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5,000円で広げた行動範囲


生まれも育ちも那覇で、特に成人前はあまり市外には縁がなかったワタクシなのです。なにしろ車の免許を取ったのが30歳過ぎだったし、原付の免許でさえ20歳過ぎてからだったんで、那覇からコザまで行くとすればバスしかなかったあの頃は狭い世界で過ごしてたワタクシでした。
たまーに家族や、両親のやってたお店の従業員たちと一緒にお出かけなんかした機会には、ライカム(地名)近くのステーキハウスだとか、宜野湾あたりのバーラウンジのあるようなレストランとかに行ったり。そうそう、月苑飯店も一度行ったような気がするんですが、あまりにうすぼんやりした記憶なので、我ながら信用ならない脳内です。

そんな狭い世界で暮らしてても、アメリカ文化は流れ込んでくるもんで、我が家の向かいには輸入食品や菓子を扱うでかい店があったり、国際通りを始め、あちこちに米軍払い下げの店があったりしたものですが、今ではそんなお店もあまりお目にかからなくなってきましたねえ。
ちょっとした本屋に行けば、洋書を扱ってるのは今も昔も変わりませんが、沖縄だけのことでもないんで、こりゃ琉米文化とは言えませんね。

あ、ひとつ思い出したのは、宜野湾のJimmy'sに行ったとき、普通にアメリカンコミックブックが売ってて、そこでスーパーマンを1冊親にせがんで買ってもらった事がありました。
当然、英語なんぞ読めもしないので、兄から英和辞典を借りて、単語をひとつずつ翻訳しようとしたわけです。
なにせアメコミ、あの薄っぺらい本だから、まあ数日かければどうにかなるだろうと思いましたが、実際数日後には完全に翻訳を諦めた自分がいたというオチなんですけど。

那覇(と言うか、ワタクシの行動範囲)で洋書コーナーがあったのは文教図書(現在リウボウがあるとこ)か、球陽堂書房(現在は那覇市ぶんかテンブス館が建っているところにあった国際ショッピングセンター内)かなぁ。
ペーパーバックや映画誌、SF・ファンタジー系コミック誌とかはそこでチェックしてたんですが、もう少しマニアックな本はなかなか入ってこない。と言う事で、崇元寺近くにあった洋書専門店に行けばホラー映画専門誌や、SFX解説のバカ分厚いハードカバー本なんかも扱ってたんで、2ヶ月に1回くらいは覗きに行ったりしてました。

ある時、どこで仕入れた情報かは定かでないんですが、「絶対買いたい!欲しい!」って洋書の噂を耳にしたんで、沖縄にも入荷してるんじゃないかとしばらく洋書コーナー、洋書店に通いまくったことがありました。
しかし、残念ながら狭い行動範囲内では見つける事が出来ず、半ば諦めかけていたんですが、どうやらプラザハウスにタトルブックストアなる洋書店が存在してると知り、そこへ行けば絶対買える!と思ったわけです。

普通に考えれば電話でもして、入荷してるか確認をすればよかろうものを、そんな頭が回るわけもなく、直接お店に行くしかないという考えしか浮かばなかったってのは、バカだったのか、とにかく一心不乱に情熱がほとばしっていたからなのか、あるいはその両方だったのか。
で、原付の免許も取ったばかりの頃だったんで、プラザハウス目指してブリブリと中古のスクーターを走らせ、何とか到着。めでたくタトルブックストア店内へ。
あった、ありましたよ!

読めない割には使い込んだ感じ

「MONTY PYTHON'S FLYING CIRCUS Just The Words Volume1&2」
「空飛ぶモンティ・パイソン」テレビシリーズの脚本集!
「Volume1&2」となってるのは、本をひっくり返すと反対側が「Volume2」の表紙になっていて、全650ページほどの分厚さ。実物を初めて見たときはびっくりしました。
英語は当然読めなかったけど、すでにポニーキャニオンからビデオは出てたんで、「日本語字幕ではこう訳されてるけど、原語では何て言ってるんだろう?」とか「ランバージャックソングの歌詞が載ってる!」と大喜びしたのでした。

「Just The Words」と同時期に買った(と思う…)パイソン研究本

その後、『パイナップル・ツアーズ』美術制作の工房がコザにあったんで、そこからの帰り道に何度かタトルブックストアには足を運んだし、プラザハウス隣の建物(銀行だったような気がする…)の地下や、ゲート通り、国体道路沿い、普天間あたりにあったアメリカ人向けのレンタルビデオ店に行っては「おっ!サタデーナイトライブのベスト版!」とか「幻の『エクスプロラーズ』アメリカホームビデオ版!」とか「『What's up, Tiger Lily?』のLDだ!」とか、そんなことばっかり見てましたねえ。

考えてみれば、知人から5,000円で譲ってもらった原付で、物理的に行動範囲が広がったのは間違いないし、こうした本を手に入れた事でさらに物欲も広がり、タトルでも手に入らなかった本を銀座イエナあたりから通販で手に入れるというような気持ち的な行動範囲も広がったんだなーなんてことを感じていたのですが……。

「Just The Words」と、後に通販で購入した分冊版「All The Words1&2」

あれから30年以上経って、車の免許も取得し、行きたいときにプラザハウスにもコザにも行けるようになったワタクシが何をしてるかというと、スペイン語のジョー・ダンテ研究本を買ったはいいけど、未だに1ページも翻訳できず途方に暮れているという、結局何にも変わってない自分がいたというオチでありました。

ではまた。ヨシミでした。
2023/02/27

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