【鹿児島県】種子島 野田一成医師が語る離島医療~『限られた医療資源のなかで、自分でやれることを尽くす』〜◆Vol.3 #file5
テレビの報道記者から医師に転身し、ベトナムでの診療経験などを経て現在は種子島で活躍を続ける野田先生。最終回の今回は、野田先生が考える今後の離島医療や、離島を志す若い人たちへのメッセージについて伺いました。離島医療の魅力の一方にある課題や、医療者として持つべき覚悟についてのメッセージです。
Vol.1、Vol2は下記のリンクからご覧になれます。Vol1 https://note.com/ritozin/n/n9b2d8b0e7835
Vol2 https://note.com/ritozin/n/nd2d3c20c9cf4
島医者をローテーションさせる仕組みが必要
----今後の離島医療に関して思うことは。
離島で必要とされる医療レベルを継続させていくシステムを考える必要があると思います。若い人が離島医療をやりたいという気持ちはわかりますが、たとえば専門医の人の立場に立つと、専門性をどうやって維持していくかという問題があります。
種子島は飛行機で鹿児島まで近いですが、もっと遠くの離島だと何時間もかかったりします。自分は種子島にもう半年以上いますが、鹿児島本土に行ったことは、ヘリ搬送以外でありません。悪天候の影響で、帰りの飛行機や船が動かなくなったら、外来に穴をあけてしまうので、天候を考えて島からほとんど動けない。島の中でずっと生活するというのは、ある程度限界があると思います。
特定の医者がずっと島にいる、というのではなくて、ローテーションしていく仕組みを作らないといけません。2、3年やったら帰るとか。病院にとっても医者にとっても、両方の幸せを担保するためには、そういう形がいいのかなと思います。
----流動的に人材を入れ替える仕組みが必要ということですね。
きちんと自分のライフプランみたいなものを考えておかないと結構大変だと思います。これだけ本土に近い島(種子島)にいても、そう思います。いま勤めている病院の院長は地元出身ですが、ほかのスタッフはどんどん入れ替わっています。それにはさっき話したような事情が背景にあって、島にいると家族にとってハードなこともあるし、ある意味、海外にいるのとあまり変わりません。言葉は通じるけど、映画館もないし、嵐の時は郵便も止まったままです。
覚悟も持って来てほしい
----先生がいらっしゃったベトナムは種子島以上に日本と離れているわけですが、その経験があってもそう思われますか。
ベトナムのほうが色々なものが充足していると思います。島よりも環境的には便利です。あと、島の人同士がお互いのことを知っているから、自分のプライバシーの問題もあります。あの人は今日どこに行っていたとか、そういうのも全部耳に入ってきます。それら全てをひっくるめて島医者。もちろんいいところもたくさんあるけれど、そうじゃないこともあるってことは考えておかなくてはならないと思います。
----プラスな面ばかりではない、ということですね。
医者個人の医療的な知識面のほか、家族の健康や子どもの進学などの問題もあります。みんなが長くずっと同じところにい続けるというのは難しいと思います。もちろんやりがいはあるし、行きたいと思う人はもちろん行ってほしいと思いますが、そういう覚悟も持って来てほしい。結構いろいろ制約もあるということは知っておいてほしいです。
総合医として力を付けてほしい
----そのような厳しい環境の一方で、種子島に住んでみて、どのような面で魅力を感じていますか。
種子島にきてベトナムに似ているなと思いました。温暖で、植生もマンゴーが植わっていたりして、本当に南国という感じです。また食べ物が美味しい。特に野菜が美味しいのと、人間がみんな優しいです。暖かくて、のんびりしています。そして海が綺麗で、夏にはサーファーが集まってきます。
----離島医療を志す学生へのメッセージをお願いします。
離島での医療は総合力が求められると思うので、経験を積んできてほしいなと思います。離島で経験を積むのではなくて、経験をもって離島にきてほしいです。人情とか孤軍奮闘とかそういうイメージだけできてしまうと、結構つらいと思います。いかに自分がなにもできないかってことを思い知るだけになるかもしれません。もちろん離島でないとできない経験もありますが、あくまでもある程度ベースラインが必要なので、そのためには総合医として力を付けてほしい。離島・僻地に行きたいのであれば、「全身を診る」ということが大切になってきます。皮膚科とか整形外科とかもすごく大事だし、多方面を診る力を養うと、すごく充実した医者ライフを送れるのではないかと思います。
編集者よりコメント
野田先生の語る、離島医療に携わる者として持つべき「覚悟」について考えさせられるインタビューでした。限られた医療資源の中で求められる「全身を診る」力は、医療者として身につけなければならないと痛感しました。また、海で隔てられた離島の環境で、生活上の制約があることも考える必要があると感じました。しかし、記者経験を通じた「相手の話を聞いて背景に思いを馳せる」力や、異国・ベトナムでの診療経験が「人がいないところで医療をする」という野田先生のバックボーンとなっているではないかと感じました。無駄な経験はない、全ての経験を未来に活かしていきたいと、インタビューを終えた今、考えています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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記事を書いた人
Joe Tsurumi 東海大学医学部医学科6年
愛知県名古屋市出身。主に事件担当の記者として7年の経験の後、再受験を経て医学部に入学。趣味は登山、釣り、野球、離島巡りなど。