甘太郎は、あらゆる体験者たちのための最高最善の新意識世界を創造する決意をした
こうして不自由な世界の世界改革と万が一の不自由な世界の営業停止処分の場合に備えての新意識世界の設計と創造の準備が同時に進められることになった。
そもそもあらゆる体験者たちにとっての最高最善の理想世界を実現する場所や時空間は、超時空聖体視点では、どこでもよかったのだ。
とにかくあらゆる体験者を最終的に最高最善の理想世界に住まわせることができれば、その場所、時空間はどこでもよかったのだ。
だから、超時空聖体たちは甘太郎たちの不自由な世界の体験者全員を救ってあげてくださいという切なる訴えがなければ、できれば自分たちが創造した最高最善の意識世界に全員を移住させる方が手間がかからず楽だと思っていた。
ただ、どうしても他の体験者たちを故意に苦しめたり不当に支配しようとばかりする悪い意志を自発的に改めれない者たちにだけは、必要な治療や教育をせねばならないと思っていた。
だから、不自由な世界の支配者たちによって甘太郎たちの「良き意志」がすべて消された不自由な世界は、荒ぶる超時空体たちによって消されていた。
例えば、不自由な世界群の中には、その不自由な世界にいる体験者全員を操り人形にするための毒兵器を投与していた世界などもあった。
当然、そこには良き意志をもった甘太郎たちも含まれていた。
その結果、良き意志をもった甘太郎たちは全員、不自由な世界の邪悪な支配者たちの意志の操り人形にされて、良き意志を消されて、不自由な世界の支配者たちの道具にされてしまった。
その結果、そうした不自由な世界は、荒ぶる超時空体たちによって運営停止すべき世界だと判断され、消すべき世界だと判断されることになった。
彼らは、良き意志を持った甘太郎たちまで操り人形にしてしまうことで、自分たちが自殺、自滅の選択をしているということに気づかなかったのだ。
「自分自身のために」目指すべき目標を間違ったのだ。
自分の世界にいる自分以外の体験者すべてを完全なる自分の操り人形にすれば、自分は絶対に安全になって何でも好き勝手できるようになると思い込んでしまったのだ。
自分たちの意識世界とは別のより倫理的にも能力的にも圧倒的に進化した意識世界が存在していると理解できていなかったのだ。
しかもその行いはすべて超時空体験図書館が監視し、記録していることにも気づいていなかったのだ。
不自由な世界の支配者たちは、いろいろな方法で説得されたが、その利己的で残酷な世界支配欲を選択することを自制することができなかった。
何としても不自由な世界の支配者として生き残りたい……そんな願いを本気で持ってしまったために、ありとあらゆる似たような不自由な世界の被支配者に転生し続ける運命となってしまった。
超時空聖体たちや甘太郎たちや超時空体験図書館からの再三の説得や提案を無視して、そうした選択をした不自由な世界の支配者たちはそうした運命を得ることになった。
素晴らしい未来を選びたいのなら、自分の意志にこうした良き意志を書き込めばいいのですよ……と超時空聖体に教えてもらっていたのに、そのための答えがわかっていたのに、あえてそれとは違う危険な未来を生きねばならなくなるような答案をその意志に書いて提出してしまったのだ。
その結果、進級不可となり、存続不可となり、運営不可となり、他者を統治管理する自由が剥奪されてしまった。
それが大意識世界の中のとある意識世界の中に存在する宇宙世界の辺境のとある惑星で不自由な世界をこっそりと創造し邪悪なを運営していた不自由な世界の支配者たちの末路であった。
自業自得学園の先生たちは、なんとかそうした運命を逃れようと狡賢く立ち回る不自由な世界の支配者たちを逃さなかった。
捕まえて、一体のこらず自業自得学園に投げ込んだ。
ただ、過去に甘太郎一族に何かしらの良い行いもしていた不自由な世界の支配者の一体は、超時空体験図書館住まいの甘太郎から救いの糸を下ろされた。
その救いの糸は、残酷で利己的な思いを持っていなければ切れることがない糸でできていた。
その糸を伝って登ってゆけば、甘太郎たちが創造したあらゆる体験者たちのための最高最善の理想世界にたどり着くようになっていた。
しかし、残念ながら、その糸を登りきれた不自由な世界の支配者たちは、少なかった。
彼らは、どうしても「他の体験者などどうなってもいい……自分だけが助かればそれでいい……」という思いを消すことができなかったのだ。
あまりにも長い年月……利己的で残酷な世界支配や他者支配を繰り返し続けていたために、簡単にはその倫理的に問題ある性格を変えることができなかったのだ。
そこで超時空体験図書館住まいの甘太郎は、超時空聖体たちに頼んで、「他の体験者などどうなってもいい……自分だけが助かればそれでいい……」という思いが生じる源となっている悪い本能や欲望を苦痛なく取り除く治療をしてあげてくださいと懇願した。
超時空聖体たちは、その甘太郎の必死の懇願を受けて、そうした治療をしようとした。
しかし、不自由な世界の支配者やその部下たちの多くが、その超時空聖体たちからの治療を頑なに拒否してしまったのだ。
その治療を受けるには少なくともその支配特権者の安楽椅子を自らの意志で降りて、超時空聖体たちが運営する治療院に入院しなければならなかったからだ。
彼らは、自分が倫理的な面で病気であると理解できても、なお、その支配者の地位から降りることを断固拒否してしまったのだ。
よって、ほんのわずかな不自由な世界の支配者たちだけが、超時空聖体たちの治療を受けるという選択をしたにすぎなかった。
超時空体験図書館住まいの甘太郎はそのことでたいそう悩み苦しんだ。
もっとみんなを丸ごと救いたい……あらゆる体験者がどんな体験者でも心から満足し続けれる世界があればいいのに……そのための新しい意識世界が創造したい……
超時空体験図書館住まいの甘太郎は知っていた。
自分が想像できる世界はどんな世界でもすべて実現させることができるのだと……
超時空体験図書館に認められ、超時空体験図書館に住むことが認められた甘太郎には、どんなタイプの新しい意識世界でも創造することができる能力が与えられていたのだ。
であれば、想像しなければならない……そして実現化させるのだ……
超時空体験図書館に認められ、そこに住むようになった甘太郎はそう思った。
超時空体験図書館住まいの甘太郎は、すでに超時空聖体と同様の能力をすでに手にしていた。
よって自分の分身体を無数に生み出すことも可能になっていた。
その超時空聖体化した甘太郎は、無数の自分の分身体を生み出し、ありとあらゆる世界にその分身体を送り込んだ。
他の甘太郎一族や超時空聖体たちはせっせと不自由な世界で世界改革を目指し奮闘していたが、この超時空体験図書館住まいの甘太郎の分身体たちだけは、ひたすら新意識世界の設計と創造のための情報収集に専念していた。
不自由な世界の困った問題のすべてを理解しようとし、その問題群を反面教師としてよりよい新意識世界の仕組みを必死に考え模索し続けていた。
また、すでに素晴らしい世界となっていた超時空聖体たちの創造した世界群などにも自分の分身体を送り込んで、その素晴らしい部分を体験し吸収したりもしていた。
ありとあらゆる世界を経巡り、旅し……さらにありとあらゆる世界の図書館や本屋に入り浸り、ありとあらゆる書物を読み漁り、ありとあらゆる映画や漫画やイラストや小説や音楽やゲームをすべて味わい……それらのすべてを超時空体験図書館の新意識世界創造ルームに展開して組み立てたり、分解してみたり、また複合してみたりして……あらゆる体験者が心から満足し続けれる新意識世界の創造を目指して奮闘し続けていた。
「自分があらゆる体験者のための最高最善の新世界を創造しないと、すべての体験者たちを救えない……」
その一念で甘太郎は、ありとあらゆる「不自由な世界」にすら自分の分身体を派遣していた。
虎穴に入らずば、虎児を得ん……
甘太郎の新世界創造メモにはそんな箴言が記されていた……
心配して諫めてくる超時空聖体たちには、
「大丈夫だよ。だって分身体だから……」
と超時空聖体化した甘太郎は応じる。
「分身体でも、苦痛は同じだけ受けてしまうのですよ。何もわざわざわざそうした設定にしなくてもいいではないですか……危険なのでお勧めできません……」
「だってみんなと同じだけの苦しみを味わわないと、新世界の設計に間違いが発生するかもしれないでしょう?」
「でも、その苦しみのために良き意志を消されてしまった甘太郎一族たちがたくさんいるのですよ」
「でも僕には、超時空体験図書館様も憑いていてくれているし、その気になれば自分の身は自分で守れるし、あらゆる世界の現状調査は、あらゆる体験者の最高最善の世界を実現するためには必要なことでしょう?」
「それはそうかもしれませんけど、中にはとんでもなく邪悪な不自由な世界もあるんですから、不慮の事故もあるかもしれませんし、ご無理しないでほしいと私は願っているのです」
「でも誰かがやらなきゃいけないことでしょう?」
超時空体験図書館住まいの甘太郎のそうした答えに、心配していた超時空聖体は目を潤ませて、
「わかりました、どうしてもそのご活動をすると言われるのであれば、せめて私たちからの守護を受けてください。
この、あらゆる悪意を自業自得的に反射する防護服を身に着けてください。
この防護服は、悪意の源を自動追尾してその悪意ある者に自業自得の体験を与える仕組みになっています。
甘太郎さんは、甘すぎるので不自由な世界では高確率で虐められると思いますので、この防護服をどうしても着てご活動してください。
でなければ私たちはずっと心配し続けなければなりません、それにどっちみち甘太郎さんが説得してもどうしても反省しない悪党たちには自業自得の教育的指導をしなければならないのですから……」
このように言われて、超時空体験図書館住まいの甘太郎は、超時空聖体たちを心配させてはならないとしぶしぶその防護服を着用することに同意した。
「でも、僕の分身体がその防護服の能力を発動するかどうかを決めれるようにしておいてくれませんか? その能力を発動したくない時にも自動発動してしまうのは嫌なんです」
「わかりました。であれば、そのようにいたしましょう。ですが万が一ですが甘太郎さんの分身体が殺されたり、その自由が奪われたりした場合には自動発動するようにさせてください。
でなければ、不慮の事故や狡賢い策略に対抗できませんから……」
甘太郎は、超時空聖体たちを心配させるわけにはいかないと、しぶしぶその超時空聖体からの提案を受け入れた。