はじめてのチュウ

きょう、人生ではじめて知らない人と歯磨き粉を交換した。

自分の好きな食べ物のランキングTOP10に入るものが歯磨き粉だ。
まあ、だいたいの人間はそうである。一日に１～２回ほぼ必ず口にするのだから。

久しぶりに梅田LOFTに行った。
歯磨き粉のSALEコーナーがあった。
それはもう、大興奮だ。なんせ、普段日用品としてしか扱われていない歯磨き粉が、LOFTでは趣向品として扱われていて、さらにSALEとはもう、祭りだ。おわかりだろうか。この私の興奮を。なんと、ＬＯＦＴには歯磨き粉のテスターまであるのだ。つまり。ちょろっと出して、舐めてもいいわけだ。もちろん、ちょろっと出して舐めて、ちょろっと出して舐めて。何回しただろうか。なんだここは。天国か。

天国ならば、もう気分はアゲアゲＨＥＹ　ＤＪ！なので、どれを買おうか血眼になって探している。
同じ味の３本セットがＳＡＬＥで安い。
しかし、同じ味だ。
その横に同じメーカーの味違いのセットもある。
ＡＡＡ、ＢＢＢみたいな感じ。
この歯磨き粉のセットを見て「あー。この三本セットが互い違いに味が変わってたらいいのになー」と思う。
しかし、そうはいかない。ＳＡＬＥ品なのである。
天六あたりの商店街の、おばちゃんがやってるかんじの店ならば「ちょっと、入れ替えてーや」と言えるところではあるが、ここは、大都会梅田のＬＯＦＴである。そうはいかない。ＡＢＡとＢＡＢにはならない。

そこに、天使が舞い降りた。
いや、天使は自分のことを天使とは思っていない。
ＡＡＡを自分の買い物かごに躊躇なくぶち込んだ天使。

（そうだよな。この歯磨き粉いいもんな。こいつわかってるな。）
と思った。その瞬間、思考と言葉の前後が判断つかん系の自分がひょこっと顔をだした。ああ。いつものあいつだ。思ったらすぐ口に出してしまう自分だわ。

「あのー。それと、これ、一個交換しませんか？」
「えっ、、、あー。いいですよ」
「ちょっとまだ買い物するので待っててくださいねー」
「あ、、、、はい。」

と、なぜか押され気味で歯磨き粉の交換は無事に成功した。
つまり、ＡＢＡとＢＡＢになったのである。

「お店の中だとなんかアレなんで、外で交換しましょうか」
と、言われ外に連れていかれた。

「この歯磨き粉いいですよね」
「ですよね！！」
「歯医者さんも良いって言ってますもんね！」
「そうですよね！」
みたいな、もう、謎の会話がＬＯＦＴの裏側の階段の方で繰り広げられていた。

そのような経緯で行われた歯磨き粉の交換。

それは、まさに、
はじめてのチュウであった。