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四神京詞華集~shishinkyo・anthologie~

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2024年9月の記事一覧

四神京詞華集/ディスペルへの遠き道(2)

四神京詞華集/ディスペルへの遠き道(2)

〇四神宮・紫宸殿
今なおガンを飛ばしたい気満々の不比等は、しかし視線を落として、覇気を少しも感じさせない鼻にかかった右大臣の声を聞く。

狩屋「朔の神隠し。その解明まことに大儀である。橘朝臣不比等、物部灰麿に代わりて少納言に任ずる」

これこそが不比等の狙いとするところであった。

「倅の不始末をオオゴトにしない代わりに、俺にものもうさせやがれ!」

ようは事件を利用して、遠回しに左大臣を恫喝した

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四神京詞華集/ディスペルへの遠き道(1)

四神京詞華集/ディスペルへの遠き道(1)

権力者の大事なお仕事の一つにシステムを複雑化させるというものがある。
責任の所在を曖昧にするためだ。
己はもとより己に近しい関係者各位に配慮しまくり、彼らの眼下の遥か下、塵芥ほどの小さな存在に最大限責任をなすりつけて、何か事が起これば万能パスワード
「KIOKUNI-GOZAIMASEN」
或いは
「HISYOGA-YARIMASITA」
しかる後に
「FUTOKUNO-ITASUTOKORO-D

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四神京詞華集/DARKNATION

四神京詞華集/DARKNATION

表があれば裏がある。光があれば闇がある。
大内裏四神宮に明確な闇が生まれたのはちょうど十年前。
四神京開闢の祖、聖武帝が薨去し、皇太子宝子(たからこ)が幸謙帝として即位してからわずか二年。女帝は突如として傍流の継承者に帝位を譲って、若干二十歳にして上皇となった。
新たなる帝の名を純仁帝、これまた若干、十六。
その若すぎる王族たちに対して、既得権益の権化のような大貴族が老賢者の如く知見と節度を以て粛

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