優しさ
優しさとは何だろう。誰かの発言に、何も言わないことだろうか。それとも、自分はこう思うと意見を言うことだろうか。
世間では、手を差し伸べるという行為が最もわかりやすい「優しさ」であるが、その行為に対して、こう思う者もいるだろう。何か裏があるのではないかと。私は、そう思う傾向がある。自分では、天邪鬼だからそう思うのだと思っているが、実際どうなのかは考えたことがない。
こんな私でも、人の行為や言葉を素直に受け取った、というより、受け取らざるを得なかったことがある。数年前に出会えた人のことだ。
その人は、感情がころころ変わるタイプではない。周りと、少し距離を置いて関わっているような、そんな人だ。そんな人間だからこそ、言葉に重みがあり、目には人を信頼させる力強さがある。そんな人に、一言「褒め」、「叱り」をもらうと、余計な感情が一切わかずに、その言葉が私に届く。あの人以外でそういう人間と出会っていないから、尊敬して、憧れて、あの人のようになりたいと思っても、情報量が少なくて、数年経っても足元にも及ばない。話はそれたが、そういうなかなか出会えない人物でいてくれていることが「優しさ」なのではと最近思う。誰かの憧れ、尊敬する人物であり続けてくれる優しさ。本人は、もしかすると、そういうふうに見られているとは思っていないかもしれない。だが、気づいていないからこそ、こちら側としては尊敬し続けられるというのもある。
憧れて終わりたくはない。尊敬して、追いかけ続けて、どうなるかはわからないが、少しずつ、目の前の今日を生きようと思う。心の恩人に、恩返しができるように。