条文とマニュアルとの間にある越えられない壁
法的な判断をする際に、法令をあまりみることなく、マニュアルなどをみて判断しようとする人は多々います。
その多くは問題なく終わると思いますが、まれに審査請求や訴訟が提起されることがあります。
このような場合でも引き続き、マニュアルに基づく弁明や反論をしていては、全く不十分であるといえます。このような場合に必要なものは、条文に即した対応です。
公文書開示請求がなされ、以下の規定に該当するため不開示にしようとする場合を例に挙げます。
「地方公共団体の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に住民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの」
この規定には様々な要件があり、分解すると次のようなものになります。
①地方公共団体の内部又は相互間であること。
②審議、検討又は協議に関する情報であること。
③率直な意見の交換・意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあること。
④不当に住民の間に混乱を生じさせるおそれがあること。
⑤特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあること。
このうち、①と②は必須であり、③から⑤までのうち少なくとも1つは該当しなければなりません。
また、それぞれの要件には「中立性」「おそれ」などキーとなる用語もあります。
法的な主張を行う場合は、根拠法令やその解釈を明らかにし、法的判断が、その要件を満たしたものであることを具体的に示す必要があります。
「マニュアルにこう書いてあるから」だけでは、全くもって不十分と言わざるを得ないでしょう。