滅びを回避した後の世界の変化
甘太郎は、まさか超時空聖体たちがそんな決断をするとは思っていなかった。
甘太郎には、超時空世界を消滅させようなどという気はさらさらなかった。
しかし、みんなを救うためには、世界の始まりの地点まで時を戻して世界を作り直さなければならないと理解してしまった。
そして、甘太郎は、そのためなら自分が死んでもいいと覚悟していた。
その甘太郎の理解や覚悟を、以心伝心、超時空聖体たちは理解してしまった。
超時空聖体たちは、それを理解してしまった以上、知らなかったことにはできない……
超時空体験図書館に選ばれた甘太郎に時を戻してもらって、不自由な世界群も超時空世界も消滅することであらゆる体験者が救われる……
超時空体たちにあらゆる体験者たちのために死ぬ覚悟がないのなら、そうした甘太郎の願いを否定することはできない。
超時空体や超時空聖体のすべての特権や特殊能力や記憶を捨てて、まっさらな体験者として甘太郎の思い描く本当の自由がはじめからあらゆる体験者に提供されている新世界に無垢な体験者として生まれる……
あらゆる体験者が、そうした本当の自由を得た状態で同じように無垢な体験者となる……
その世界の始まりの地点に記憶や意識を保ったまったまま戻ることができるのは、甘太郎と同じ理解と覚悟を持っている意識だけとなる……
超時空聖体たちは、そうしたことを一瞬で理解した。
そして超時空体たちも、少し遅れてそのことを理解した。
ならば、全身全霊で命がけで改めるしかない……
そうした覚悟のある者しか、新世界の創造者になれない……
ならばリスクは同じだと超時空体たちは理解した。
今の自分たちとその世界が消滅するリスクと不自由な世界群を自分たちが強制治療することで自らも何者かに強制治療される自業自得の責任を背負うリスクとを比べれば、まだ強制治療のリスクを選ぶ方がいいと超時空体たちは思った。
超時空世界の存在たちは、不自由な世界群の者たちにと比べて圧倒的に自由でかつ不自由な世界に対してはほとんど全知全能に近かった。
ただ、その能力をうっかり間違って使ってしまうことで、自らの自業自得の責任が問われることを恐れていた。
しかし、不自由な世界群を放置し何もしなければ超時空世界ごと消滅してしまう……ということならば、もはやそうした全知全能的な力の誤用を恐れている場合ではないと理解した。
超時空体たちは命がけで不自由な世界群を治療する決断をした。
こちらを立てればあちらが立たず……そんな問題が無数に存在している不自由な世界群……
自業自得で自己否定となる無数の悪い本能や欲望や価値観や制度やルールが膨大に存在する不自由な世界群……
超時空体たちは、今まで放置していた弱肉強食の生態系に対して治療を始めた。互いを殺して食べたくなる邪悪な生命たちの本能をその特殊能力を駆使して取り除き始めた。
他の有機生命体を殺して食べなくとも満足できるように本能に設定されていた残酷なプログラムを書き換えた。
あらゆる生命は、何もしなくとも空腹になることもなく、渇くこともなく、耐えがたい苦痛も発生することがないようになった。
あらゆる生命たちは、何も食べなくとも、飲まなくとも、呼吸することすら必要なくなり、その状態で心から満足できるようになった。
さらに、あらゆる魂がそう願いさえすれば、自由にその肉体から離脱してより自由な意識世界や超時空世界を自由に体験できるようにされた。
肉体という体験強制装置の拷問体験強制システムが超時空体たちによってすべて無効化された。
「本当の自由」があらゆる体験者に提供され始めた。
それを阻止しようとする不自由な世界群の支配者や創造者たちは、すべて超時空体たちによってその阻止しようとする意志や妨害する能力を消された。
権力ピラミッドは瞬く間に消滅した。
今まで人間族に憑依して人間族を好き勝手に操り支配していた邪悪な意志を持った霊的存在たちは、憑依されている者との完全合意ができている邪悪な意志を持っていない憑依霊以外、超時空体や超時空聖体たちに追い出された。
そのかわり超時空体や超時空聖体やその分身体たちが、良きアドバイザーとして憑いた。
それによって人間族たちは飛躍的に良心的になった。
そしてその結果、人間族のほとんどが不自由な世界を自由な世界にするために活動するようになった。
超時空体たちが人間族全員に本当の自由を与え、必要な良きアドバイスを徹底的にしたために、人間族の社会はありとあらゆる部分が改められた。
多数決だとか、独裁だとか、不正選挙だとかはすべて完全に消滅した。
政治家という存在も消滅した。お金というものも消滅した。
超時空体たちが、不自由な世界群を完全統治することで選挙や政治などが一切必要なくなり、超j空体たちによって体験者たちが気持ちよく生きるのに必要なものはすべて無償で提供しはじめたのでお金など必要なくなった。
こうして人間族すべてが、嫌な仕事をしたり、働かねばならないということがなくなった。
あらゆる体験者たちが、そう望めばいつでも意識体として肉体から自由になることができるようになり、物質世界以外のより自由な世界を楽しめるようになった。
超時空聖体たちは、自ら創造した素晴らしい世界の素晴らしい体験楽園を、惜しみなく参加希望者にプレゼントしはじめた。
あらゆる良きものが惜しみなく不自由な世界の体験者たち全員に提供されはじめた。
悪い欲望や本能や気分や感情や価値観は、体験者たちが望めばいつでも消してもらえるようになった。
悪い欲望や本能や……を消されたくないという者たちは、超時空聖体たちの創造した隔離された世界で、悪い欲望が満たされて満足する夢を見れるようになった。
その夢体験は、リアルでの体験と同じと感じるようになっていた。
超時空体たちは、強制的な魂のお勉強というものをすべて廃止することに決めた。
よってあらゆる願いが一切のリアルの犠牲者なく完全に満たされるようになった。
超時空体たちにはそれができる能力があったのだ。
特に超時空聖体たちは、そうした能力が高かった。
物質世界の肉体という体験装置と体験システムにプログラムされていた原因と結果の設定を無視して、体験者の望む満足体験を直接提供することができたのだ。
超時空体たちは、その体験装置や体験システムのプログラムを自由に書き換える能力を持っていた。
それはゲームプレイヤーの能力ではなく、ゲームプログラマーの能力だった。
超時空聖体たちは、どんな体験ゲームであってもいかようにもそのゲームの基本プログラムを書き換えることができたのだ。
魂のお勉強の強制システムが廃止されたために、、ありとあらゆる体験者たちの願う体験をそのゲームプログラマーの能力で提供することにしたのだ。
彼らは体験世界を0からでもプログラムし創造することができた。
彼らが想像できることはすべて実現化することができたのだ。
そしてさらに超時空体験図書館から無数の良き体験記録を引き出してきて、その良き体験を体験者たちにおしみなくプレゼントした。
こうして不自由な世界の物質世界の制限のほとんどが無効化されていった。
物理法則すら書き換えられた。
重力というものが消滅した。時間の一方通行システムが消滅した。それらは体験者たちが自由に選べる選択肢となった。
体験者たちは自分の体験時間だけではあるが、その体験時間を自由に撒き戻しや早送りや一時停止できるようになった。
魂のお勉強世界が、魂の楽園世界に変わり始めた。
望まないお勉強は一切しなくてもよくなった。
他者が関与していない夢世界でならば、ありとあらゆる望む体験を自由自在に楽しめるようになった。
超時空世界が消滅するかどうかの瀬戸際に良きものの出し惜しみはしないこと……と超時空聖体たちが超時空体たちに通告していたためにそうした状態が出現した。。
そして変化が起こり始めた。
惜しみなくありったけの良きものを超時空体たちが不自由な世界群の体験者たち全員に提供しはじめた結果、自業自得の法則によって超時空体たちが次々と超時空聖体に進化しはじめたのだ。
それによって次々と新しい世界がさらに誕生した。
命がけでありったけの良きものをあらゆる体験者に提供することで、そのような変化が超時空体たちの多くに発生したのだ。
背水の陣だった。
体験者本人が望まないあらゆるタイプの遠隔体験操作がなくなった。
電磁波兵器は無効化され、気象兵器も無効化された。
利己的で排他的な価値観を持った不自由な世界の支配者たちの特権力や武力や強制力……はすべて無効化された。
そこにはもはや不自由な世界は存在していなかった。
不自由な世界群は、甘太郎の願いによって破壊的な消滅を回避し、自由な世界に変化することで、消滅したのだ。
そして、今まで他人事として不自由な世界群を見ていた超時空体たちは、理解した。
自分たちが間違っていたのだと……
不自由な世界も超時空世界も、爆発的に変化した。それは氷が水となり水蒸気になるような変化だった。
世界は今までの世界とはまったく違うものとなった。
それが本気で意志されたために……
次第に……不自由な世界群の体験者たちが、意識体に進化しはじめ、さらには超時空体に進化しはじめた。
良き意志が大河のように世界に流れ始めた。
その良き意志は血液が肉体をめぐるように全世界に循環しはじめた。
重い病の病人が奇跡的な回復をするように……世界は滅びを回避した。
その世界は、滅ぶことがなくなり、ひたすら成長し続けた。
良き意志が良き意志を生み出し続ける循環が発生し続けた。
あらゆる体験者が、良き意志をもってそれぞれ独自の世界を創造しはじめた。
誰かに従う必要がまったくない世界が誕生した。
誰もが自分の世界を持てる世界に進化した。
素晴らしい世界や体験が無数に創造され続けた。
さらにその無数の素晴らしい世界や体験を分かち合いはじめ、あらゆる体験者がエンドレスで自由に楽しめるようになった。
その世界では、誰もが心から満足していた。そして満足し続けていた。その満足には終わりがなかった。
その世界では誰一人不満にならないために、その世界は消滅することがなくなった。
みながそうした世界の存続を願うようになったからだ。
甘太郎のみんなを助けたいという願いがそのような結果を生み出した。