見出し画像

写真を撮る楽しみってなんだろう。 そして写真は綺麗であれば良いのか。


私はカメラオタクなのかも知れない、と今更ながら気がついた。高校生の頃、持っていた身分不相応の一眼レフカメラの「NIKON F」 を皮切りに、カメラメーカーへの強い拘りもあまりなく、あるべき節操もなく、50台以上買い替えてきた歴史を振り返って考えてみた。車も乗ってみなければ分からない、靴も履いてみなければ分からない。同様に、カメラも使って見なければ分からない。仕事の忙しい時期の数十年間、興味を失ったブランクがあったものの、現在、カメラを格納してある防湿庫には、新旧5台のカメラや何本かのレンズが入っている。さらに私の寝室にはカメラのカタログや、カメラ関係の本があって、寝る前に読むことで心地よい眠りにつける。さて、本題に入ろう。

スマホやカメラで写真を撮ることは、きっと皆さんも楽しいと思う。でもその後、家に帰ってPCにデータを取り込んで、撮った写真を見返す。すると大半は、なんか違うなぁ、下手だなぁ、イマイチだなぁと、がっかりしたりする。でもたま~に、イイね!と思う写真が撮れたりする。イイね!と思える写真がまた撮れるかなと期待して、懲りずに撮影に行く。

では、≪カメラの楽しみって何だろう≫、そして写した≪写真が綺麗であれば良いのか≫、と、近頃良く考えるようになった。その2つのテーマにフォーカスを当てて書いてみた。


テーマ1 ≪カメラの楽しみって何だろう≫

1. 撮った写真をもう一度見返す楽しみ

旅行や、近くの公園の紅葉を撮りに行く。綺麗だなと思った風景を、カメラやスマホで写す。実際にその場で見る楽しみがある。だが、家に帰ってもう一度写した写真を見返すと、その時感じた感動や、見落としていた部分を見直して楽しめる。写真がもっと好きならば、その写真の露出や構図、アングル、ホワイトバランス、などが適正だったかなど、色々見直し、反省材料にもつながる。

2. 写真を撮りに、持っていくカメラ機材をチョイスする楽しみ

どこに撮影に行こうか考えるのも楽しみの一つだ。旅の目的が撮影ではなくても、カメラは必ず持っていく。普通はカメラ1台かスマホを持っていくのが大半だろう。でもカメラ好きだと、どのカメラを持っていくのを考える楽しみがある。もっとも、最近のスマホは性能が良くて、普通にちゃんと写真が撮れるのでカメラが売れず、カメラメーカーがコンデジを作らなくなっている。2020年には、ピーク時の2010年の1/10まで出荷台数が減少している。カメラメーカー受難の時代に突入した。私のスマホはiphone10Rだが、大きく引き伸ばさないSNS投稿ならば、十分な写りをする。でも流石に、スマホで気合を入れて写すぞ、という意気込みにはなれない。あまりにも簡単に写せるので、どちらかというと私には記録に近い。

現在3台のカメラを用途に応じて使っているので、どれにするか悩む楽しみがある。

1.メモ・記録用  富士フィルム XF-10 APS-Cコンパクトデジカメ
2.散歩・登山用  富士フィルム X-E3  軽量APS-Cミラーレスカメラ
3.真面目な撮影用 NIKON Z6 フルサイズ ミラーレスカメラ

現在、私のフラッグシップカメラは、NIKON Z6だ。しかし紅葉の時期はフジのXE-3の出番がほとんどだった。フジの色調は、他のカメラメーカーでは出せない自然の色を、見たままに描写できる。散歩用には軽いカメラが良い。それ以外気合を入れて撮りたいときには、やはり精緻に描写できるNIKON Z6の出動となる。NIKONの描写力、解像力は抜きんでている。撮影の目的によって、どのカメラを持っていこうかと考える時間も楽しい。撮影用途に応じた交換レンズを携えて。時には、レンズ交換しないで済むように2台持っていく。かなりの変遷と紆余曲折はあったものの、最近漸くこれらの機種とこの使用パターンで、私のカメラ世界の平和は保たれている。

画像1

         左からNIKON Z6、Fuji X-E3、FujiXF-10

画像2

                                   六義園 池に写る紅葉 FujiX-E3

3. レンズ選びの楽しさ

一般的にレンズの50mmが、最も眼で見た画角に近いレンズで、標準レンズと言われている。これが、広角や魚眼、マクロレンズを使うことで、広い視野を得ることが出来て見た目とは違う世界が楽しめるマクロレンズは虫眼鏡で見ないと見えない花の花弁や、苔、昆虫などの細部の世界が見える。望遠レンズに至っては肉眼では見られない、遠くの山々や鳥、景色などが拡大して見える。これがレンズの効用だ。この効果を上手に使うことで、普段見た目とは違う写真の表現が出来る。

4. カメラのデザインを楽しむ

カメラのデザインは、メーカーによって個性が異なる。キャノンは曲線を活かしたデザインで、ソニーは直線を活かしている。その中間がニコンだったりする。さらに富士フィルムは、フィルム時代のレンジファインダーカメラのデザインを、今も踏襲している。ボディの中には凝縮したメカが、知恵を絞り収めてられている。自身、車のボディを眺めるのが好きなのと同じように、各社のデザイン部門が力を結集して作り上げたカメラボディのデザインを、本体を手に持ち重量を感じながら眺めるのも楽しい。カメラオタクの真骨頂かも知れない。レンズも、そのボディにふさわしいデザインであれば完璧だ。

5. カメラを買い替える楽しみ

デジタルカメラはフィルムカメラと違って、現在も進化し続けている。たった2~3年前のデジタルカメラでも、最新のカメラと比べると性能がアップし写しやすくなっている。ところがフィルムカメラならば、30年前のカメラでもフィルムを入れれば、今でも使えてしまう。でも、古いデジタルカメラはそうはいかない。勿論撮影は出来る。画素数が低かったりするので、今のデジタルカメラで写した写真と比べると色彩もコントラストも悪く、解像力や画素数が低いので粗い。ガラケーの画像を思い出してほしい。デジタルカメラは、現在も日々進化中の機器なのだ。

振り返ってみると、私の場合、高校生の頃買ってもらった、身分不相応のNIKON Fに端を発している。最高級のカメラを手に入れて有頂天になった私は、カメラに深い興味を示していく。その後もっと良く写るカメラを求めて、50台以上カメラを買い替えてきた。時には禁断の「ライカ」にまで手を出したこともあった。しっくりこない部分が見つかるとカタログを集め、ネットで情報を収集して、次なるカメラを探し始まる。このカメラウィルスとも呼ぶべきウィルスは、体内に潜み時を経て必ずどこかで再発する。このウィルスに感染すると、何か“新しいカメラを買わないといけないな症候群”にかられる。この症状を抑えるワクチンは、現在カメラ購入資金投入しかない。しかしこのワクチンは時価なので、時として結構高い対価を支払うことにもなる。新しいカメラを買うことが出来れば、たちどころに症状は収まる。うまいことに、今の手持ちのカメラは不満も解消されて、カメラウィルスは体内に潜んでくれていている。

画像3

  NIKON F 当時の最高級カメラ 1970年代購入

6. 何故永遠に買い替え続けるのだろう

では、何が目的でこれほどカメラを買い替えて続けているのだろうか。デジタルカメラは進化中だということも理由の一つだ。車で言えば、【最新のポルシェが、最良のポルシェ】という言葉がある。カメラも、【一番新しいデジタルカメラが、最良のデジタルカメラ】なのだ。

もう一つに、“新製品のカメラを使えば、もっと良い写真が撮れるに違いない”或いは“高いカメラを買えばいい写真が撮れるに違いない”という、アマチュアカメラマンの永遠の思いこみがある。勿論新しいカメラは良く写る。どんどんプロの領域の技術まで、カメラ側が写してくれる製品が出現する時代になった。ただ、アマチュアレベルであれば、カメラの値段が高ければ良いわけではない。ポスター大に引き伸びばさなければ必要がない画素数や、連射枚数、AF(オートフォーカス)機能など、必要以上の高いレベルの機能を持っていたりするからだ。最高のものより少しレベルダウンしても十分だと私は思っている。私はもとよりメカ好きなので、手に入れてからは、新しいカメラを使いこなす操作マニュアル本を買って、カメラの機能を色々と試してみる作業も楽しい。まぁ、言うなれば子供のおもちゃに等しい。

画像4

         ライカ エルマリート28mm

テーマ2 ≪写真が綺麗であれば良いのか≫

7. 写真の利用方法の変化

観光地や景勝地にいくと、スマホやカメラで撮影している人が沢山いる。3Dを2Dに置き換える作業だ。一方で、カメラを持たず、目の前に広がる風景を見ている人もいる。どちらでも楽しい。最近では、若い方たちに限らず、インスタ映えのする場所やお店をわざわざ探して出向く。カメラやスマホで撮って、その場でインスタグラムやフェイスブックに、美しい風景や美味しそうな食べ物の写真を、アップして楽しんでいる人たちも多い。その画像はインスタグラムだと、ハッシュタグをつけることで、知り合い以外の人達にも閲覧できるようになっている。“その写真いいじゃない”と共感を得た閲覧者が、スキマークを沢山つけてくれればきっと嬉しい。自己表現の一つでもあり、承認欲求の一つなのだろう。

画像5


このように、写真の利用方法が時代とともに変わってきた。「フィルムカメラ」は現像して、アルバムにして保存した。時間をおいて、アルバムを引っ張り出しては、たまに写真を見返して思い出に浸ったりした。だが、「デジタルカメラ」になると、1日撮る枚数も数十枚、数百枚になったりする。撮った写真はPCのファイルや、USB、外付けのハードディスクに取り込まれて、沢山のファイルの中にうずもれていく。そのため、あまり過去の写真を見返すことが少なくなっている。スマホの写真フォルダーが一杯になっている人も多いだろう。最近では、SNSに投稿すると、FBや、インスタグラムのストーリーズを、たまに見返すことはあるだろう。いずれにせよ保存していることで満足してしまう。そのまま写真は、スマホや、USB、外付けハードディスクのファイルの中で、眠り続けることになる。もう少しなんとかならないものだろうか。

一つの解決方法だが、私の友人がテーマ別にチョイスして、アルバムにしている。今は簡単にネットで、アルバムのスタイルを選び、データを入れるとアルバムが出来上がる。デジタルとアナログの融合だ。これなら見返すことが出来る。あとはデジタルフォトフレームで、撮影データが入ったSDカードを入れるとディスプレイで見ることが出来る。まぁ、どちらもひと手間かかるのだが。

プレゼンテーション1

  ネット作成アルバム    デジタルフォトフレーム
                                                                                               フリー素材より


画像7

フィルムカメラのNIKON FAとYASHICA ELECTRO35

8. いい写真だね!と誰かに言われたい

さて、写真を褒めるとき「綺麗な写真ですね!」が一般的だ。例えば河口湖などの観光地で、富士山をバックに撮る写真は、日中の順光で撮っていると、どれも似たような写真になる。確かに美しいけれど、記念写真っぽくなっている。ちょっと良いカメラがあれば、或いは最新のスマホがあれば、綺麗な写真が簡単に撮れる時代だ。だから私自身、ここ数年『綺麗な写真だね!』では飽き足らず『お、これ、なんかいい写真だねぇ!!』と言われる写真が撮りたくなった。どう違うんだ?と言われそうだが、カメラ雑誌や、技術本を読んでは試行錯誤している。例えば光と影を意識したり、構図が巧みで大胆だったり、人がまだ寝ている夜が明けない時刻に出かけて、上手に光と風景を捉えた写真や、皆が家に帰る日没前の空が、ブルーになるマジックアワーに撮った写真。或いは、標高の高い山で、雲海や山々の光と闇がせめぎ合い織りなすグラデーションを、上手に撮った写真もあるだろう。人物やペット、鳥や動物であれば、ほんの一瞬だけ、表情やしぐさに垣間見える瞬間を写したり、日常とは少し違った見え方のする写真だ。

プレゼンテーション1

 白馬山荘より剱岳を望む        稲村ケ崎海岸                                                                                       

皆がいい写真だと思うのを判断するには、写真好きに見てもらったり、フォトコンテストに応募したり、SNSに投稿することで評価がもらえる。そういう意味では、人が見て「いい写真」だと思うのが判断基準となる、分かり易い時代になった。

そうは言っても、写真の楽しみ方は十人十色で、色々な楽しみを与えてくれる。

画像5


9. 記憶に残る写真が撮れたら楽しい

では、記憶に残る写真とはなんだろう。

記憶に残る写真9つの例
1)一幅の絵画のように美しい写真
2) 見る者に、強烈なインパクトを与える写真
3) 光と影を活かして撮られた写真
4) 構図が見事な写真、或いはアンバランスでも何故か調和のとれた写真。
5) ほんの一瞬の表情などを、巧みに切り撮った写真
6) 普通には、考えつかない構図で撮られた写真
7) 広角レンズやマクロレンズ、望遠などでその効果が楽しめる写真
8) カメラ技術を駆使して撮られた写真(スローシャッターやインターバル撮影など)
9) 人がなかなか踏み入れない場所で、あまり見たことがない風景の写真

などなど、この他にもあるだろう。

これらの写真に共通しているのは何か。勿論美しいだけではなく、人をハッとさせる何かがある。その写真の持つオーラ、或いは、なんらかの力のある写真ということかもしれない。山岳写真家の白川義員(しらかわ よしかず)氏は、標高8,000m級もある「世界の百名山」を、小型飛行機の窓を開けて同じ高度から撮影に挑んだ。乱気流で機の壁面に叩きつけられて、頸椎を損傷したが一命を取り留めた。それでも辞めずにまた飛ぶ。命をかけた写真には魂が宿っていた。画家が絵に、彫刻家が彫像に魂を吹き込むように、写真家は撮る写真に魂を吹き込み、撮りあげた写真だ。常人が撮る写真のレベルを遥かに超えている。白石氏が言っていた言葉が印象的だ。「カメラが撮るのではない。念(被写体に対する強い思い)が良い写真を撮らせてくれる」と。

10.良い写真とは

以上を考えると良い写真とは、写真を撮る人が良い写真を撮りたいと言う意思を、或いは魂を、カメラを通して写真に吹き込めた写真なのかもしれない。もちろんそれには見合う技術が必要だ。有名な芸術家の作品も、見る人に感動を与えてくれる。レベルはともかく、これと同じようになんらかの感動を与えられ、もう少し身近に言えば、沢山のいいね!がもらえる写真が、良い写真でもある。

いずれにせよ絵画展や写真展に行って足が止まる作品は、なんらかのオーラを放っている。その放つ強さがあることが、いい写真だと決定づけるような気がする。最近ではフェイスブックやインスタグラムに投稿すると、いいね!や、♥好きボタンがもらえる。このようなSNSに投稿していいね!が沢山もらえフォロワーが大ければ、少しは良い写真が撮れたのかと、自己満足ではなく思えたりするようになった。きっといつか、もっともっといい写真が撮れるに違いない。


                      



いいなと思ったら応援しよう!