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海外で体外受精:精液所見が悪い場合の対処

不妊治療といえば、女性にばかりスポットライトがあたりがちですが、男性不妊のケースが半数近くあると聞きます。
実際、夫側にも問題と言える要素があったので、私たちが検討/利用した処置と結果について書き残しておきます。


奇形精子症(teratozoospermia)

不妊治療するとき、男性側の基本的な検査として、精液量、精子濃度、運動率、正常形態率を調べます。
本格的にIVFに乗り出す前から、夫の精子は、他の数値は優秀なのに正常形態率だけ1%以下クリニックBで「teratozoospermia(奇形精子症)」と診断されてしまったほどでした。

WHOの定義では正常形態率4%に満たないと奇形精子症とみなされ、不妊の原因と言われますが、奇形精子が多いからといって必ずしも妊娠不能ということでもないようです。夫は精液量は多くて濃度も高かったので、奇形が多くても正常な精子は十分あると考えられました。

実際、初回採卵で採取した精液は正常形態率0.5%だったのにもかかわらず、ふりかけ法でも5個中4個(8割)が正常受精、胚盤胞到達率も顕微受精とほぼ変わらずでした。

もし奇形精子がそんなに問題なら、運動・直進・正常形態をクリアした精子を人為的に選ぶ顕微授精は、ふりかけ法より断然有利なはずですが、そうでもなかったので、転院先では2回とも顕微授精ナシ、100%自然受精でやってもらいました。

マイクロ流体精子選別(MFSS)

正常形態の精子の率を改善できたら結果が改善するかな、というコンセプトで使ってみたのが マイクロ流体精子選別(Microfluidics Sperm Sorting、MFSS)。
運動性と形態が良好で、DNA損傷のない精子を残すといういう処置です。ESHREの最新ガイドラインの評価は「microfluidics can be considered(検討してよい)」でした。

同じクリニックで、同じ刺激でやった2周期を比べると、受精卵からの胚盤胞到達率にはかなりの差が出ました。
MFSSを使った回:採卵14→受精卵×11(うち3PN×1)→胚盤胞×(36.36%)
使わなかった回:採卵15→受精卵×14(うち3PN×2、1PN×1)→胚盤胞×(21.42%)

また、3PNのような異常受精の原因として、卵子の年齢と精子の異常が挙げられています。
採卵時期の差は2ヶ月程度なので、卵の年齢はほぼ変わりません。
異常受精率と胚盤胞到達率の違いは、MFSSをする・しないの差だった可能性もあります。
自費でやってる私たちには5万円の追加出費でしたが。。

磁気を使った精子選別法(MACS)

MFSSと間違えやすい精子選別法に、MACSがあります。
初回採卵周期、精液検査でE. facaelis という腸球菌が検出されて、採卵数日前から急遽抗生剤を服用しました。5ヶ月経ち、3回目の採卵周期を控えた頃、妊活コーチの勧めで再検査したところ、また検出されてしまいました。

院長先生に相談すると「数値からみて、感染というよりは採取の際に混入した程度だろうから大丈夫」と言われましたが、精子を取り扱うチームから「菌対策でMACS(Magnetic Active Cell Sorting)をしてみては」という提案がありました。

MACSは平たく言うとすでに死んでいる精子を磁気で取り除く方法ということで、あまりメリットを感じなかったのと、ESHREのガイドラインで「not recommended for routine clinical use(日常的な使用は推奨しない)」とあり、見送りました。

奇形精子症は改善するのか

生活習慣改善

奇形精子症に対して妊活コーチや医師から受けたアドバイスをまとめると、つまるところは、生活習慣の改善でした。

  • サウナや熱いお風呂を避ける

  • 禁酒・禁煙

  • 締め付けない下着を履くようにする

  • 通勤で日常的に自転車に乗るなら、熱がこもらないサドルに変える

  • 精子は定期的に出すこと。最低数日に1回、できれば2日に1回。古い精子は質が落ちるし、精子濃度が高くなりすぎると混み合いすぎて良くないからとのことです。

結果

サウナ好きの夫はガッカリ…でしたが、頑張った結果、1回目では0.5%だった正常形態率が、2回目と3回目の採卵では2%に。 クリニックが違うので厳密な比較はできませんが、数字の上では4倍改善していました。


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