変わらないもの
『変わらなもの』
この変化が早い中で変わらないもの。
悪い意味じゃないくていい意味で。
お母さんが作るカレーの味。
久しぶりに会う友達。
青春時代に流行った音楽。
風や空気、草木の匂い。
過去の出来事、、、
私が大学生時代に働いていたイタリアンレストランでのバイト仲間にあるシンガーをしている女性がいた。ここではNさんとしよう。
彼女は私より1歳上の21歳フリーターの女性で、確か、高校を卒業して長崎から東京に歌を歌いに上京していた。
お昼はアパレルと、私と同じイタリアンレストランを掛け持ちして、夜はライブをしたりレッスンしたりと歌手活動をしていた。
彼女は小さく華奢で、美白のボブヘアが似合う、柔らかい雰囲気のおっとりした性格だった。そんな彼女のことをバイトメンバーはみんな大好きで、お姉ちゃんのように頼りにするときもあれば、時には妹のようなお茶目な一面もある不思議な魅力の持ち主であった。
普段はフワフワした柔らかい彼女なのに、歌声を聞かせてもらうと力強い声が特徴で、小さい体から想像出来ないパワフルさがあった。
ギャップ萌というのだろうか。
そんなところも彼女の魅力であり、また私は彼女の芯の強さに憧れていた。
一緒に働き出して一年くらいかな。ある日、私たちが働いていたイタリアンレストランが閉店となった。
忙しい彼女は、普段の飲み会も閉店さよなら会にも来なく、最後の勤務でさよならを告げた。
その時私は、なんとなく、彼女にはずっと歌っていて欲しい。彼女らしく、東京に染まらない、いつまでも純粋で少女のような変わらない愛らしさを持っていて欲しい。そんな気持ちを強く抱いたのを覚えている。
あれから5年がたった。
ふと、インスタグラムで流れてきたある可愛らしいシンガーの女性。
あれ、Nさん!??
すぐさま彼女のインスタグラムをフォローした。
あの時と変わらない純粋な目をして、小さい体で力強く歌っていた。そして、東京で。
私は胸がじーーーんと熱くなった。
変わらないもの。
この素晴らしいスピードで変わっていく世の中で、変わらない物。
時にはそんなものに目を向けると、
何かこう、言葉に出来ない温かさを感じる。そんな尊いものを日々の生活で見つけて大切にしようと思う。
私も変わっていく世の中で、柔軟かつ何か変わらない信念を強く持っていこうと、その彼女から感じさせられたのであった。
2021.02.15
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