので、皆さん優しいです。
フラワーデモの現場に集まる性被害者の皆さんは、「ある程度」、少なくともデモの現場に集まれる程度には、性被害の後遺症から回復することができた人です。
性被害を受けた直後の「急性期」の状態では、まず自身の心の傷のリカバリーが必要だと思っています。
そして、ある程度回復を見た方の中でも、「声を上げられる」のは、そのパワーがある方に限られています。
声を上げられる性被害経験者が、声を上げられない、声の上げ方を知らない被害経験者の声なき声を拾って、動いていくしかないのです。
また、「男性だけでのフラワーデモ」という意見も、4年前から存在していますが、僕は実現には悲観的です。
「男性の性被害」が、まだまだ認知度が低いうえ、自分を含む男性恐怖症の僕では、参加すら難しいでしょう。
そして、どうして性被害を「年齢」と「性別」で分ける必要があるのでしょうか?
年齢・肉体的性別・性指向に関わらず、誰でも性被害に遭う可能性はあるし、誰でも性加害を起こす可能性もあります。
同性の問題も異性の問題も、対等に学んで、性暴力全体を減らしていく方向に動いてほしいのです。
ジェンダー・セクシュアリティの問題は根深いですが、「分けたまま」では、いられないのです。
僕の反対に、同性間性被害の影響で、「女性恐怖症になってしまった女性」も存在します。
性暴力被害の後遺症と対処法は、人それぞれで複雑なため、「男の被害には男で対応しよう」という、安直な考えではいけないのです。
実際に、僕は、「男性の性被害」を研究している、立命館大学大学院の宮崎浩一氏にコンタクトを取ってから、自分の性被害の詳細をメールで送るのに、1年半を要しました。
ハココさんの指摘を否定するわけではありません。
繰り返しますが、性被害者には、人それぞれの背景や事情があります。
今回のハココさんのポストのような意見や主張を、「言うことができる」環境があることが、大事なのです。
僕がハココさんに、自分の辛さを伝えたことで、ハココさんに重圧を与えていたのなら、それは僕が修正しなければならないことです。
一番大事なのは、『性被害を減らす』ことではなく、『性加害を減らす』ことなのです。
フラワーデモや他のイベントでご一緒してくださる皆さん、いつも本当にありがとうございます。
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