「当たって砕けろ。また新しい人を見つければいい」

よく恋愛経験の豊富な人が

「当たって砕けろ。また新しい人を見つければいい」

とアドバイスをする。

これは、大好きな相手に想いを伝えられず、悩んでいる誰かに掛けられる言葉だ。
フラれることを恐れ、君からの拒絶と別れを予感し、彼らは想いを伝えることをためらう。
そして、この言葉は、その消極的な姿勢を後押しするようにいたるところでかけられている。

だが、果たして本当にこの言葉を信用しても良いのだろうか。恋愛経験の豊富な人からのアドバイスだからといって、この言葉を鵜呑みにし、勇気を出して自分の想いを伝えるべきなのだろうか。

私は、そうは思わない。

彼らは何の経緯でこの言葉をかけたのだろう。その根本的理由を考えたとき、私は彼らの言葉に疑問を抱いた。

特に、「当たって砕けろ。また新しい人を見つければいい」というセリフの中で気になるのが、“また新しい人を見つければいい”という言葉だ。

また新しい人という言葉の背景には、恋する自分とその対象、そして、“次の君”が隠れている。
要は、好きな人に振られてたとしても、また新しい人にアタックすれば問題なしということだ。

しかし、私はその考え方に問題があると考える。なぜなら、好きな人に振られることを恋の終わりと前提立てているからだ。

君に告白し、振られ、もう君とは付き合うことができないと自覚する。そして、君は離れていく。そんな過程を彼らは前提にしている。

私だって、振られることに対して恐怖はあるし、未知なる地に他の魅力的な誰かが生活しているとも思う。

だけど、告白することは単に、付き合う、付き合わないを決めるだけの、その場限りの審判なのか。

それは違う。

そんな単純な“切り捨て合い”の中に、あなたが求めているような人間関係など存在しない。相手が好きな人なら尚更だ。

彼らのアドバイスには本当に大切になる“あるもの”が欠如している。

それは、“相手にとっての自分の姿”だ。

彼らのアドバイスは、君と付き合うことを目的としており、振られることを交際の「始まり」か「終わり」でしか捉えていない。

そのため、彼らは、目の前にいる好きな人の存在を軽視し、自分のステータス補助のために、彼女らを飾りとしてしか捉えてない“クズ人間”であると私は認識する。

「あなたは相手に恋しているのではない。恋している自分に恋しているのだ。」

彼らに対して、つくづくそう思う。

相手にとっての自分の姿

あらゆる人に見失われていた「相手にとっての自分の姿」とは、自分が相手にとって“一番安心できる場所”であるかどうかだと思う。

告白をして、振られた。
付き合えなかった。
最悪。

そうじゃない。

私たちは、付き合うことを目的にするべきではない。私たちが大切にするべきことは、相手の“信頼”を得ることである。

告って、振られた。
そんでもって、振ったことを後悔させてやる。

そんな風に見返し精神で成長し、富や名声を手に入れる者がいるが、彼らもまた相手にとっての自分の姿を見失っている。人は振られたから変わるのではない。相手を想い続ける中で変化し、成長していくべきなのだ。

振られたことを理由に復讐の狼煙を上げるのは、そもそもの好意が自分中心の考えの元に生まれた煩悩であったと言わざるを得ない。新しい誰かを見つけるということも復習の範疇だろう。

ここで、あなたが最愛の人に振られたとしよう。
そのとき、あなたが相手にかけるべき言葉は『ありがとう』の他にない。

あなたを傷つけることを知りながら、相手はある種の“ けじめ”をつけてくれたのだ。そんな相手に感謝の念を抱けないとは言わせない。

この出会いに、このラストに、感謝しよう。相手の存在は間違いなくあなたを成長させた。

これをよい機会に、今までの感謝を伝えるのもいい。相手の好きなところ、人となり、尊敬できるところを話すのもいいだろう。唯一無二の最愛の人物が、そんな尊敬できる人物が、あなたの感謝を貶すはずがない。

相手はきちんとあなたと向き合ってくれるはずだ。振られた気まずさなんて、一抹も残らない。ある意味で、お互いが1番打ち解けられた瞬間になる、そう断言する。

そして最後に、あなたは相手にとって最高の理解者であり、救世主であるべきだということを忘れてはならない。彼氏になるよりも、夫になるよりも、あなたが勝ち取るべきは相手の信頼と安心である。

ゆえに、復讐など全くの論外なのだ。

このように、相手が一番居心地がいいと感じる場所を用意してあげることこそが、あなたが意識すべき大切な恋愛の前提である。

付き合うことや結婚することが目的なのではない。

「相手の信頼と安心を勝ち取り、居心地のいい場所を用意すること」

これこそ、一人の恋する人間として、心がけるべき“姿”なのではないだろうか。