#2 天才

音楽は難しい。

音楽に限った話ではなく、芸術は難しい。

費やした時間と効率が圧倒的にものを言うし、そこに数%の才能が必要になる。

そして15.6歳を迎えた頃には、英才教育を施された人間とそうでない人間の間に驚くほどの差ができている。

私はというと、施されていない人間だ。

決して家庭が貧しかったわけではなく、幸せに育った方だと思う。

ピアノも習わせて貰った。吹奏楽部では40万近くする楽器も買ってもらって、一回五千円ぐらいするレッスンも月1で受けさせてもらった。

それらは私を「何者か」にする為のものではなく、そのどれもが親の愛だ。

だから私は、いやきっと私達は、

今ここにいる。

芸術家に対する世間の風当たりは強い。

きっと近所の奥様方にも認めてもらおうと思ったら、キムタクが主演のドラマのタイアップでも貰うかMステに出演するしかないのだと思う。

そんなような結果が出なければ、どれだけ努力していようがしていまいが「フラフラ遊んでいるフリーター」だ。残念なことに。

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若い芸術家がもてはやされるのは、

残された時間の差と、感覚の一致度だと思う。

ムーブメントを作るのはいつだって若者で、若者が「いい」と思う歌詞、曲を書くことが売れるという事だと感じている。

18歳の心に刺さる曲を書けるのは、18歳か40歳か。答えは難しくないと思う。

だから、私は急ぐ。

感覚まで歳を取らないように。

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「昔は良かった」なんて言いたくない。

「もともと良かった」から、時間がたった今でも残ってるだけだ。

昔の良いものに触れるのは素敵な事だけど

今そこにある良いものに気付けなければせっかく「昔」が残っている意味がない。

メディアで流れているものが素晴らしいなら、宣伝により多く投資されたものが良いものになってしまう。

皆んなが好きな芸術家が素晴らしいなら、愛想がいいだけの芸術家だけが良いものになってしまう。

天才は、商才とは別物であるべきだ。

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良い曲は良いと言おう。

好きな絵は好きと言おう。

周りがなんと言おうと、愛そう。

それが、すべての芸術家に、

すべての芸術そのものに必要な事だと思う。

心で、受け止めていてほしい。

2020.08.26 ツヅク リタ