イギリスの産科医療3:妊婦健診を断るという選択
イギリス公共医療であるNHSの産科医療は、主に助産師との問診とエコー検査で成り立っています。日本でいう妊婦健診的位置付けです。
妊娠20週までにデフォルトで提供されるサービス:
8〜12週:助産師との初診→終了(私の体験)
11〜14週:エコー検査→終了(私の体験)
16週:助産師との2回目問診→終了
18〜21週:エコー検査→イマココ
妊娠20週エコー検査でわかること
この検査はscreening scanとかanomaly scanと言われ、色々なことがわかります。
胎児の大きさ、骨や臓器の様子
11種類の「稀な」異常・病気
性別
(この時点での)胎盤の位置
Placent previa(前置胎盤)という胎盤が子宮口を完全に塞いでいる状態で分娩を迎えてしまうと、帝王切開でしか産むことができないんだそう。
助産師との2回目の問診で、検査すれば胎盤のことや子宮筋腫が大きくなってるかとかも調べられるし、行っておいたほうがいいよ、とは言われました。
12週エコーには結局行ったし、20週も「もしもの時のために」ギリギリまで入れたままにしておきました。
異常があったらどうする?
20週の時点で異常が見つかっても、治療したり進行を防いだり、手を加えることはできないんだとか。唯一できるのは、堕ろすこと。
イギリスでは中絶できるのは24週までなので、20週で検査をしておくことで、万一のとき妊娠を継続するかどうかの決断まで余裕を持たせるという意味もあるのかと。
私たちの場合、正常胚を移植しているので、染色体由来の異常はまずない。それに「稀」な異常も、普通ならまずないということ。
もし異常があったとして、夫も私も、「産む」という選択は変わりません。
でも、これから予定日までの20週間、知ってしまったことで、何もできないのに心配の種が増えるわけですよね。
胎児への異常→産むなら、物理的にできることは何もない
母体の異常→たとえ胎盤の位置が低かったとしても、出産までにまだまだ子宮は大きくなるので、胎盤が移動する可能性が高い
異常がなかったら
大抵の人は「異常なし」で安心して帰ってくるわけでしょ?
じゃあ調べて太鼓判押してもらって、かつ赤ちゃんの成長具合を知れるほうが良くない?
って思う人は、行ったらいいと思います。
私たちも、なにも異常を検出されるのが怖いわけではない。
母子ともに健康だという自信はある。
赤ちゃんの様子、胎盤の状態も、知れるにこしたことはないとは思います。
じゃあなんで断ったのか
たしかに、MRIとかに比べれば安全性は上でしょうが、超音波に長期的な害がないとは証明されていません。
Jim Westという医師が中国の一人っ子政策のために中絶された胎児を調べた研究では、エコー検査の危険性が示されたとのこと。本を読んだわけではないので、直接の情報ではありませんが。
私たちは、6週・12週と、もうすでに2回、赤ちゃんが小さくてより影響を受けやすいときに、↑の情報を知らずに晒してしまった。
加えて、20週検査は、胎児のあちこちを詳細に測るので、とにかく「長い」という声を聞きます。お世話になってる鍼師は検査直後に子宮が痛くなったそうだ。
余計な悩みを増やす(かもしれない)し、完全無害だと証明されていない検査をするメリットを感じない。
断ったら児相に通報されない?
イギリスで子どもを産むにあたって怖いのは、イギリス版児相といえるSocial Servicesという人々。
でも、NHSのサービスは全てが任意。
勧められた医療サービスを断ったから通報されるなど、本来あってはならないことなのです。
政府のウェブサイトにも「20-week screening scan pathway requirements specification」というページがあって、20週エコーを受けた人、受けなかった人へそれぞれの対応モデルのチャートが載ってます。
このチャートを見て、改めて私たち夫婦にとっては20週エコーは必要ないなと思いました。検査で異常が疑われた場合、さらに検査を重ねることになるだけで、結局、できることは「中絶する・しない」という選択のみであることが明確に書いてあるからです。
予約の変更・キャンセル方法
さて、20週エコーの日が近づいてきました。
前々日特に不調もなかったので、特に調べたいことはないな…ってことで予約をキャンセルすることに。
必要な情報はメール等で送られてくる手紙に全部載っているので手元に置いておくと便利です。
予約をキャンセルしたいと言うと、手紙の頭に載っているMRNナンバーを聞かれます。
取り直しますか?と聞かれるので、結構ですと言うと「え、なんで?」みたいな話が始まりました。
ここで理由を説明する必要はありません。
相手を納得させないとキャンセルしてもらえないというわけではないし。
「産科医との予約が入ってるので、心配なことがあればそのときに相談します」
「その問診では20週検査の結果を踏まえて話をしたいんですけど」
「それでも要りません」
…的なミニ押し問答がありましたが、マニュアルどおりに仕事してて、すすめられたサービスをそのまま受ける患者が90%だろうから、ま、こんなもんでしょう。