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遠くへ行ってしまったあなたへ。
「幸せにしてくれて、ありがとう」
これだけは絶対に言いたかった。
あの日、一番最初に別れを言われたその時に言えなかった言葉。
私は確かにあなたを思っていて幸せだった。
一緒に居られて幸せだった。
あなたのことを考えて過ごした日々は間違いなく幸せだった。
あなたと笑いあえた時間は確かに幸せだった。
あなたとの話をみんなとしていた時間は本当に楽しかった。
あなたを思って泣いた日も、私を想って言葉を濁した瞬間も
あなたを恨んだ日も、もうあなたのことなんてどうでもいいと思い込もうとした日も
伝えたいと考えた言葉も、伝えたかった想いも全部。全部全部。
あなたの為に使った時間全部、まぎれもなく幸せだった。
あなたが初めに私にいった「幸せにしてあげる自信がないから」は、あなたが思うよりはるかに簡単に実現した。
私はあなたが幸せにしてくれなくても勝手に幸せになった。
それはあなたがいたから。ただそれだけで簡単に叶うことだから。
でもそれは私だけの内緒。きっとこれからあなたには好きな人ができて、その人と一生を添い遂げるのだと思う。
その人に教えてもらえばいいと思う。
だからこれは私の最後の意地悪。
好きな人を幸せにする方法なんて教えてあげない。私、独占欲の強い女だから。
「幸せにしてくれてありがとう」だけ、あなたにあげる。
あなたが私の為にたくさん泣いたから。たくさんの言葉の代わりに抱きしめてくれたから。
(「幸せになってね」なんて絶対いってあげないから。)
そんな都合よくて、気前のいい女になんてなってあげない。だって私は最低で、あなたのことを諦められなかった、卑怯で情けない人間だから。
(最後の最後まで)
泣きじゃくるあなたの為に、笑ってあげる。笑った顔が可愛いってあなたが言ったから。私は私の笑顔が好きになった。
「ねぇ。大好き」
泣きながら笑う私の顔を見て、泣くあなたが大好き。
「私、あなたの好きな人になれた?」
「…なれたよ。」
恋人にはなれなかった。両想いなだけな関係。
私たちは、確かに幸せだった。
だから。
(好きになってくれて、ありがとう)