選挙制度の是非

甘太郎は、超時空体験図書館とムゲン一族全体と超時空体である全知ちゃんとの合体統合状態の意識状態のままさらに不自由な世界群について調べた。

そしてかつて自分がいた不自由な世界にあった選挙制度というものについて調べ始めた。

なぜなら、甘太郎が元いた不自由な世界では、みんな選挙制度が決めたルールに従うべきだと甘太郎に教えていたからだ。

それは多数決制度と呼ばれていて、皆の意志や願いを尊重するための大事な制度なのだと教えられていたからだ。

しかし、そうした多数決という選挙制度によって皆の願いが尊重されているようには甘太郎には思えなかったからだ。

少数意見は、それが甘太郎から見て明らかに良い意見であっても、いつまでたっても無視され続けていた。

しかもお金がなければ立候補すらできず、選挙活動すらままならず、ぜんぜん公平な制度ではないと甘太郎は思ったからだ。

さらには、そのお金というものを得るためには、悪党たちやお金持ちたちの意志やルールに従わないことが非常に難しい社会状態ですらあった。

だから、甘太郎は、そんな制度によってあらゆる体験者たちの願いが尊重されるとは到底思えなかったのだ。

だから甘太郎は、超時空体験図書館の記録に意識をアクセスして調査してみることのしたのだ。

甘太郎の善意に共感してくれる少数の人たちの多くが、なんとかそうした多数決選挙制度という仕組みを通じてみんなにとって良い世界を実現したいと思っていたことを思い出した。

彼らは、それが平和的に世の中を良くするための方法だと信じていた。

だから、甘太郎もそうした人達と一緒に残酷な家畜産業はもうやめようとか、いじめがない世界にしようとか、貧困をなくそうだとか、戦争のない世界にしようとか、
一部の者が不当にずるいことができない経済制度や政治制度に変えようとか……世界支配者や世界市民に呼び掛けたりしていたことがあったのだ。

しかし、その結果、そうした善意の願いが尊重され実現化することは甘太郎が肉体にはいっている間はほとんどなかったのだ。

だから甘太郎は、なぜそうした良い願いが現実化しないのかをどうしても知りたいと思ったのだ。

そして超時空体験図書館の膨大なあらゆる世界の過去現在未来の体験記録を調べ始めた。

すると、あることに気がついた。

それは、そもそも多数決と呼ばれる選挙制度という仕組みが当たり前のように機能している世界や社会は、長く存続できないという事実だった。

なんとそうした世界や社会のほとんどすべてが、遅かれ早かれ消えてしまうのだ。

超時空世界では、あらゆる世界の出来事の時間をいくらでも超高速に早送りできるので、そうしたことがすぐにわかった。

甘太郎は、驚いてしまって、自分が何か大きな誤解をしているんじゃないかと思った。

そんな馬鹿な……と何度も何度も繰り返し多数決という選挙制度のある世界や社会の体験記録を巻き戻したり早送りしたりして再確認した。

しかし、どうしても多数決という選挙制度というものが存在し続ける世界や社会は、最終的にことごとく消滅してしまうのだ。

一方、永遠に存続をし続ける世界では、そうした多数決という選挙制度の方が消滅していた。

なぜなのか……甘太郎は、必死で調べてみた。

その結果、次第に原因がわかってきた。

というか、なかなか理解できない甘太郎にしびれを切らした全知ちゃんが、甘太郎にアドバイスしたわけだが、

「いい、甘太郎ちゃん、甘太郎ちゃんも、みんなが自分の自由意志で何を選ぶのかが一番大事なんだってこないだ理解したでしょう?

で、どう? その多数決という選挙制度ってものは、みんなの自由意志の選択をちゃんと尊重できる制度になっているの?

それは不可能よね、だって多数派の意志だけが尊重されて、その他の意志はみんな多数派に従わなきゃならないという制度なんだから。

そうするとどうなるわけ?

そうすると、その多数派たちは、全員、他の少数派たちの体験選択の自由や権利を確信犯で奪う行為をその自由意志で選択しちゃうことになるわけよ。

そうなると、その多数派たちは、自業自得のルールによってさらにより多数のものたちによってその体験選択の自由や権利を否定されるという未来に進んでしまうのよ。

まあ、つまりは自業自得で、そうなるわけ。

で、その世界の多数派たちが自分の体験選択の自由や権利を失うようになると、もう間違った自分たちの意志を修正することもできなくなってくるのよ。

つまりは、壊れたロボット状態になってゆくのよ。

そのまま進んでゆけば絶対に滅亡してしまうとわかっていても、進む方向を変えることができない壊れたロボットのようになっちゃうわけ。
たとえ相手が少数派であっても、いいえ、相手がたった一人であっても、他者の体験選択の自由やそ自らの体験を自治する権利を故意に確信犯で否定してしまうと、自業自得のルールによってその多数派全体が、あるいはその多数派を影から操っている者たち全体が、自分自身の体験選択の自由やその自治権を否定されるという未来を選択してしまうことになるのよ。

つまり、どんな方法であれ、他者の体験選択の自由や自らの体験を自治する権利を故意に奪うという選択はそうした結果を必然的に発生させるということになるのよ。

つまり、多数決なんて制度をありがたい従うべき制度なんだとか本気で思ってしまったら確実に破滅してしまうわけ。

だってそうでしょう? 明らかに良心に反している自分がされたら嫌だと思うようなルールをいくらでも少数派に強制していいなんて制度をそれでよしと受け入れていたら自業自得のルールが適用されたら、破滅したり、最悪、永遠に望まない体験を強制され続ける未来になってしまうのは当然じゃない。

自殺したくなるほど嫌な体験が永遠に強制され続ける世界なんて、滅んだ方がましだと思うのは体験者として当然な感情でもあるわ。

そしてね、自由意志は、必ずどこかで間違うのよ。なぜなら、絶対に間違わないならそれはそもそも自由意志じゃないから。

間違えて、でも、その間違えの自業自得の責任を自覚して、間違ったらちゃんと改めるという選択をし続けることで、次第に意識たちは成長してゆくの。

でも、その間違いが自分以外の意識の自由意志や自らの体験を自らの意志で選ぶ権利を根こそぎ故意に否定し奪うような間違いだった場合には、致命傷になるのよ。

だから、永遠に存続し続ける世界や社会には、多数決みたいな選挙制度というものは存在していないのよ。

そうした世界や社会にあるのは、徹底的にそれぞれの意識、アイデンティティ、個性たちの平和的な自治権や体験選択の自由を保障するという確固たる最高法規やその最高法規を確実に実現化させるための良心的な意識たちやそのために最適な法則やシステムなのよ。

永遠に存続を続けれる世界では、ただ、他者のや体験選択の自由を悪意をもって確信犯で否定したり奪う行為だけが許されない行為とされていて、そうでないことはすべてそれぞれの選択の自由に任されている場合がほとんどなのよ。

つまり、誰もが自分自身の運命や体験や……そうね、さらには欲望や本能や気分やその他のありとあらゆる体験を完全に自分の意志で自由に選んで楽しめるような状態になっているわ。

だから、誰も嫌な体験を強制されることがなくて、だから、誰もそうした自由な世界をその自由意志で否定しなくなるから、そうした世界だけが永遠に存続し続けることができるようになるのよ。

だから、多数決制度という仕組みが存在している世界や社会は、遅かれ早かれそのままではどうしたって滅んでしまうわけ。

ましてや多数決ですらない独裁とか、不正選挙とかで他の意識の体験選択の自由や自治権を確信犯で否定し奪っていたらもっと滅びるのが早くなるのよ

自分が体験を強制する側、支配者側なら大丈夫だとか思ってしまった時点で、そうした意識たちは詰んでいるのよ。

逆の立場になったら絶対嫌だと思うようなことを他の意識に強制してしまった時点で滅びへの道に入ってしまっているのよ」

そんな感じの説明を全知ちゃんから受けて甘太郎は、腕組みをして考え込んでしまった。

そして甘太郎の悲願を実現するために全知ちゃんに質問する。

「でも、じゃあ、あの不自由な世界群は、どうすれば助けれるんですか? どうすればみんなが助かるんですか?どんな選挙制度にすればみんなが助かるんですか?」

すると全知ちゃんはこともなげに即答する。

「甘太郎ちゃん……ちょっと考えればわかることでしょう?

そもそも、どんな選挙制度にしようがみんなの体験選択の自由や自治権を尊重できなければ助からないの。

つまり、選挙制度という仕組み自体が意味ないのよ。

必要なのは、あらゆる体験者の体験選択の自由を尊重できる状態であり、世界であり、社会であり、意識なの。

大事なのは選挙制度じゃないのよ。独裁でも、多数決でも、不正選挙でも、その世界がみんなの体験の自治権を絶対的に尊重するという状態にならない限り、遅かれ早かれそうした世界は存続できなくなるのよ。

その世界を誰もが自分の体験を自分の意志だけで自由に選んで楽しみ続けれるような状態にできるかどうか……なの。

少なくともそうした状態を本気で実現したいという願いすらいつまでたっても持てない者たちは、永遠には存続できなくなるのよ。

だいたい選挙で決まったことなら、その決定がどんなに良心に反したひどい内容であっても従うしかない……とか思ってしまった時点で意識として終わりなのよ。

選挙であろうが、法律であろうが、何であろうが、誰もが自分の体験を自分の意志だけで自由に選んで楽しみ続けれる世界を実現するという大義を明らかに否定するようなことには、自由な意識として生き残りたいなら従ってはならないのよ。

だからね、どうしたらみんなが助かるかって質問だけど、その大義を否定せず、その大義を積極的に推進し実現させようとする意志を自発的に持てない限り長い目で見れば誰も助からないの

だってそうでしょう? この大義の逆の誰もが自分の体験を自分の意志で自由に選べないで苦しめられ続ける世界や状態を実現してしまったら誰も助からなくなるんだから」

全知ちゃんは、そのような説明を甘太郎にした。

甘太郎は、全知ちゃんの説明を聞いて、なんだかめまいがしてきた。

じゃあ、不自由な世界で平和的な方法で世界を良くしようとして選挙活動をがんばってしていた人たちは一体どうなってしまうんだろうと心配になってきた。

甘太郎自身も、不自由な世界ではせっせと世界平和実現を目指して選挙活動をしていた時期もあったのだ。

全知ちゃんの説明をそのまま受け取れば、自分の未来も消滅してなくなる……ということになってしまうと思った。

当然、甘太郎は納得できない。

平和な世界を目指してがんばって選挙活動をしているのに何で滅ばなきゃならないんだ……そんなのおかしい!と思った。

甘太郎のそうした気持ちを察した全知ちゃんは、言う。

「そうね、確かに平和な世界を実現しようと目指して選挙活動を真面目にがんばっているのに、遅かれ早かれその世界ごと消滅してしまうなんておかしいと感じるのは理解できるわ。

でもね、そもそもそうした多数決制度自体を諾々と受け入れてしまっていることが問題なの。

それってつまり悪党たちの創り出した悪い制度を肯定してしまっていることになるのよ。

例えば、悪党たちの世界や組織があって、そこでは悪党たちの作った制度やルールがあって、さも多数派にさえなれば悪党たちの支配を終わらせることができると思わせておいて……実は、それは見せかけの希望でしかなくて、絶対に悪党側が多数派になるように仕組まれていて、少数の良い心を持った者たちの当然の平和的な自治権や体験選択の自由などの権利を自己否定させるための罠や仕掛けだったりするわけなのよ。

悪党たちのボスたちにすれば、しめしめしてやったり……うまく騙せた……みたいな感じでね。

今まで独裁だと独裁者である悪党のボスやその部下たちが、多くの魂たちから恨まれたり憎まれたりして否定されていたのが、多数決制度という仕組みだと、さも悪いのは多数派の意志に従わない者たちだと思わせることができるわけね。
そうやって世界を平和にしたいのなら、皆を説得して多数派になればいいだろうと言うわけ。

でもすでに悪党たちは、世界の過半数よりはるかに多くの者たちを自分たちの奴隷や家畜や操り人形やペットのようにしてしまっていたりするわけ。また最悪いくらでも不正ができるようにしていたりするわけ。つまりははじめから多数決では絶対勝てないような状態にしてあるわけ。

つまりはじめから不当な世界支配にノーという意志を持っている良心的な者たちは絶対に多数派になれないようになっていたりするわけなのよ。
そして多数決は皆の意志や願いを最大限に尊重するための良い制度だと言いながら、平気で不正選挙なんかもしたりするの。

例えば全人類の半分以上を悪意ある世界支配者の完全な操り人形にしてしまえば、多数決という制度は、ただの悪意ある世界支配者の独裁と同じことになってしまうのよ。

そしてさらにね、甘太郎ちゃんのいた不自由な世界の肉体というものは、本人が合意していなくても操り人形に好き勝手にできてしまうような不当な設計仕様にはじめからされていたりするのよ。

ちょっと多数決制度から脱線したけど、多数決制度を受け入れるという選択は、つまりは利己的で魂たちの体験選択の自由や自治権を認めない悪党世界支配者たちのダメ世界支配行為をそんな感じで騙されて自ら受け入れてしまっていることになるわけね。

完全に悪党世界支配者たちの土俵の上、手のひらの上で騙されて踊らされているような状態になっていたりするわけなのよ。

世界平和を本気で求めるのなら、多数決制度なんかで実現しようなどと思わずに、逆に多数決制度を否定して「あらゆる体験者に体験選択の自由と平和的な自治権を提供する世界を実現すること」と悪党世界支配者たちに命じる必要があるのよ。
その自由意志で、多数決で少数派で負けたのだから仕方がない……などと思わないで、そう命じる必要があるのよ。
騙されて、自分から負けを認めて従わなきゃしょうがない……なんて思っちゃいけないのよ。
たった一人でもその他全員が明らかに倫理的に間違ったことを選択していたら、ちゃんとその間違いにNOの意思表示をその自由意志でして、正しく自分の自由意志を行使する必要があるのよ。時空を超えた意志の世界では不正はできないんだから。

さっき説明した不自由な世界の肉体が操り人形にされている設計仕様にされてしまっている話が重要なのは、不自由な世界の肉体という体験感受装置が、ありとあらゆる拷問体験が強制できる拷問体験強制装置になってしまっていて、そのように命じる意志を拷問や不幸や快楽や誘惑……などで簡単にへし折ってしまえるようなダメ仕様になっているからなのよ。

そんなダメ仕様のほとんどの者が支配者都合で簡単に操り人形にされてしまうような肉体に意識たちが呪縛された状態で、多数決制度なんかを良い制度だなんて思わされてしまっている状態は、致命的な状態だと私たちは判断しているのよ。

その状態は、9割以上が悪党支配者の完全なロボット状態の世界で、多数決で不自由な世界を悪党世界支配者から解放しよう……みたいな状態に似ているわ。

不自由な世界のほとんどは、そんな感じで、独裁より多数決の方がいいと思わせることで、本当に選ぶべき選択を見誤るように騙しているわけなのよ。そうして自分たちに向けられる不満を狡賢く回避したりしているわけ。

そしていざ本当に多数決で悪党世界支配者の支配権力が失われそうになると、平気で不正選挙もするし、暗殺もするし、わざと戦争なんかも計画的に起こすし、どんな狡く汚い手を使ってでもその支配権力を持ち続けようとしたりするわけなのよ。

そして、その結果……少数の良心的な者たちが延々とひどい目にあうような世界になってしまって、そのひどい体験の中には、多数派の大衆が少数の良心的な者たちに、多数決に従わない者が悪いのだ非難される体験なんかも含まれるのよ。

どんな良心的な主張があっても、とにかく多数決で決めたルールに従わないのは法律違反で悪い奴だ!とね……悪党支配者たちだけでなく、悪党支配者にそうやって騙されている大衆たちまで本気で良心的な者たちを否定するわけ。

そうしてそうした不自由な世界では、どんどんと魂たちの良心=他者の体験を自分の体験だと思うことができる能力 が殺されてゆくの。

飴体験と鞭体験を故意に使い分けて、利己的な悪党支配者たちが自分のイエスマンを手に入れようとする行為が超時空世界では犯罪行為だとされていることは、すでに何度も説明したけど、それ以外にもそうした多数決選挙制度なんかもそんな感じで悪用されているのよ……不自由な世界群ではこうした狡賢いやり方はよくあることなのよ。

つまり、独裁であろうと、多数決制度であろうと、その他どんな制度であろうと、あらゆる魂にとって良い結果を生み出さない制度はすべて肯定して受け入れてはだめなのよ。

そしてあらゆる魂にとって良い結果というのは、

「あらゆる魂が自分の運命や体験や世界を自分の自由意志で自由に選んで楽しみ続けれる状態を実現すること」なのよ。

他者の運命や体験を他者の心からの合意もなく好き勝手に自由に支配操作できるようにするのではなくて、あくまでそれぞれの体験者自身が自らの運命や体験だけを自由に選べるようにすることなのよ。

不自由な世界群の支配者たちは、他にもいろいろな手練手管を駆使して魂たちを騙しているけど、結局、この「あらゆる魂にとって良い結果」を実現できていないから滅びてしまうの。
その真逆の状態を推進して実現してしまっているから、滅びてしまうの。

他者の体験の自己決定権を否定し、平和に不当な支配を受けずに生きたい願う平和的な自治権を否定し、それゆえに自業自得となって自分たちの運命や体験の自己決定権を否定され、その平和的な自治権も否定され、その結果、そうした体験者に無条件に与えられるべき権利を無意識的にであれ、意識的にであれ、確信犯で否定してしまう者たちばかりになった世界はことごとく遅かれ早かれ滅びてしまうのよ。自業自得でね。

だからね、そうした状態の不自由な世界では、そうした罠や仕掛けを見抜いて悪党世界支配行為を肯定しないようにしなければならないのよ」

こんな感じの延々と続く全知ちゃんの辛辣な説明にしびれを切らして甘太郎が叫ぶ。

「ちょっと待ってくださいよ! 僕も今は超時空体験図書館に意識を置かせてもらっているから、そうした話が理解できないわけじゃありませんけど、不自由な世界にいた時の僕や僕の友人たちは、とうていそうした罠を見抜けるような状態じゃなかったと思いますよ。
全知さんは、そうした不自由な世界の不自由な状態にある人たちの不自由さがわかっているのなら、ちゃんと全員に多数決制度とかはそうした罠になっているんだって教えてあげるべきじゃないですか?!

僕だけに今更そんな説明をして……なんで不自由な世界にいた時にそうした説明をみんなにしてくれなかったんですか?」

全知ちゃんは、甘太郎のその指摘ちに、うっと、たじろいだ。

「そ、それは……魂たちが自力でそうした狡い罠に気づいて欲しかったのよ……」

甘太郎は、全知ちゃんのそのちょっと後ろ暗いところがある気持ちを敏感に察知し追撃する。

「そもそも全知さんのそうした説明を聞いていれば、みんな騙されなかったんじゃないですか?なんでそんないかがわしい罠を知性レベルが超時空体たちより圧倒的に低い人間族が、そんな不自由な状態で自力で見抜かなきゃならないんですか?

ひょっとして全知ちゃんは、わざと千尋の谷に我が子を突き落して這い上がってこれる子だけを育てるとか言われている肉食動物族の一部なんかと同レベルなんですか? そういうのはあまりにも残酷すぎるんじゃないですか?」

全知ちゃんがめずらしく甘太郎にダメ出しされてしまう。

さすがに誰にでも甘い甘太郎でも、超時空体験図書館に意識を置いているので、超時空体の落ち度もあざとく見抜いてしまうのだ。

みんなを助けるため…という大義のためには、超時空体相手でも、ひるまないのが、甘太郎のすごいところでもある。

ムゲン一族のありとあらゆる個性を持った分身体たちは、「へー!」などとその問答に興味津々だ。

珍しく全知ちゃんは黙り込んでしまった。

「どうせ、あれでしょう? 全知さんたちは、魂のお勉強のため……とか思っているんでしょう?

ですけど、超時空体験図書館の体験記録を調べたら、その過酷すぎる魂のお勉強のために精神的なトラウマとなって逆に廃人というか、廃魂みたいになってしまった魂が、膨大にいるじゃないですか!

その責任をどう取るつもりなんですか?

そもそも、なんで魂のお勉強をフリースクール型にしないんですか?

なんで魂たちに無理やり強制的に過酷なお勉強などをさせようと思うんですか?

ほら、この不自由な世界でも、あの不自由な世界でも、魂たちは過酷すぎるお勉強の結果、良心を失って悪党たちに何でも従う奴隷や家畜や操り人形やペットにされてしまっているじゃありませんか!

良い結果じゃなくて、悪い結果がこれほどまでに発生しているのに、なんで強制的な魂のお勉強方法を体験者たちが自分で望むお勉強を自由に選べるように改めないんですか?

そんな世直しくらい全知全能に近い超時空体たちなら簡単にできるはずでしょう?」

甘太郎の穢れない真心から出たそうした指摘に全知ちゃんが苦し紛れに言い訳する。

「だって……フリースクール型にしたらいつまでたっても好き勝手に遊んでばかりでお勉強しない魂がいるから……」

「全知さん、みんなが好き勝手に遊んでばかりいられる世界を実現して何がいけないんですか?そうした世界や状態が実現してはいけない理由があるなら説明してください!」

「だってみんなが好き勝手に遊んでばかりだと世界の守り手があんまり育たないんだもの……」

「ちょっと待ってくださいよ。全知さんは、一体、どの世界の守り手が必要だっていうんですか?

世界はちっとも守れてないじゃないですか!

不自由な世界は滅びまくっているじゃないですか!

世界を守る必要があるというのなら、当然、不自由な世界を自由な世界に改める義務が超時空体たちにはあるんじゃないですか?

その義務を果たさないと自業自得で超時空体たちの世界もこの先滅びてしまうんじゃないですか?

自力で改めれない不自由な世界や魂は、ただ滅びればいいというのはどうかと思いますけど、超時空体のみなさんは、どう思っているんですか?」

甘太郎の真剣な問いに全知ちゃんは、

「ただ滅びればいいなんて思ってはいないわよ。だからこうしてアドバイスしているでしょう?」

と言う。

「いいえ、全知さん、そうしたアドバイスをしても良心的な魂がすでに圧倒的に少数派になってしまっている不自由な世界では、それだけでは不十分でしょう?

圧倒的な支配権力をあらゆる方法で樹立してしまっている残酷な悪党世界支配者たちに対して、不自由な肉体と不自由な精神しか持たない圧倒的少数派の良心的な人間族だけで世直しができるわけないじゃないですか!

ほら、この超時空体験図書館にある体験記録は何ですか? 良心的な魂たちが膨大に不当に殺されてしまっているじゃないですか!

こんなこと僕が肉体を持っていた時には、知らなかったですけど、とんでもない数の酷い拷問体験なども強制されていますよ。

何の罪もなかったのに……

まさか、超時空体たちは、こうしたことを見て見ぬふりをしてきたんですか?

だったら、超時空体たちも、自業自得で超時空体よりもより強い存在が現れて酷い目にあわされても、それは必要なお勉強だとか言われて……助けれても見て見ぬふりをされて助けてもらえない未来に進んじゃうんじゃないですか?」

甘太郎は、超時空体験図書館の過去現在未来の記録を超高速で知ることができるようになったために、超時空体たちの問題点を見つけてしまった。

甘太郎は、さらに言う。

「そもそも、体験者本人の合意がない望まれていない酷い体験の強制行為をすべて魂のお勉強という理由でそれで良しとする価値観は、悪党支配者がどんな酷い体験であっても好き放題に自由に魂に強制していいという価値観と同じじゃないですか!

表現が違うだけで、深くその意味を考えれば、実質的には完全に同じ意味になるでしょう?

ただ魂のお勉強だと言えば、相手の合意を無視して魂に何をしてもいいなんて価値観じゃ全然駄目じゃないですか!

悪党世界支配者を全知さんは、否定していますけど、悪党世界支配者が大喜びするような価値観を全知さんも持ってしまっているんじゃないですか?

そんなおかしな価値観を持っていて、みんなが楽しめる安全な未来に到達できるんですか?

悪党世界支配者たちが、魂たちを酷い目にあわせて拷問するのは全部魂のお勉強だからそれでいいのだ……などと言われますよ。

一体、何のためのお勉強なんですか? 誰のためのお勉強なんですか? 体験者本人が、望んでいない酷い残酷体験を強制することは、あるいは未必の故意で酷い体験の強制行為を放置することは、少なくとも体験者本人が望んでいない以上、体験者本人のためではないですよね。

何のための、誰のためのお勉強なのか、説明してください!」

超時空体験図書館の過去現在未来の全体験記録を知る者同士となると、うかつなごまかしの説明はできないようで、全知ちゃんは返答に窮し始める。

「いろんなケースがあるから……」

などと全知ちゃんは苦し紛れに言うが、そのいろんなケースを甘太郎は超時空体験図書館の記録から一瞬で知り、すかさず反論する。

「いろんなケースがあるのはわかりましたけど、そもそもどのケースであっても、あらゆる体験者が自分のお勉強を自分で自由に選べるようにしておきさえすれば、何の問題も発生しないじゃないですか!

そもそも、その 魂のお勉強という言葉は、魂の体験する体験 という言葉と同じ意味でしょう?

お勉強と言うからさもそれが必要なことのように聞こえますけど、結局そのお勉強というのは魂が体験する体験でしかないじゃないですか!

超時空世界での守るべき唯一のルールは、「あらゆる体験者が自分の意志で自分の運命や体験を自由に選んで楽しみ続けれる状態を実現すること」だったはずですよね。

であれば、魂のお勉強の強制、あるいは未必の故意での望まれない体験の強制行為の放置の態度は、このルールに反しているんじゃないですか?
明らかに反していますよね。

全知さんたちは、自分が一番嫌だと思う体験をお勉強だと言われて好き勝手に強制されてもいいんですか?」

甘太郎のみんなを助けたいという一心が超時空体験図書館につながって、とうとう全知ちゃんの持っていた魂にはお勉強が必要という価値観を突き崩し始めた。

とうとう全知ちゃんは、自問自答しはじめた……

「だって……魂がぜんぜんお勉強しなくなったら世界がおかしくなってしまうじゃない……

でも、フリースクール型にして魂たちが自由に自分が味わいたい体験を選べるようにしたら、魂がぜんぜんお勉強しなくなるかどうかなんてわからないのか……

いろんな魂がいるから、いろんなお勉強をしたがる魂もそれなりにはいるかしら……多分そこそこいるでしょうね……

だったら、別に無理やり魂のお勉強を強制しなくてもお勉強したい魂だけがお勉強できるようにしても問題ないかもしれないわね……

世界の進化は遅くなるかもしれないけど、進化が遅くなって困る魂がいなければ問題ないわよね。超時空世界では、時間なんて無限にあるんだから。

魂たちがゆっくり楽しみながらそれぞれの望むペースで進化していっていけない理由はないか……

でも、自業自得でひどい目にあうような体験の無限ループとかが発生したら困るから、さすがに放置はダメだわ……

あれ? わたし……なんで魂のお勉強は強制されてもしょうがない……なんて思ってたんだろう……」

全知ちゃんの自問自答を聞いていた甘太郎がその自問自答に応じる。

「全知さん、魂のお勉強を強制してよいのは、あくまでどう説得しても他の体験者が望まない体験を強制し続けるようなケースだけですよ。つまり自業自得となる場合だけですよ。

それと、超時空体験図書館の体験記録からわかるのは、どう説得しても他の体験者が望まない体験を強制し続ける魂の多くが、そうしたくなる本能や欲望が強制的に与えられているからなんですよ。

だから、自業自得学園に送る前に、そうした悪い本能や欲望からその魂を完全に自由にしてあげる必要があるんです。
そして、そうした完全に自由な状態であっても、悪いことを確信犯でやり続ける魂だけを自業自得学園に送るように改める必要があると思います。

今までは、ただ悪いことをしたということだけをもって自業自得学園送りにしていたケースが多々見られますけど、誰かに悪い本能や欲望や感情や気分や……を強制的に植え付けられているようなケースでは、まずはそうした悪い欲望などからその魂を完全に自由にしてあげる必要があるんじゃないでしょうか?

その悪い欲望をそうした欲望から完全に自由な状態で自分の意志で計画的に積極的に選んだわけでなければ、そうした悪い欲望を強制的に植え付けられた犠牲者であると理解すべきではないでしょうか?

そのようなケースでは、自業自得学園送りではなく、そうした悪い欲望を苦痛なく取り除く治療を体験者本人の希望があれば提供すべきではないでしょうか?」

全知ちゃんは、唖然……という感じで甘太郎を見る。全知ちゃんの高度な知性が、反論を思いつけない。

その全知ちゃんの気持ちは、超時空体一族や超時空聖体たち全員が同時に感じていた。

超時空体たちは、超時空体同士の互いの体験を共有できる。

甘太郎のみんなを助けたいという一心が、こうして、超時空体一族全体の心に新しい価値観が必要だと思わせはじめた。

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