EQ処理を雑に攻略する【DTM初心者向け】
僕はミックスが特に苦手だった。
ネットで調べると「簡単」とか言いながら、1つの楽器に必要な帯域が〜とか、このプラグインEQは高音に特性が〜とか言われるからだ。
この苦手意識が抜けたのは「EQ、正直適当でも良くね」という割り切りが出来てからである。
ぶっちゃけ適当でいいのだ。
あんまりにも凝ったイコライジングした挙句、オフにした方がカッコイイね、とかなるのが一番辛いのだ。
今日はそんなEQを雑に攻略する話。
上級者や現役バリバリのエンジニアに対して役に立つ話は一切無いことを先に明記しておく。
❶EQの目的を決める
さて、この記事に辿り着いた駆け出しDTMerの皆さんは、もはやこのタイトルだけで嫌になってきたのではないだろうか。
よく見るもんね、これ。
大丈夫。めっちゃシンプルな話しかしない。
僕はEQを三段でかける。構成はこんな感じだ。
①汚い音を消すEQ
②楽しく音を作るEQ
③最後他の音と混ぜた結果が良くなかった時に使うEQ
ほぼコレだけ。
多くて三段。②だけで終わりってこともよくある。これで良い。
目的をハッキリさせるということは、悩む要素を絞って解決までの時間を短くすることに繋がる。
そもそもEQを悩みまくるくらいならアレンジを見直した方が絶対良い。100のEQの工夫が1のアレンジの工夫に勝ることはほぼ無い。
EQは曲を劇的に良くする魔法ではないのだ。料理で言えばコショウみたいなもので、そりゃあったら美味しいけど無くても別に食える。それよりも肉の等級を上げた方がウマイ。
それくらいの認識で次の話に進もう。
❷EQの攻略法
では、本題に入る。
先程EQはコショウみたいなものと言ったが、まぁコショウくらいは使えた方が美味しくなることの方が多いので簡単なコツを学ぼう。
さっき目的ごとに3つ分割したEQ、それぞれの攻略法を記していく。
①汚い音を消すEQ
これを使うかどうかの見極めはズバリ、その音が聞きにくいかどうかだ。
変な感じがするなぁと思ったらこれを入れる。感覚の話で良い。
でも最近の音源は音綺麗だし、無くても正直良い。
とりあえずEQのQ幅を狭くしてブースト、適当に周波数探っていって、明らかに変な共鳴がある!ってなったらそこをピンポイントに消す。これだけ。
コツは、こういうのはサッサとやること。
やってみてあんまり変わんないなぁと思ったらサッサとEQを外すこと。
なぜならこのパートは全然楽しくないからだ。
どうせなら楽しいことに時間を使いたい。
②楽しく音を作るEQ
来た。これがEQでぶっちぎりに楽しい。
なぜなら一番音が変わるからだ。
やる気ないギターやしょんぼりとしたピアノを元気にしていく作業である。
ここのコツはたった2つ。
1つは、なるべく調整の効かないEQを選ぶこと。
最近のバンドが10個とかあるようなEQは必要ない。そんな複雑なものを使うことが失敗する一番の原因なのだ。
僕がメインで使う音作り用のEQは驚きの3バンドである。それくらいにアバウトにやった方が、その音の目的をハッキリさせやすい。
この楽器は高域が大事なのか低域が大事なのか、はたまた中ぶくれにするのか、そういうことを意識することがEQでは一番大切なことだ。
そういう意識をつける為にあえてバンド数の少ないEQを使う、これがコツ1つ目。
2つ目のコツは相対的な足し算と引き算を考えることである。
よく見るEQ例で高域をバリバリにブーストするものがある。
アレは僕もたまにやるし全然良いのだけれど、そんな時に必ず覚えていて欲しいことが1つ。
『どこかを上げるということは相対的にそれ以外を下げる』と同じ意味だということ。
もうバキバキに高域上げまくって、音程の芯が欲しいから中域上げまくって、でもドシッと構えたいから低域上げまくる。
それはマジでなんもEQしてないのとほぼ一緒なのだ。
全部あげたら、それただボリューム上げただけやんとなる。
だからこそ、楽器事にどの帯域を一番聞かせたいのかを意識する必要がある。
よくあるドンシャリにしたいから、と高域と低域をめっちゃあげる人もあるが、それはもはや中域下げるのが一番早いのだ。
何かを足す時は何かが引かれてることを常に覚えていて欲しい。
このパートはとにかく楽しくやることである。音がドンドン変わって楽しい、地味だったパートがきらびやかになって楽しい、スカスカのベースに重みがついて楽しい。これが大事だ。
逆にツマンネーってなったら終了でいい。楽しくならない位には音が変わってないってコトだし、必要無いってことなのだ。
③ 他の音と混ぜた結果が良くなかった時に使うEQ
これは②とは逆に高性能でバンド数の多いのを使うと良い。なぜなら細かい調整をするからだ。
このパートが良く教則本で言われる『帯域の整理』とか『被りを調整』のことである。
コレも正直楽しくは無いが、やったらいい事があるので一応トライする。
さて、このパートが楽しくない理由はパッと聞いてどの帯域が被ってるか分かんないからだ。分かるなら楽しいだろうと思う。僕は楽しくない。
なので僕なりのやり方を紹介する。プロのエンジニアが知ったら卒倒しそうだが、一応ね。
Step1:役割が似てる楽器事にグループ分けする。
コード進行を表現するやつ、リズム出すやつ、ベース、ドラムやパーカス、リード、ボーカルみたいに大雑把にグループ分けする。
でそれらでバスグループを作ろう。
バスグループは、乗り物のことじゃない。
この後の工程でそれぞれのグループにまとめてEQをやることがあるので、1つのトラックでエフェクト処理が出来るようにしておいてくれってことだ。分からない人は「DAW バスグループ 組み方」とかで調べて欲しい。
Step2:それぞれのグループを1つずつ聞いて、楽器を1つずつEQ処理
例えば上の工程で「鍵盤系」というグループを組んだとしよう。中にはピアノ、エレピ、シンセが入ってるとする。
まずはこの「鍵盤系」のグループだけを聞く。その上で、なんか音が濁ってるかもしれんと思ったら原因となる音にEQする。
この時のEQはなるべくマイナス方向に使うことだ。EQは下げる方向で揃えよう。
色々試行錯誤して、マシになったら次のグループへ行く。これを繰り返す。
Step3:全体で聞いてグループ毎にEQ処理
最後は全部の楽器をONにして曲全体を聞く。最初はとりとめもなく20とか40とかあったトラックはグループ分けのお陰で5とか6トラックにまとまってるハズだ。しかも目的ごとに分かれてる。
あとは目的にそったEQ処理をするだけだ。
これはベースのグループだから低音をちょっとスッキリ聞かせようとか、これはリード楽器のグループだから高音域に少し特徴を付けようとか、これはコード楽器だからボーカルの為に少し中音域を下げよう、とかである。
40トラックをやるよりは数倍簡単なハズだ。
お試しあれ。
❸EQの注意点
さて、これで具体的な手法までお伝えしたので、少なくとも僕(初心者卒業したか否か)くらいのレベルは超えたと思っていいだろう。
僕はEQ処理の実力が高い訳じゃないし耳も良くない。ただ簡単に済ませる為の手法を考えたから多少上手くなっただけだ。
つまり、手法が確立出来てない方がこれを読んでいれば耳が良くない僕よりは良いEQが出来るってワケ。
そんなEQだが1個だけ注意点がある。
それは『音がデカくなっただけでいい音だと感じてないか?』という点だ。
EQでどこかをブーストする。すると当然音が大きくなる。人間は音が大きい方が良い音と感じる生き物なので満足する。結果は良くない、みたいなスパイラルだ。
これも解決法がある。
EQ処理終わった!と思ったらEQ自体に付いてる全体の音量調節のツマミで処理前の音量に合わせてあげることだ。EQをONにしたりOFFにしたりして大体同じ音量になったら、またまたONとOFFを繰り返して良くなったかを聞く。
これを繰り返すことで「良くないEQ」になる可能性がグッと減る。音量に誤魔化された結果では無いからだ。
以上、本当にザックリだがEQの簡易攻略法を書いた。
途中でも書いたけど楽しくやるのを心がけて楽しい音にしていこう。