【鹿児島県】与論島 古川誠二先生が語る離島医療~島民と深く関わり、その人の人生を診る医療~◆Vol.3 #file7
本記事は【鹿児島県】与論島 古川誠二先生が語る離島医療~島民と深く関わり、その人の人生を診る医療~◆Vol.2の続きとなります。ぜひそちらもご覧ください。
離島医療の永遠の課題 人材確保問題
----古川先生が離島医療を行なっていく中で問題に感じていること、解決のために必要だと思うことは何でしょうか?
30年あまり医療に携わってきて、私も70歳になるということで後継者を探していたんですけれども、なかなか見つからないという状態でした。それでパナウル診療所を閉院してしまったんですけれどね(その後、島民の声を受けて2022年7月に再び開院することとなりました)。
私が離島医療を目指していたころから、離島やへき地で後継者を見つけるのには苦労しているということだったのですが、そこから3,40年経ったのに、医療の体制が全然変わっていないと言うのは大きな問題だと思います。
地域枠などで医師を確保する手段は出来たのかもしれませんが、トレーニングを受けて実力を付けた医師が適切に必要な地域に配置されるシステムがどうもまだ確立されていないような感じがするんですよ。
医療機関は地域にとってなくてはならないものなので、地域医療は公立病院とか私立病院とか関係なく、必ず後継者を早めに確保する必要があると思います。例えば、あと5年で退職するような時に、その5年の間に、行政や大学など、そういうところが組織を作って、医師を早く確保するということをしないといけないと思うんです。やっぱり医師の後継、医療機関の継続というシステムがまだ十分にできているとは私は思いませんね。
与論島の地理的特性によって起きるドクターヘリの搬送上の課題
それから、もう一つ与論島で問題になっていることは、ドクターヘリですね。与論島の場合は沖縄県と鹿児島県と県境だということで、実は患者さんが普段かかっている病院はほとんど沖縄県の病院というちょっと変わった地域なんですよね。
ドクターヘリがあるということだけでもすごくありがたいんですけれども、ドクターヘリの領域から言えば鹿児島県。だからできるだけ鹿児島県で完結して欲しいという行政などの意向があって、患者さんが沖縄県に行きたいという状況がうまくそことマッチしないのです。
こういう救急搬送システム(ドクターヘリ)がうまくできたのに、地域の患者さんのニーズがなかなか届いていないというところが、今の与論島にとっては大きな問題だと思います。
----ありがとうございます。常に離島のことや島民のことを考えてくださっている先生の気持ちに感服しております。
未来の離島の医療者へのメッセージ
----最後に、離島医療を目指す人に向けて先生からひと言頂けますでしょうか?
離島医療を目指す先生は、離島に行ったら自分で全て決断をしないといけないという状況が生まれますので、自分自身の力を信じてですね、自分の判断が正しいんだと、いうふうに、もう腹を括って自分の気持ちで行動して欲しいと思います。
それから、私は最初から僻地や離島で医療をしたいという思いで離島に来たんですけれども、そうでなくても、勉強になるというつもりで、ちょっと離島に行ってみようかなというふうな感じで来ていただければ、そこで自分自身の中にあった今まで自分でも気づかなかったようなことが島に来ることによって目覚めることもあると思うんですよね。ぜひ、一度は離島とか地域医療の体験をするために思い切って飛び込んで欲しいなというふうに思っております。
----離島に飛び込んで欲しい…実際に行ってみて新たに気付くことが多いかもしれないですね。本日はお忙しいところありがとうございました!
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編集後記
3か月に渡って古川先生の記事を編集させて頂きましたが、医者として必要な責任をしっかりと持たれながら、常に与論島に住む人の視点になって考えていらっしゃる先生のお姿に心を打たれました。また、病気を診るだけではなく、住民の話をよく聞いて、その人の生活を理解することが大切なのだと改めて気づくことが出来ました。
古川先生のインタビュー記事を書かせて頂けたこと、幸甚に存じます。ありがとうございました。
この記事を書いた人
古都遥
聖路加国際大学看護学部看護学科4年
小笠原諸島父島に行ったことを機に離島医療に興味を持つ。離島で活躍できる看護師を目指して日々勉強中。
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