イギリスの産科医療5:妊娠血糖値を2週間自己測定してみたら
イギリスNHSでは特定の条件に当てはまる妊婦が妊娠糖尿病検査の対象になる。
・40代
・親きょうだいに糖尿病(母が60代で二型糖尿病になった)
・アジア人
などのリスク因子が当てはまる私も、特に親が糖尿病だからと最初の助産師問診で検査を薦められた。
経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)
糖尿病検査の王道、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)は、75グラムのブドウ糖を一気に摂取する。
75gをアイスに換算すると、
ガリガリ君(糖質16.9g)5本弱
雪見だいふく(糖質26.4g)3パック
ケーキバイキングなんかに行ってた高校生の頃ならこのくらいは軽く食べてたかもしれない。
が、40代の今、こんな大量の糖質を一気に食べることはありえない。
ていうか、赤ちゃんのいる体で直接実験するってことになるわけで。
私が口に入れるものは、リアルな食事だろうがおやつだろうが、「検査」だろうが、お腹の子に影響しないように摂取するのは不可能。
検査方法についてよく知らなかった頃から、OGTTは歯にも体にも悪そう、直感的に危険だと感じたので、もう一つの検査方法ならやってもいいと同意した。
2週間の自己測定検査
もう一つのやり方とは、検査キットを使って一日4回、寝起きと3食後に血糖値を測定するというもの。これなら、余計なものを体に入れないで済む。
妊娠25週、NHSの妊娠糖尿病チームに支給されたキット(新品)で測定を始めたところ、その日の昼食後早速「赤」(目標値より上)が出た。
弁当箱の中身は、半分が五分付き米だった。
米や蕎麦など穀類を食べると、お茶碗一杯分で「目標値」をオーバーする。
当たり前ながら穀類を減らすとお腹いっぱい食べてもそんなに増えない。
朝はフルーツをたっぷり食べてるから糖質多いかなと思ったら、果糖は血糖値をあまり上げないんだそうだ。
同時に気づいたのは、食後に散歩したり有酸素運動をすると同じような食事でも比較的低く出るということ。
振り返ると、食後1時間で測定するところ、食事を始めてから1時間でやってたのでもしかしたら早く測りすぎて赤を出していた可能性もあった。
血糖値が高めだった件について持論
そこで妊娠中の血糖について調べてみた。妊娠中期から、赤ちゃんのエネルギー源であるブドウ糖を供給するため、胎盤がホルモンを出してインスリン抵抗性が自然に増すんだとか。インスリンが十分に分泌できないと血糖値が下がりにくくなり、これを「妊娠糖尿病」というそうな。
でも逆にいうと、血糖値は上がるのが本来の姿だってことでは?
妊娠後期で急激に赤ちゃんが成長するのはそういうことでしょ?
私の場合妊娠の影響で食後は少し高めに出ても、時間が経てば下がってる。上がりっぱなしじゃない。
「妊娠糖尿病」と病気扱いするような状態だとは思えないし、そもそも、アプリの「目標値」は糖尿病の人の血糖値管理用の指標なので、自己測定法を診断目的に使う「エビデンスはない」と糖尿病助産師チームの人も認めていた。
念のため、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)も測定したけど、5.0と超正常。
朝(空腹時血糖値)は綺麗に標準値。
これは一般的な糖尿病ではないという意味になる。
それで十分だと思った。
妊娠糖尿病でもそうでなくても、糖質摂りすぎは病気の元。もともとケトン食や肉食に興味はあった。
よく歩く妊婦は安産とも聞いて、運動量も増やした。
妊娠後期は特に穀類を減らし、良質のたんぱく質・脂質を多めにして野菜や果物から糖質補給、安産を目指して足腰を鍛えることを心がければいい。
ていうかすでに心がけてる自分には、「妊娠糖尿病」そのものについて考える必要性を感じない。妊娠中、自分のメンタルの安定のため、赤ちゃんのため、安産のため、余計な心配の種はいらない。
その後と個人的な結論
それでもNHSは私を「妊娠糖尿病」と患者扱いしたいようで、電話がきて、まず自己測定での血糖チェック継続を勧められた。
この2週間なかなかのストレスだったし、血糖値中心に生活が回るのは嫌だ。
「今後のケアと出産計画を一緒に立てましょう」と言われたけど。
もともと、40代だってだけで「病棟で、39週で誘発分娩」を勧めてきてるあなた方は、さらに医療介入のお誘いを増やすんじゃないの?
勧められたことを受け入れなきゃいけない義務はないけど、いちいち断ったり交渉するのってストレスなんだよね。
今のところ、NHS助産師との健診は欠かさず行ってるけど、助産師チームも、妊娠糖尿病チーム、産科医チームも、結局みんな同じ組織。
立場上同じガイドライン・ポリシーに沿って一貫した対応をしなきゃいけないのは会社員として理解できるので、(当たり前ながら)連携して一枚岩で来るのは予想がつく。
だから健診に行くこと自体もどうかなと思うことがある。
NHSに所属しない、ドゥーラや鍼師などからは「健診だって、必要を感じなければ一度も行かなくていいんだからね」と言われることもある。
順調な妊娠を確認できる一方で、体重は、血圧は、血液は尿検査は・・・とチェックして安心するための材料は、裏返せばそのまま心配の種でもある。
調べれば調べるほど、気になってしまうものだから。
気になる症状があるときや病気のときは、検査や測定は有効かもしれないけど、繰り返すが妊娠は病気じゃない。
胎動や日々の体調から感じるかぎり、母子ともども至って元気だし、健康にはことさら気を使ってるし、時折の痔やらお腹のかゆみといった妊婦あるある以外はいたって健常な妊娠だと思っている。
今後の展開によっては、出産前後のNHS利用をまるっと断るかもしれないな。