あらゆる体験者たちに完全プライベート世界を提供する必要性

ムゲンは超時空体験図書館から持ち帰った理解をもって不自由な世界にある体験の自治権推進委員会に伝書をしたためていた。

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★あらゆる体験者が自分の意志だけで自分自身のあらゆる体験を自由に選び楽しみ続けれるように目指すこと

※当面、この目標を皆で目指し、この目標を世界の最高法規として高らかに掲げ広告すること。

※そのために、完全な体験の自治権をあらゆる体験者に提供し、選べる体験の選択肢を時々刻々より良い状態に向けて進化させてゆくこと。

※完全な体験の自治権を提供できているかどうかは、超時空体たちに認められなければならない。

※まずは、あらゆる体験者が、独立した自由意志をしっかりともてるようにすること

※また、選択可能な体験についてのできるだけの正しい理解をしてもらい、体験選択において発生すると予測される各種のリスクやメリットもできるだけ伝えておくこと

※その上でその自由意志での体験の選択を不当に妨害しないようにすること

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ここまで書いて、うーん、とムゲンは悩む……

これだけでは、まだ何か不足しているような気がしてならないのだ。

何だろう…と考える。

誰もが自分の体験を自由に選べればそれだけでいいはずなのだが……何かが不足している気がするのだ。

ムゲンは自分が自由にお好きな体験を選べるバイキング料理店を空想してみた。

シュミレーションだ。

ムゲンの前には、色とりどりの料理が並んでいる。お寿司があったり、ハンバーガーがあったり、焼き鳥があったりする。

ん? と思う。

確かムゲンの分身体の中にはベジタリアンというか、ビーガンの分身体もいたな……と。

たしかあやつは、動物たちの体験の自治権を奪いたくないのでそうした食事をずっと続けていると言っていた。

とすれば、あやつはお寿司もお魚のやつは食べれないし、ハンバーガーも食べれないし、焼き鳥も食べれないということになり、食べるものがないというケースもあるということになる。

そんなケースも想定しておかねばならないのだとムゲンは気づく。

いくら食べれる料理の選択肢がたくさんあっても、その料理を作るのに動物などの体験者の体験の自治権を奪っていたらダメだという問題があった。

さらに、そうでない場合でも、すべての料理に何かしらの毒物が混ぜられていたりすれば、それも問題だと気づく。

これは致死性の毒が入っている料理、これは致死まではいかなくとも半身不随になる料理、これは精神がおかしくなる薬が入っている料理、これは世界支配者の家畜や奴隷や操り人形やペットになりたくなる薬物の入った料理……

そんな感じの料理ばかりをずらっと並べられて、さあ選択の自由がありますからどれかの料理を食べてくださいね……などと言われても、それは困る。

だから、まあ、選択できる料理には毒物やいかがわしいものは入っていないようにしなければならないなと思う。

ただ目の前の体験からどれかを選べればそれでいいじゃないか……ではまだまだ不十分不完全だったのだ。

そして問題は、じゃあ、どの料理にも毒が入っていると思えば、食べない選択をすればいいじゃないかと思っても、食べないと今度は飢え死にしてしまう……ということになると、もうこれはダメだ。

であれば、どうしても絶対安全地帯というか、聖域というか、そういう感じの選択肢が誰もに確保されているべきだろうと思う。

例えば、自分の部屋に自炊道具と健康に悪くない基本食材が常備されていて、何も無理して毒入りが混じる可能性のあるようなバイキング料理店などに行かなくてもいいような安全地帯があればいいなと思う。

虫の知らせか何かしらの直観でヤバいと思えば、その日はバイキング料理店には行かないで、自炊で済ませることができるようにしておきたい。

そうしておかないと、料理に全部毒を盛られたりしたら一夜にして皆、全滅してしまう。

であれば、基本は皆自炊システムを完備しておいて、オプションの選択肢としてバイキング料理店……という構えがいいかもしれない……などとムゲンは思う。

これは悪くないアイデアだと思う。

この場合、料理をそのまま体験に置き換えれば、いいのだ。

そうなると、誰もが基本、スタンドアロンで望む体験状態を維持できるようにしておくことが必要になる。

そのまま自分の部屋にずっといても不満ではないという状態を提供してやる必要がある。

ただし、もっと楽しみたいのなら、バイキング料理店なり、演劇サークル同好会なり、その他の遊びなどをオプションとして自由に他の体験者との心からの合意をもって楽しめるようにしておけばいい。

そうすれば、彼がいないと、彼女がいないと、親がいないと、子供がいないと、あの友がいないと、あの先生がいないと……がまんならない……つらい……苦しい……などという不孝な体験を回避できるようになる。

また、あの店のアイスクリームが食べれないのはつらすぎる……などという中毒なども回避しやすくなる。

ムゲンは、その絶対安全領域を「プライベート世界」と名づけた。

そこは他の意志からの一切の干渉や検閲が入らない自分だけの安全世界だ。

それがあらゆる体験者にとっての聖域になる。

そしてそこで必要十分に満足できる体験が味わえるようにする。

また、一切の体験中毒が完全に消せる薬や治療アイテムも欲しいところだ。

何かを体験した後に不具合が生じたら体験前に戻れる復元システムのようなものがあるといい……とムゲンは思う。

これは物質世界ではすぐには実現しなくとも、意識世界でならば可能だなと思う。

超時空世界では、確実に可能だ。

そうした自由で安全な仕組みを可能な限り、不自由な世界にも導入してゆけばいいんではないかと思う。

また、もう一つプライベート世界が必要だと思う大きな理由があった。

それは、いかに体験者たちが成長していっても互いの好みや趣味や価値観が全く他の体験者と同じにはならないという問題だ。

例えば、人参が好きな体験者もいるし、嫌いな体験者もいることだろう。

映画でも恐怖映画が好きなタイプもいれば、恋愛映画が好きなタイプもいる。

そこでもし恐怖映画が好きなタイプが恋愛映画を好きなタイプをそんな映画見るなと批判しはじめたり、その逆が発生すると面倒なことになる。

超時空体様たちが言っていたように実際にリアルで体験の自治権が奪われるようなことがなければ、ただ映画を見ているだけであるなら、そうした場合はそうした映画鑑賞をする楽しみを否定しあわない方が互いにとって良いのだということをムゲンは思い出したのだ。

完全なプライベート世界で外部からの一切の干渉や検閲がなければ、そのプライベート空間で誰が何をしているのかわからないので、自分が嫌いだからという理由で他者の映画鑑賞を否定することもなくなるわけだ。

例えば丸裸になるのは公共の場ではちょっと問題だという場合でも、完全なプライベート空間ならなんら問題がないのと同じだ。

ムゲンはこうしたプライベートでの体験の自由の尊重は結構大事なことだと思ったのだ。

日記を書く場合でもそうだろう。皆に見られたくないと思ってプライベートに書いている日記帳を無理やり部屋に侵入してのぞき見して、その内容についてわざわざ否定するなど、どう考えてもモラルがある行為ではない。

そんなことを体験者たちが互いにやりあえば、生きづらい世界になるばかりだ。

よってそうした観点からも完全プライベート世界は体験者たちに必要不可欠だとムゲンは思った。

不自由な世界の支配者たちは、おそらく嫌がるだろうが、どうしてもそうした干渉行為や検閲行為をしたいというのなら、世界支配者たちのプライベートもすべて皆に公開し、同じ基準で干渉行為も甘んじて受けるべきだろう……と思う。

であれば、どういう場合には干渉してもいいのかなどの共通基準などまでいちいち決めねばならなくなる。
しかし、そんなことをすれば、無数にいる体験者たちの好みが違っている場合、いつまでたっても皆が良しと思える良い基準には到達しないことになる。
しかも、体験者たちは体験とともにその好みや願望も変化してゆくので、これでいいのだとやっと基準が決めれても、その後多くの体験者がその基準とずれた願望や好みを持ち始めることは目に見えているのだ。

子供の時の願望や好みと大人になってからの願望や好みと老人になってからの願望や好みでは、ぜんぜん内容が違ってしまっているなどよくあることだからだ。

まあ、そういう理由で、体験者たちへの完全プライベート世界の提供を否定しようと目指す世界支配者たちの目標や価値観には倫理的にも実際的にも絶対に無理があるとムゲンは理解していた。

だからどうしても完全プライベート世界はあらゆる体験者に提供すべきだと判断した。

超時空体の講師様は、不自由な世界をあらゆる体験者に完全な体験の自治権が提供されている状態にするには0から新世界を創造するより難易度が高い……などと言われていたが、それは完璧を求めるからであって、マイナス点を0点に、0点を10点に、10点を30点に……してゆくくらいのことならば、物質世界でもできるだろう。

体験の自治権推進に向けて、できるだけ前向きに進むというだけならば、いくらでもできることがある。まずはできることをやればいいのだ。絶対にできないことはできないわけなので、かの不自由な世界を改革するためには選択肢はそれしかないともいえる。

であれば、やれることをできるだけやればいいだけだ。

そもそも体験者たちの体験の自治権を奪うような毒物質を食べものや空気や飲み物に入れたりすることはやめなければならない。

拷問体験強制装置になっている肉体という代物も、そうではない体験をただ自由に楽しむだけの装置に変えてゆけるものならば変えてゆくべきだろう。

わざと肉体や精神を病気にするようなことは、今後、止めさせる必要があるだろう。

いずれも体験の自治権を奪う行為になるからだ。

超時空体も言っていたが、そもそも完全な体験の自治権が提供されていれば、体験者は悪いことなどしなくなるのだ。
あらゆる体験者たちが悪い欲望を自分の意志だけで自由に消せるように目指すべきであり、そのためにはそうしたことを可能にする良い薬や体験者たちの心の啓蒙活動が必要だということなのだから、そうした分野の研究なども有志たちで動物実験などはせずに自分たちの肉体と精神を使ってしてゆけるといいだろう。

そもそも悪い本能や欲望は、わざわざそうプログラムされたものなので、悪い欲望を消せる技術はあるのだ。

その体験の自治権を推進するための治療薬が必要なのであって、体験の自治権を奪うタイプの毒投与などはやめる必要があるだろう。

★完全な体験の自治権の提供や推進をひたすら皆で目指すこと

そのために体験者が各々スタンドアロンで使える一切の干渉や検閲のない安全なプライベート安全地帯の実現と提供

また、体験の自治権を奪うような世界支配行為や犯罪行為はやめてゆくこと

まとめるとこうした内容になった。

ムゲンはまだ追加があるかもしれないと思いつつも、とりあえずそうした内容を体験の自治権推進委員会に向けて送付した。

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★あらゆる体験者が自分の意志だけで自分自身のあらゆる体験を自由に選び楽しみ続けれるように目指すこと。

※当面、この目標を皆で目指し、この目標を世界の最高法規として高らかに掲げ広告すること。

※そのために、完全な体験の自治権をあらゆる体験者に提供し、選べる体験の選択肢を時々刻々より良い状態に向けて進化させてゆくこと。

※完全な体験の自治権を提供できているかどうかは、超時空体たちに認められなければならない。

※まずは、あらゆる体験者が、独立した自由意志をしっかりともてるようにすること

※また、選択可能な体験についてのできるだけの正しい理解をしてもらい、体験選択において発生すると予測される各種のリスクやメリットもできるだけ伝えておくこと

※その上でその自由意志での体験の選択を不当に妨害しないようにすること

★完全な体験の自治権の提供や推進をひたすら皆で目指すこと

そのために体験者が各々スタンドアロンで使える一切の干渉や検閲のない安全なプライベート安全地帯の実現と提供

また、体験の自治権を奪うような世界支配行為や犯罪行為はやめてゆくこと

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送信後に、ムゲンは講師様のお話を思い出して、

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★今いる不自由な世界が自由な世界に進化するのがどうしても待ちきれない方で、超時空体たちの体験自由自在の世界に心から全身全霊で行きたい体験者は、その願書をテレパシーで送付してください。

ちなみに、地獄は論外ですが、天国というところに行けたとしても、どうやら完全な体験の自治権は手に入らないらしいです。

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と追伸した。

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