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性同一性障害の手術要件の要件緩和における最高裁判断について
性同一性障害者がその性自認に従った法令上の性別の取り扱いを受ける事が個人の人格的存在と結びついた重要な法的利益であると最高裁判断に記されている。手術要件の違憲を理由に特例法全体を無効にすることは立法に反する。
重要な法的利益と言われたそれを、性同一性障害者らから剥奪する事が認められるなんてことは、ないだろうとは思う。それがあるなら、そもそも生殖不能要件の違憲なんて認められてないだろうし、そもそもLGBTやセクシャルマイノリティに関する啓発や制度が創られなかっただろうし、逆に当然に規制されているだろうし、なんなら厳罰化されているだろう。また、性同一性障害者に限らず、あらゆる人の背景により、同じように何かしらの権利を剥奪、抑制するだろうし、そんなギスギスした社会になった現在とは全く異なった社会であるならば、そんな事もあるのかもしれない。
そう考えると、性同一性障害者含め、それに限らずさまざまな背景を持つ人は、常にグラグラな一本橋の上を、生涯かけて歩かされているみたいだ。
私はこの特例法の生殖不能要件に関しては当事者ではあるけど、限りなく外野であり、マジョリティ側の立場であり、かつバイナリーのトランスであり、やはり社会における男女区分(出生時の性、遺伝子ではなく)の当然という価値観に弁えるわけではなく、溶け込んで生きてきた人間だから、今ある秩序を、まるっきり変えてしまうような事には、不安や恐怖を感じるのは、恐らく性同一性障害者でない者たちが、この度の特例法の動きにぼんやり感じるそれと、同じだと言うと叱られるかもしれないけど、百歩譲って近いものがあるのかもしれない。
でも、現に重要な法的利益と言われたそれを享受する事が許されない者たちがいて、それを踏み台にいつまでも無視するのも違うと思った。
最高裁判断後、早速Xでは、外観要件差し戻しを無視して、女子風呂に男が入り放題なるデマがながれ、それに対する流れ弾的なコメントがいくらか、私のような過疎地アカウントにも飛んできた。
事実に基づかないし、それを伝えても埒があかないが、煽り目的ではなく、それにより流され不安になっているのであれば、その気持ちもわからないわけがない。多くの当事者アカウントのポストを見ても、不安になっている事がよく分かる。
数年前の私なら、その中に混ざって、同じように、最高裁判断に対する絶望や怒りを書き連ねていたかもしれない。
正直そんな不安が、今自分にないかと言えば、ないと言い切る事はできない。だから、最高裁判断の結果や報道を読んで確かめる。そうでもしないと自分を保てないから。
今ある秩序が思い切り変わる事は私も望まないし、必ずしもそんな風向きな話ではないと思うし、重要な法的利益と言われたそれをこれまで認められず無視されてきた人たちが、少なくとも私を含め当人らではない大多数の人たちが、当然にまたは特例で認められてきたそれを同じように認められるに至ったのだから、それは大変喜ばしい事であり、それこそ社会の状況の変化が一つ理由であるなら、それはなるほど納得の行く事だし、やはり良かったと思う。
最高裁判断を機に、明らかにトランスへの風当たりは強くなった。それに対して、私はこれまで通り、普段はクローズドであるため、一人の市民として、これまで通り世間に溶け込んで周りの人たちと共に生きていく、そうやってただコツコツと実績を重ねていくしかないと思う。
一人の当事者として、私に出来る事なんて、せいぜいこの程度。されどこの程度だと思っている。
性同一性障害者について、何かしらの変化があったならば、それにより世の中にはさして問題がなかったという事を、何の専門家でもない私に証明してみせられるという事は、それくらいだと思う。
でも、それが一番大切なことだと思っている。自分にとっても、周りの皆にとっても。