階段があった場所で足踏みをしている
松風苑の周辺、数年前から新しい建物が出来てだいぶ風景も変わってきてたようですけど、そうですか……松風苑も変わってしまったんですね。
円谷英二監督の所蔵品(台本、受賞盾や企画書など)がオークションに出品されたのも何というか、寂しい話でした。
萩原健一、水谷豊が出演したテレビドラマ「傷だらけの天使」で使われたビル・代々木会館。あのビルはファンからすれば聖地だったわけですが、惜しくも解体されてしまいましたね。
金城哲夫や円谷監督に限らず、映画ファンとすれば、過去の作品や偉業をちゃんと保存して欲しいという願いは当然あるんですが、でも何から何まで残していくことはまず不可能ですよね。
全ては無理だとしても、大事な物だけは……と言っても、じゃあ大事な物ってどれなんだろう?誰がそれを判断する?
ビルはさすがに大きすぎる。じゃあ小道具や衣装、台本、いやいやその時使われたカメラが特殊な物だったからそれも残さないと。実は美術セットに置かれていたあの陶器はこの作品のために作られた一点モノで……。きりが無い……。
色々あって、大事な物は決まったとして、今度はそれをどこにどう保存する?
よし、博物館を作ろう!あそこにいい土地があるぞ!あそこにデーンとでかい博物館を建てよう!
「あー、映画かなんか知らないけど、この土地は伝説的なミュージシャンの生家があるので、そんな物を建てさせるわけにはいかん」
「ここは歴史の教科書に載っているあの事柄が起きた場所だから」
なんてことになってしまったりすると、もうわけが分からない。
僕らは映画が大事だと考えているけれど、音楽が一番大事だと考える人もいるし、歴史こそ大事だという人もいるだろうし。
などと考えていると、ドンドン思考が袋小路にはまり込んでしまって一歩も進めないんですよ。
もうこうなったら、めんどくさいから保存とかやめちゃえ!!って乱暴な考えさえ浮かんでしまいます。
いや、でもそうなると後にその作品などを研究する時に何も資料が無くなってしまうし……。
どうすればいいんでしょうねえ。
そういえば、こんな話を思い出しました。
『スター・ウォーズ』の特撮で使われたマットペイントというイラストがあって、撮影後は当然キチンと倉庫に保管されていたんですが、シリーズの別作品で同様のイラストが必要になったんで、先のイラストを描いたアーティストにまた新しく描いて欲しいと依頼したそうです。
すると彼は「前に描いたのが倉庫にあるだろ?それ出してきてよ。あれにちょっと描き加えたらいけるから」と。
いやいやいや、とんでもない!あれは大事な作品に使われた、大事な大事な財産です。あれは保存しないといけないんです!
「でも、またイチから描いたら時間もかかるし、予算もムダだろう?いいじゃないか、出してきてよ」
ダメですってば!
「そっか、あの絵が大事なんだね?わかった。じゃあさ、描き加えて、撮影が終わったらまた元の絵に描き直すから」
ヨーリーは「失われてゆくままにしてほしい」「彼方に風化させてほしい」と書いてましたが、それでも出演した作品は残ります。
後になって作品を見た人がヨーリーを「発見」するというチャンスもありますよね。
なんだかんだ書いてますが、もともと僕自身がコレクターというか、物をため込んでしまう癖があるんで、こういう話題は結構悩んじゃうところなんですよね。
こないだも輸入物のBlu-rayをまとめ買いしたし、読めもしない分厚い洋書を買って、途方に暮れているところです。
それに貸倉庫には25年分くらいのSF雑誌や模型雑誌やプラモデル、DVD、CDがギュウ詰めになっているのです。
そんなものと金城哲夫や円谷英二を一緒にするな!と言われてしまいそうですが。
ホントにどうすればいいんでしょうねえ。
手紙を読んで、一番最初に連想したのは、デヴィッド・クローネンバーグの『デッドゾーン』でした。
高校教師のクリストファー・ウォーケンが、かつての恋人、ブルック・アダムスにこう言います。
”スリーピー・ホロー”の一節が思い出される
最後の授業で宿題に出した小説さ
男が姿を消すと文章はこう続く
“彼は独身で借金もなかったので”
“誰も気にしなかった”
ブルック・アダムスは「それが心配?」とたずねます。
するとウォーケンは答えます
「望みさ」
そんな考え方はどこかでちょっといいなーと思いつつも、倉庫の中を見ると、そう簡単にはいかないよなーと。
まだまだ答えを出すまでに、長い足踏みが続きそうです。
沖縄より、ヨシミでした。
ではまた。
2022/01/25