命は投げ捨てるものではない

ダーウィン賞というものがあります。

進化論のダーウィンの名を冠するこの賞は、「愚かな行為により死ぬか生殖能力を失うことで、自らの劣った遺伝子を後生に残さず抹消した」人物に与えられる、皮肉とブラックユーモアが多分に混じった賞です。
優れた業績を上げた生物学者に授与される「ダーウィン・メダル」とは全く無関係とのこと。

人にとって「死」とは、誰にとっても人生で最大のイベントであり、忌むべきもの、想像したくないものでありながら、ある種人生の総決算であるとも言えます。
死を迎える人にとってはもちろんのこと、故人の家族にとっても大切なものです。「人の死を笑う」というのは、人としてもっとも「やってはいけないこと」のひとつではあります。

しかしながら世の中には、余人の想像の及ばぬおそるべき○○がいるものです。
彼らが自らの手で愚かな死を選んだのであれば、それをもって何かしらの教訓に換えるのはある種の手向けとも言えるのではないでしょうか。多分。おそらく。きっと。

一体どんな死がダーウィン賞に選ばれるかはWikipediaに一覧がありますが、以下、いくつか例を抜粋します。


自分が虐待していた同棲相手の10歳の息子に包丁を持たせ、「俺が憎いなら刺してみろ」と挑発し、一度包丁を置いた息子にそれを再び持たせてなおも挑発した結果、ついに刺殺された男。救急センターで発した最期の言葉は「ガキがこんなことをするなんて信じられるか?」だった。2000年/アメリカ

窮鼠に噛まれた猫、という感じですね。強い立場にいながら精神的な強さを獲得できない人は、弱い相手を虐待することでその強さの裏付けを図ろうとします。
どんな人でも本気で怒らせると怖い、というのは人に対する畏れをうみ、やがては相手の立場を尊重する方向に繋がっていきます。大抵の人は人生のどこかでそれを学びますが、この人は少々遅すぎたようです。

ボトルの中の液体を酒だと思って飲んだらガソリンだったため、慌てて吐き出し服がガソリンまみれになった。口直しのためにタバコに火をつけようとして引火し焼死。2012年/アメリカ

大変不謹慎ですがコントの一幕のように見える……。コントなら、黒こげになった人が煙を吐き出して終了、というノリですが現実はそうはいきませんでした。
世間的に、ガソリンの危険性は軽視されているきらいがあります。
静電気などでも発火し、火がつけば爆発的に燃焼し、ポリタンなどで日常的に使われる灯油とは危険度が段違いです。下記に参考動画をのせていますのでお時間あるかたどうぞ。

走行中のバンの屋根にマットレスを敷いて寝ていた女。マットレスは車に固定されておらず、バンが縁石に乗り上げた際にずれ落ちて死亡。運転者は無免許だった。2016年/アメリカ

どうしてそういうことするかなぁ……という感想です。
どんなにゆっくり動いているように見えても、機械は基本的に危険なものと認識した方がいいです。(いやそもそも車の屋根にマットレスを敷いて寝る発想事態がありえないんですが)
高校の頃、私は工業高校にいて旋盤などの工作機械を扱いましたが、実習前は服装や帽子の着用について厳しく指導されたものでした。
これは規律云々の話ではなく、回る機械に袖口が巻き込まれたりすると指の切断などの大ケガに繋がるからです。強面で反発心旺盛なクラスメートも、このときばかりは素直に言うことを聞いていたのが印象に残っています。


ダーウィン賞については不注意やうっかりミスによる痛ましい死もいくつかノミネートされていますが、特に上記のような例については「あんたがた何を考えてるんだ」とか「そんな簡単に死んでいいのか」と首をかしげたくなります。命は投げ捨てるものではない。

惜しくも(?)ダーウィン賞に選ばれてはいませんが下記のような例もあります。

2015年のクリスマスに、コンドームの自販機を自作の爆弾で爆破しようとしたドイツ人の男が、逃げ遅れて爆死したというもの。
「リア充爆発しろ」というネットスラングを実践しようとでもでもしたのでしょうか。気持ちはわからないでもない。

命はひとつしかなく、とても貴重なものです。迂闊なことで傷つけたり無駄にするのはやめましょう、と、彼らは自ら体を張って教えてくれた気がします。命を大事にしましょう。そして新しい世代を育てていきましょう。

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