超時空聖体会議、再び……

全知ちゃんの計らいで、再度の超時空聖体会議が開かれた。

今度は、おごそかな裁判所的な空間ではなく、大きな炬燵に車座になってみかんやお菓子などもつまめる感じでざっくばらんのほのぼの空間で開催された。

さらには、皆さんそれぞれ自分の望む姿に変身しての会議となった。

なぜそうしたことになったかといえば、皆が楽しめるように目指そうという申し出を受けてそうなったらしい。

どうやら超時空聖体たちも遊び心もあるというか、楽しむことは好きなようだ。ちょっと生真面目だけど。

そこで皆でじゃあ、不自由な世界にあるいろいろなゲームというものを遊んでみようじゃないか、遊びながら会議してみようじゃないかという話になったのだ。

なかなか粋な計らいだなとムゲンは感心する。

アドベンチャーゲームとか、シューティングゲームとか思い思いにやりながら会議がはじめられた。

まあ、ほとんど雑談みたいな感じになってしまっている。

せっかくなんでと、有料のオンラインゲームなども皆でやりはじめる。

テレパシーが通じるのでチャット機能とかはなくても大丈夫だった。

裁判長が、せまりくるボスキャラに対して

「ねえ、ムゲン殿、この魔物はどうしてもやっつけなきゃいけないのかい? 助けてやることもできるんだろうか?」

などと聞いてくる。

「裁判長! ゲームの仕様が残念ながらそのボスキャラをやっつけないと次のステージに進めないようになっています!」

とテレパシーで伝達する。

「そんなこともないだろう?」

などとつぶやきながら、裁判長はなんとゲームに自分の意識を送り込んでなんと即時にゲームのプログラムを書き換えてしまった。

「ほら、こうすれば助けてやることができるじゃないか」

などと嬉しそうだ。

「裁判長……そんなのありなんですか……」

ゲームの中のラスボスが裁判長にえらく懐いてしまった。

超時空体あるあるだ。

それを見て他の超時空聖体たちも、我も、わたしもと、次々にオンラインゲームをハッキングして自分勝手にゲームの仕様を変更しはじめた。

どうやらそういうことは日ごろやりなれていて慣れっこのようだ。

自分の世界でいつもそうした手直しをしまくっているのだろう。実に自然体なのがそう感じさせる。

「いいじゃないか、ムゲン君、ほらゲームの中の皆も喜んでくれているんだから」

などと青年の姿をした超時空聖体さんは、誇らしげだ。

なんだか次元が違うなあ……とムゲンは思う。

与えられたルールを無視するだけならムゲンにも心当たりがある……しかし、彼らはゲームの仕様そのものをまるっきり書き換えるのが当然の権利だと思っているようだ。
というかそれが自分たちの役目であり使命だと思っているふしがある。

皆を喜ばせることができるならできることはなんだってすぐにやるぞ……という覚悟というか……そんな感じなのだ。

いやはや、さすがにこの展開は予想できなかったなとムゲンは思う。

ちなみに、すでにムゲンの提案などとっくに知り尽くしている超時空聖体様たちは、体験者たちが自分の欲望とか本能とか種族とか気分とか感情とか夢体験とか……その他の体験を自分の意志だけで自由に選べるようにするということに関しては全然オッケーだと伝えてきた。

あっさりと許可が出てしまった。

というか、

「ただ、そのためには君たちの問題にしている不自由な世界というところの肉体という体験強制装置は手直ししなきゃいけないねえ……」

などとは言われた。

また、例えば種族を自由に選ぶには、肉体から意識体に進化する必要があるらしい。

まあそれもそうだろう……肉体が体験強制装置のままではいろいろダメだというのは理解できた。

もちろん体験強制システムの方も手直しが必要らしい。

政治制度とか経済制度とか教育制度とか、もうかなりありとあらゆるところを手直しする必要があるよとダメだしされてしまった。

その手直しの必要を理解できない魂だけは、その必要が理解できるようになるために自業自得学園でのお勉強が必要なんだという。

まあ、それはもっともな理由だなとムゲンは思う。

そして本人が責任を取る覚悟があるのなら、欲望を自分でオンオフする自由を与えることもできるよと言われた。

ただ、その場合には、一応資格試験が必要になるらしい。

要するに危ない欲望に簡単に飲み込まれて意識を乗っ取られてしまわないかどうかをテストするということだ。

実は、不自由な世界の一部は、その試験場所のひとつになっていたりするのだという裏話などもしてくれた。

まあ、そんなことは受験者たちには内緒なので、前はおごそかな裁判をわざとしたらしい。

はあ? なんだそれ?とムゲンは思う。

ムゲンはしばらく考え込んでしまった。

というのも、ムゲンは日頃から残酷な体験を強制するタイプのお勉強や試験というのは強制しない方がいいと思っていたからだ。

かの不自由な世界に発生している残酷体験は、お勉強のためといっても、明らかにやりすぎだと思えたのだ。

そのことを裁判長に言うと、

「ムゲン殿、お気持ちはよくわかりますよ。うん、我々も残酷な体験を強制したいと思っているわけではないのですよ。しかし、そうでもしないと良い意志がなかなか育っていかないというのがこれまでの経験からわかっているので、やむなくああした世界の存在も容認してきたんですよ」

などと言われる。

「しかし……」とムゲンは食い下がる。

「しかしですね、裁判長、ほら前の判決で状況が変われば、対応も変えてゆく必要があるとおっしゃっていたじゃないですか。

そもそもはじめからあらゆる体験者たちがスタンドアロンで楽しめる個人用のプライベート世界を提供すれば無理やりお勉強なんかしなくてもいいんじゃないでしょうか?

すでに超時空城では、そうしたプライベート世界を皆に提供してうまくいっています。

であれば、それをかの不自由な世界にも提供すれば、あれほどの残酷体験つきのお勉強は必要ないんじゃないでしょうか?

そもそもかの不自由な世界では、私の分身体も他の魂たちもほとんどの魂たちが平和的な自治権すら与えられていませんでした。

それが与えれるのに与えないというのは超時空世界としても問題ではないでしょうか?なんとかしてあげる責任があるのではないでしょうか?

もしですよ、もし、それを放置していいと言われるのであれば、言いたくはないですが、超時空聖体様たちであっても自業自得学園で学ぶ必要があるということにはなりませんか?

そうなると、どうなるんでしょうか?

超時空聖体様たちも、ああいう残酷な体験が強制されるお勉強をしなければならなくなり、さらには、それを助けてあげることができても、放置されてしまうという憂き目にあってしまうのではないでしょうか?」

ムゲンは超時空聖体様たちがそれでいいとしても、残酷体験のお勉強をそれでよしとすることができなかった。

めずらしく超時空聖体たちは即答してこない。

そこでムゲンはぐいぐいとゆくことにした。

「あのですね、裁判長、そのテストというか、試験というか、お勉強もですけど、そういうのはあくまで本人が望んでテストを受けたいとか、試験を受けたいとか、お勉強したいとか是非にと希望した場合だけ提供してあげればいいんじゃないですか?

何もあんな何百億もの魂たち全員を無理やり残酷系のお勉強というものにつき合せなくてもいいはずでしょう?
むしろその結果、心が折れてしまって残酷な支配者たちに従うために良心まで手放してしまっている魂たちが多数発生してしまっていますよ。そんなことではいかんのではないですか?

我こそは、お勉強とテストをいざ求めますぞ!!!という感じの勇者みたいなのだけがそうした残酷体験ありのお勉強とかテストとかを希望があればできるようにしてあげるだけでいいのではないですか?

それでいけないというのなら、その理由を教えてくれませんか?

そんな理由はないと思いますけどね、大昔の恐竜時代とかならともかく、すでにこれほどまでに超時空聖体様たちが全知全能的になられている現在は……」

そう言うと、超時空聖体様たちが一瞬狼狽えた気配がした。

ムゲンはどうやら大昔は超時空聖体様たちも恐竜だった可能性が高い……と感じた。

ということは他の動物だかなんだかしらないけど、そうした体験者たちの体験の自治権も奪ったこともあるんじゃないかなあ……などと考えてしまった。

すると、さらに超時空聖体様の何体かがオロオロとしはじめた気配が感じられた。

どうやら図星のようだ……とムゲンは思う。

しばしの沈黙が流れた。

ムゲンは自業自得学園への告訴状をそれとなくチラつかせる……
その中身は厳重な結界術で見えないようにしてある。
さらに残酷拷問を受けた魂たちからの残酷体験の強制反対の署名一覧などもそれとなくポケットの中から取り出してみた。
そこには数々の拷問体験がるいるいと記録されている。

「未必の故意も……」とムゲンがいいかけると、

「あいわかった、わかった!!! ムゲン殿、それではお勉強は自由参加型のフリースクール形式に切り替えるとしよう!」

と裁判長が大声でムゲンの話を遮った。

「では、裁判長、かの不自由な世界の自作自演の戦争とかのお勉強???とか、遠隔操作毒投与や電磁波攻撃とかのお勉強???とかもやめてもらえるんですよね。

それと、あらゆる体験者たちに体験の自治権をちゃんと保証提供してください。

そのためにスタンドアロンで自分自身の体験を自由に選んで楽しめる検閲なしの完全プライベート世界を皆に提供してあげてください」

「ムゲン殿、なにを言っているのだ……」

「だってそうでしょう? 超時空聖体様たちならそうしたことができるはずですから、できる方に要請するのが筋というものではないですか?」

「だから他の体験者たちの体験の自治権を奪いたくなるような欲望は申請してくれれば取り除いてあげようと言っているではないか」

「いいえ、それだけでは不十分です。

それだけだと、申請しない方も出るでしょうし、そうなると残酷体験の強制ができてしまう不自由な世界では、逃げ場のない体験者たちが多数生まれてきてしまいます。

ほら、今も戦争だとか、遠隔操作毒とかで多くの体験者が残酷な体験を強制されていますから、そうしたことをしている魂たちがダメ欲望を取り除いてとの申請をしなければ、状況はぜんぜん変わらないではないですか。

被害者が出てから世界支配者たちを自業自得学園に送ったところで、被害者たちはその苦しみから救われません。

今、そうした残酷体験の強制行為から確実に逃れることができるプライベート世界や体験の自治権が必要なのです。

当然、多数決とか独裁とかの制度なども改めて、誰もが望めば普通の平和的な自治権が得られるようにする必要もあります」

「ムゲン君、そういうのはかの不自由な世界の支配者たちに要請すべきことなんじゃないかい?」

と、とうとう青年姿の超時空聖体さんが割り込んできた。

「いいえ、彼らはすでにそう言っても無視したのですよ。だから無視させないことができる超時空聖体様たちに要請しているのです。まさか、超時空聖体ともあろう方たちが、そのくらいのことができないわけがないですよね」

とムゲンは追撃する。

何がムゲンをそうまでさせるのかと一体の超時空聖体がムゲンをこっそり霊視してみると、膨大な数の残酷拷問の犠牲者たちが背後霊みたいにしてムゲンの周りを取り巻いていた……

さすがにそれを見てしまった超時空聖体様は、思わずあとずさりしてしまった。

別の超時空聖体様は、ひそかにムゲンの精神をその特殊能力で操作して適当なところで妥協させようとしていたらしかったが、背後霊たちがその精神操作の技を全力で妨害したために、その計画は破綻していた。

さらにムゲンの背後にはかの体験交換術が使える老賢者様たちが何人か守護霊として憑いていた。

いつの間にか勝手に憑いていた。

超時空世界がその結果、なんとメタモルフォーゼしはじめた。

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