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山本律磨
2025年2月15日 09:47
「瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢わんとぞ思う」己が不屈を歌に込めたその人は失意の中で怨霊と化した。「ゆく川の流れは絶えずしてしかももとの水にあらず」その人とほぼ同じ時代に生きた彼は世の無常をそう詠んだ。 壊れた器などはとっととチリトリで集めて燃えないゴミの日に出して、そうして新しい器で美味しいごはんを食べればいい。それが健全な生き方というものだ。だが世の中には手を血だらけに
2025年1月18日 09:55
○しろいとらのあなとは白虎街の近くに建つ悲田院である。亡き光明皇太后が建設したもので、今となっては仏教都市のくせに全く慈悲を感じさせない四神京にあって奇跡の様な規模の大きさを誇る仏閣である。それもそのはずバックには皇太后ゆかりの興福寺がついており藤原総領百永が『積善の藤原』よろしく全面的に支援しているからだ。都には先のいくさいくさで孤児が多く、疫病もくすぶり続けている。公共事業も滞り、働
2024年12月15日 10:46
○興福寺(夕)ごおおおおん。と荘厳な鐘の音が大伽藍に降り注ぐ。さすがは都全土を睥睨する大寺院。そのへんに乱立する梵鐘とは響きが違う。いい。すごく、いい。ここは藤原家興隆の祖大宰相不比等が建立した釈迦を本尊とする由緒正しき彼ら一族の氏寺である。寺といっても、幾つもの御堂が並び塔が物々しくそびえる大建築群であり、宗教施設というよりむしろ藤原家の基地に近い。あちこちの門に衛兵が立ち、粛
2024年11月20日 16:42
○四神宮・朱雀門話は少しばかり遡る。ほどなくして、少納言橘不比等は参内の折、蘇我左府とすれ違った。宮中元老の敵、バラガキリーダーの不比等は、しかし以外にも「老害○ね」などと言った暴言を嫌い、舎弟連中に対しても彼らの気炎に冷や水を浴びせぬ程度には戒めるようにしている。別に年配に対する配慮ではない。理由はもっと簡単で、至極当然のもの。それがいつか自分に跳ね返って来るブーメランの刃だから
2024年10月27日 12:12
さてここで、毎度おなじみ唐突に「説明しよう!」タイムである。こういうのは話が込み入って来ないうちに雰囲気も流れもぶった切ってサッと解説を入れるのがタツ○コプロメソッドだ。往年の富山敬氏のナレーションで脳内変換してほしい。娑婆塞。それは得度されてない私度僧、といえば聞こえはいいが、ようは税金を逃れ田畑を放置し、修行托鉢という名の流浪と物乞いと若干の恫喝を善男善女に対して行う無頼の輩の総称ある
2024年10月12日 12:30
○尊星宮・庭薪を割っているナミダと、狛亥丸。 ナミダ「うーん。どうしても上手くいかないなあ」狛亥丸「では、鉈の刃をこうして薪に食い込ませてですね。そのまま薪ごとキリカブ台に向かって振り下ろしてみては?」ナミダ「よっ! やった、出来た!」 と、様子見にやって来る穢麻呂。 穢麻呂「おう、やっておるな。感心感心」ナミダ「でも狛さんみたくこうパッカーンと勢いつけて割りたいんだけど」穢
2024年9月29日 09:10
〇四神宮・紫宸殿今なおガンを飛ばしたい気満々の不比等は、しかし視線を落として、覇気を少しも感じさせない鼻にかかった右大臣の声を聞く。狩屋「朔の神隠し。その解明まことに大儀である。橘朝臣不比等、物部灰麿に代わりて少納言に任ずる」これこそが不比等の狙いとするところであった。「倅の不始末をオオゴトにしない代わりに、俺にものもうさせやがれ!」ようは事件を利用して、遠回しに左大臣を恫喝した
2024年9月12日 10:15
権力者の大事なお仕事の一つにシステムを複雑化させるというものがある。責任の所在を曖昧にするためだ。己はもとより己に近しい関係者各位に配慮しまくり、彼らの眼下の遥か下、塵芥ほどの小さな存在に最大限責任をなすりつけて、何か事が起これば万能パスワード「KIOKUNI-GOZAIMASEN」或いは「HISYOGA-YARIMASITA」しかる後に「FUTOKUNO-ITASUTOKORO-D
2023年3月19日 15:26
もともとはブログなるものをやっていた。愚痴愚痴と10年以上。誰に向けたものでもない、誰も見ることのない忘備録を。それがnoteなるものを見つけてまた愚痴愚痴と数年。やがては宣伝することもなくなって、創作物なんぞ載っけようなどと思って書き殴る作品がこれである。さくっと説明をするとまず、小説ではない。これは私自身が状況描写や心理の掘り下げに全く興味がなく見る方でも書く方でもサクサク話が進ん