暗闇で微かに光る。ダンサー・イン・ザ・ダーク
この作品は良いとか悪いとか評価がつけられない。
物語はセルマの愛に溢れてるんだけど、悲しい結末で終わる。平穏な日常が確かにあったのに。セルマは優しい世界に住んでたはずだった。
少しずつ歯車が合わなくなって、セルマが闇に落とされていく様子がじわじわと繊細に描かれていて、本当に胸が締め付けられる。
この物語の何が1番辛いって、セルマの周りにいるひとたち一人一人が良かれと思ってやったことが、すべてセルマを死に至らせる部品になってしまったこと。
セルマは友人達の親切、お節介を拒み続けた。
私は前なら彼女の対応を見てうんざりしてただろうけど、彼女の生い立ちを考えれば仕方ないことだと思った。
セルマが信じられるのは自分だけだったんだね。
どこで間違えたのか、どうすれば最悪を回避できたのか?考えてみたけど、これはばっかりはどうしようにもないよね、っていう陳腐な言葉で落ち着いてしまう。
セルマが人に頼らず生きていくことを望んでいたし、自分の命より息子の視力のほうが大事だった。一緒に生きることを諦めてジーンに視力を与えることが彼女の精一杯の愛情表現だったんだ。それが本当に正しかったのか正直わからない。
亡くなる間際の、「最後から2番目の歌」とジーンに向けた「愛してる」という言葉があったことがせめてもの救いだった。ジーンはセルマからの言葉を欲しがってたから。
残された者は、大切な人から言われた些細な言葉や、遺した物に縋りたいから。
ジーンがいつかセルマのことを忘れて生きていけるようになることを願う。それは残酷なことなんかじゃない。セルマに縛られることなく、彼の人生を生きてほしい。